接触 4
イザベルとの面会が無事に終わり、一息ついているとレナードが訪ねてきた。
「ミツキ、イザベル嬢と会ったそうですね」
「うん。早いね、もう知っているんだ」
「随分と無茶をしますね。あなたはどうも周りの思いをわかってないようですね」
「周りの思い?あー、アイラのこと?それは申し訳ないと思ったけど…」
「アイラだけではありませんよ。ウォーカーも私も、当然ルークもです。それに国王夫妻もですよ。まだまだおいでますが、全て聞きますか?」
レナードはメガネのブリッジを指2本で押し上げながら、美月を一瞥する。
「な、なんでそんな大事になっているの?」
「ほら、分かっていないでしょう?」
「でも、結果的にはよかった、じゃ…ないの?」
レナードの柳眉がぴくりと上がる。
「よろしいですか?ミツキ、あなたにはルーカス王太子殿下の婚約者ということで、各方面から面会の申し込みが殺到しているのです。それをこちらで精査して必要最小限に留めておこうと対応している最中、あなたが勝手に面会を受け入れればどうなりますか?」
「でも、正式なものじゃない…し」
「非公式なら受けてくれるとなれば、あなたに直接の申し込みが殺到しますがよろしいのですね」
「あー、アイラにも同じようなことを言われた気がする…の…です…が…」
「ご自分の愚かさに気づく良い機会になりましたね。学びの場を自ら提供する、勉強熱心なことはとてもよろしいのですが、振り回される身にもなってください」
「ごめんなさい…」
「本当に分かっていますか?」
「んー、半分位は…?」
盛大にため息をつくレナードに、美月も肩を竦める。
「ごめんなさい。悪かったわ。それで?レオは忙しい中、私を叱りに来てくれたの?」
「相変わらず早い立ち直りですね、ミツキ」
「当たり前よ。これぐらいで落ち込んでいたらサッカーなんて続けられないわよ!」
レナードは苦笑し独りごちる。
「逞しいことでございますね。その逞しさをハーヴェロード王家にも活かして頂きたいのですが」
「え?何?」
「いえ何も。私はルークからの伝言を伝えに来たのですよ」
「伝言?」
「ええ。明日、城下に行くように準備をしておいて欲しいということですよ」
「うそ!城下に行けるの?」
「なぜ嘘をつかないといけないのです?相変わらずおかしな事を言う人ですね。準備はアイラが心得ていますので一緒になさってください」
「一緒に?」
「そうです。アイラも付き添いますので」
「ありがとう!レオ」
美月の顔がぱっと華やぐ。
「レオは?レオは行かないの?」
「私はあんな人ごみの中に入るのは御免ですよ。カイトが付き添いますし、離れて護衛も付きますのでご安心を」
「ほお…。わかったわ、ありがとう」
美月はアイラを見てニヤリとする。アイラは僅かに頬を染めた。
「それと、サミュエル王子から正式に面会の申し込みがありました。忌々しいの一言に尽きるのですが、会わないわけにも行きません。ですが、明日の調整のためにルークも私も政務にあたっており付き添えません。ですので、今回は私の政務官のトマスが付き添います。その事をご了承ください」
「そうなんだ。忙しいのにごめんね、ありがとう」
「ミツキ、そこは謝罪は要りません。ありがとうだけで十分ですよ」
「わかった、ありがとうレオ」
笑顔の美月によろしいと言い、レオはルーカスの執務室に戻っていく。
よっし。明日のことを楽しみにサミュエル王子の面会を乗り切ろう!
美月は右手を握り締めた。
「ねえミツキ、なんでそんなに離れているのさ」
「なぜだと思います?サミュエル王子」
「わからないね」
「本気ですか?」
「勿論!」
「セクハラ防止です」
「僕が?」
「コレまでの事、ご自分の胸に手を当ててお考えくださいませ」
「こんな胸に手を当てて何が楽しいのさ。どうせならミツキの胸っ…」
「それがセクハラだと、言・う・ん・で・す・よ!」
美月は慌ててサミュエルの言葉を封じる。
「全く、つれないね」
「今のは殿下が悪うございます。ミツキ様、失礼いたしました。殿下のご無礼、まずはこのジュールが謝罪させていただきます。後ほどエアージョン帝国からお詫びの品を届けさせていただきますので」
サミュエルの後ろに控えていたジュールが跪き謝罪をする。
「大丈夫ですジュールさん。そんな御大層なものはいりませんので、王子に謝罪の一言を!」
「それが一番の難題でございます」
「…苦労しているんだね」
「はい」
「ちょっと、僕を抜きにして話を進めないでくれる?」
美月に付き添い面会室の一つ『菫青の間』に来ていたトマスは、三人のやりとりに目を丸くして立ち尽くしていた。
「ほら、君の付き添い…トマスだっけ?彼もおいてけぼりを食わされているよ。―――君、その節は世話になったね。君の顔は忘れられないよ」
「ご無沙汰いたしております、サミュエル王子殿下」
「ご無沙汰…ね…、早速、いろいろ嗅ぎまわってくれているようで何よりだよ」
サミュエルは柳眉を上げて、目を細めた。




