11 獲物を持って
誤字報告ありがとうございます。m(_ _)m
一番初めに、アイリスに恐れず近付けるようになったのはゼクスです。
「本当に立派なウルフだな。灰色……ではなくて銀色なのか? この辺りではみかけないけど」
そう言って細めた目で、眩しそうにアイリスと僕を見ます。
「ぜぇクちゅ?」
ゼクスの亡くなった父親はウルフを従魔にしていたそうです。アイリスより一回り小さい、フォレストウルフという、森を住処にする狼のモンスターだったそうです。
父親に『子供が生まれ、相性が良ければゼクスの従魔にしてもいい』と言われたそうです。
オスなので番が見つからなければ子供が生まれないのですが。大人って……
それでもいつか自分もと夢見て、名前を考えたりしていたそうな。
ゼクスは冒険者になったら、自分の従魔を探すのだそうです。
そんなわけで従魔のフォレストウルフと接触経験のあるゼクスは、解体をしながらもチラチラとアイリスを見てきます。
いいですよ。ゼクスのおかげで他の皆も徐々に距離が近くなってきましたからね。
「よし、こんなものか」
子供だけでできることは限られています。皮も綺麗にはがしたとは言い難いです。
肉や内臓を、おばけ芋の葉で包んでみんなの背負い籠に分けました。
「急いで帰ろう。いつもより遅くなってる」
ポッドの言葉に皆が頷きました。
イノシシの解体は予定外に時間がかかってしまいましたから。遅くなるとシスターたちが心配します。
「でもお肉いっぱいだよ」
「うん、いっぱい」
ダグとメリアは籠に入れられたお肉に嬉しそうです。今日の夕食のメニューはイノシシのお肉ですね。
僕は細かくミンチにしてもらわなければ食べれませんけど。
肉団子入りのスープは美味しいのです。じゅるり。
「本当はしばらく熟成させた方がおいしいんだけどね」
カレンの言葉に「今日食べられないの!?」とダグとメリアがショックを受けています。
「リュークまでそんな顔して。内臓はあしが早いから今日中に調理することになるよ」
笑いながらゼクスが驚きに開いた僕の口を顎を持ち上げ閉じました。え、開いてましたか? 僕のお口。
内臓を使ったどんな料理がいいか、皆で話しながら孤児院に戻ります。
僕はアイリスの背中に乗ったままなので、歩く速度はメリアに合わせてですね。
孤児院が見えてくると、シスタータバサが玄関前でウロウロしていました。シスターの姿を見つけたポッドが大声で挨拶をする。
「シスター、ただいま戻りました」
「皆、無事で……」
駆け寄ろうとしたシスタータバサの足が止まります。どうしたのでしょうか、顔色が良くありません。
「リュ、リュ、リューク?」
「あい。ちちゅた、たらいまでちゅ」
「な、な、狼? ふぅ……」
「「「シスター!!」」」
名前を呼ばれたので、返事をしたのになぜかシスタータバサは気を失って倒れてしまいました。
具合が悪かったのでしょうか? 顔色も悪かったようですし。
「ジョド、シェリー。シスターチェスタとブラザーニックを呼んできて」
僕たちだけではシスタータバサを運ぶことはできません。ゼクスとカレンとアリアがシスターに駆け寄り起こします。ポッドは水を汲みに井戸に走りました。
カレンがシスターの頬を軽くはたきながら何度も呼びます。
「シスター、シスタータバサ、目を開けて」
「う、ううん」
震える瞼がゆっくりとひらきました。僕もシスタータバサの様子をアイリスの背の上から身を乗り出すようにして覗きます。
するとアイリスが僕のしたいことを察してシスタータバサの顔が覗き込めるように近づいてくれました。
ゼクスとカレンに支えられ、意識を取り戻したシスタータバサはその場に座り込んだまま身を起こしました。
「ちちゅた?」
「う、あ、リューク……」
僕の呼びかけに答えるようにシスタータバサがこちらを向きました。
「ひっ……ふぅ」
あ、ゼクスの手を握りしめたまままた気絶しました。大変です、何処か具合が、いいえもしかして病気なのでしょうか?
「……リューク、ちょっと離れようか」
「うん、少し離れてたほうがいいよ」
ゼクスの言葉にエプロンでシスタータバサを扇ぐアリアも同意します。
でも、シスタータバサがしんぱいです。
「でも、ちちゅた、びょうき、ちんぱい」
僕がゼクスたちの顔を見回すと、カレンが頭をなでてきました。
「リューク。シスターはアイリスをみて気を失ったんだよ」
え、こんなもふかわいいアイリスを見て気絶するなんて!
シスタータバサはやはり病気なのでは?




