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三人組 1

 てっきり…、地下牢かなにか、そんな所に行くのだと思っていた。

 案内されたのは、騎士団詰所のある建物の2階。何か会議室のような普通の部屋だ。とは言っても、エリートの騎士様達のお勤めする場所という事だけあり、天井には勝利の勝ち名乗りを上げている騎乗の騎士の画がはめ込まれ、その周囲を囲むように埋め込まれた花をモチーフとしたテンペラ画が、重厚な雰囲気を醸し出していた。壁の羽目板も磨き上げられ、そこに合わせるかのように、複数の肖像画が掛けられている。戦果を挙げた武人だろうか…。

 広い大きな机に付けられた個々の椅子は、高い背もたれや盛り上がった座面に、濃紺の天鵞絨を張っていた。


 その椅子を引いて、騎士団の一人が座るよう勧めてくれた。どこかで見たようなその顔に見入ってしまう。


「―――イアン?」

「はい、やはり今気づかれたのですね、ミツキ殿」

「―――ああ、ごめん。皆いつもと雰囲気が違うから直ぐには分からないわ」

「それを言うなら、美月殿でしょう?」

「あ――ドレス?本当はズボンで走り回りたいんだけどね」

「……」

 そこで黙るか?


「何か、皆…お偉いさんなんだね。いつも呼び捨てにしているけどいいのかなあ」

「ミツキ殿…。それを言うなら、ミツキ殿の隣にいらっしゃる方以上に位の高い方は、この部屋にはおられません」

「ん?」

 美月はその隣の人物に目を向けた。

 ああ、なんだルークか。そういや王太子だったね。

「………殿下、本日もご機嫌麗しく…」

「馬鹿、今更何を言っている。畏まらなくていいと言ってあるはずだ」

「ははっ、そうだった」

「ほら、来たぞ」


 扉がノックされ騎士団員に連れられた三人組が入ってくる。ん?ルークってばノックする前に気づいていた?

 ―――まあ、いいか。


 三人とも項垂れてはいるが、顔色は随分と良い。食事もしっかり摂らせてもらっているのだろう。二人、体の軸がずれている。―――足の骨折の影響だね。悪かったなあ。


 イアンが私のことを、恭しく“様”付きで紹介してくれる。失礼の無いようにと三人組に伝えている。いや、私のほうが緊張してくるんだけど?


 軽く息を吐き、イアンに問う。

「座っていただいても?」

「か、構いませんが…」

「では、どうぞ」

 あれ?皆の視線が痛い。変なことなの?…まあ、いいや。ルークが何も言わないから良しとしよう。


 三人組の名前は、マシュー、リオ、セイジと言った。

 馬車で泣いていたのはマシュー、慰めていたのはリオ、兄貴分がセイジ。


 私は、何だか訳有りな三人の関係が知りたかった。決して変な意味ではなく。ええ、勿論、萌えようとも思っていませんとも…。

 そして、私を誘拐するときはあんなに気配を殺して怖い印象だったのに、何故一転して馬車で泣くハメになったのか。そのギャップの理由を知りたかった。

 それに、あの時は上手く騙せたと思っていたけど、冷静に考えるとそんなはずはない。私を抱えたセイジなら気づいたはず。薬が効いていないこと、効いたフリをしていたことぐらい。それを黙っていてくれた。船から逃げる時も、私に蹴飛ばされてくれた。あれもわざとだ。つまり逃がしてくれた。その理由も知りたかった。


 私の質問にはセイジが主に答えてくれた。


 セイジは親を早くに亡くし、親戚の家に預けられたが、数年後に親戚の事業が失敗する。そのため親戚の知り合いのオルスター神父に預けられた。

 マシューとリオは孤児だった。そのオルスター神父の運営する孤児院で、彼らは共に育った。

 オルスター神父は武術に長けており、彼らも小さな頃から鍛えられた。成人すると、それを活かして領主の自警団で働いた。だが、流行病で領主が亡くなり息子に代替りしてから、風向きが変わった。従来の自警団とは別に、西の方から連れてきた男たちを兵士として雇い、自警団の仕事は無くなっていった。自警団から兵士に雇われる者もあったが、セイジ達のような孤児院育ちの者は除外された。仕事のなくなった自警団は解散、要するにクビだ。

 それからは、村で短期間の仕事に就いた。継続して働ける仕事を探したが、村でそんな仕事は領主の経営する塩田(えんでん)ぐらいしかなかった。新しい領主は自警団だけでなく塩田すらも、セイジ達に対しては門戸を開いてくれなかった。村での仕事に限界を感じ、王都に出てくることにした。


 そこまで一気に話を終えると、セイジは顔を伏せた。


 美月は自分が聞いてしまった事だったが、どうしたものかと思い悩んでいた。何か訳有りだと思っていたが、こんな話を聞いてしまっては気の毒という言葉以外は浮かんでこない。


 マシューもリオも唇を噛み締め、悔しさをにじませていた。



「塩田と言ったな。出身はどこだ?」

 不意にルーカスが質問した。


「ノーライズ領です」

 セイジが少しだけ顔を上げた。


 ――――ノーライズ領?

 あれ?…なんか聞いたことがある気がする。

 美月は首をかしげた。


「セイジといったな?その話の続きは少し待ってくれるか?」

 ルーカスが難しい顔をしている。

「…はい」

 セイジは何事だと目を瞬かせていた。



「ウェリントン公爵にすぐに来るよう伝えてくれ」


 ルーカスが控えている騎士団の一人に声をかけた。



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