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仲間 2

「あれは何をやっているんだ?」


 騎士団の練習場では、美月を中心に団員たちが輪になり、地面を見つめていた。その美月は棒を持ち地面に何か書いているようだ。


「さっきのミニゲームの解説をしているんだよ。ルーカス殿」

「ミニゲームの解説?」

「そう、さっきまで3対3で計4試合していてね。それぞれのゲームでの敵味方の動き、他に出来た攻撃や防御はないか、効果的に味方や敵を動かすにはとかいろいろ検討しているんだろうね」

「詳しいな、サミュエル殿」

「僕は毎日練習を見に来ているからね。初めて来た人には分からないことも分かると思うけど?」

「毎日…」

「そうだよ。あれ?ミツキから聞いてない?まあ、ルーカス殿は忙しいからねー。最も僕はミツキがサッカーをしているのを見るのが好きだから、時間は作るけどね」

 サミュエルはクスッと笑い、ルーカスを一瞥する。


「それに、僕ならもっとサッカーの時間をとってあげるね。ほら、騎士団の中にいても怯む事なく堂々と、むしろ従えている。これを僕の国で見たかったんだけどねぇ。なんでこんな事になっているんだか」

「…サミュエル殿は何処でミツキの事を?」

「何処で?…ルーカス殿は分かっているだろう?僕がそんな事話すと思う?」

「いや…」

「ああ、でもね、今は不快な思いしかないけれど、ミツキが元の世界に戻ったら悲恋の王子同士、互いの傷を舐め合うくらいはできるかもね?」

「サミュエル殿…、それは…」

「君はミツキを引き止めたいだろうけどね、ミツキの帰る意思は変わらないよ。昨夜の夜会でも確認した。」

「…サミュエル殿はそれでいいのか?」

「それがミツキの希望だからね」



「あれ?ルーク!珍しいね、こっちに来るなんて」

 観覧席で話をしているルーカスとサミュエルを見つけた美月は、駆け寄って声をかけた。

「おはようミツキ、疲れていないか?」

「ふふっ、体動かしたら元気になった。ルークも疲れてなければサッカーする?その格好なら出来そうだけど」

「えっ、いや、ここで見ているよ」

「そう?サミュエル王子もそんなに毎日来るくらいサッカー好きなら、一緒にすればいいのに」

「ミツキ、僕はサッカーをしているミツキを見るのが好きなんだよ。だからここは絶好のポジションだろう?」

「ふーん。二人とも良い体しているのに勿体無いね」

「体って…」

「あ、もう行かなきゃ。今から試合するんだ。皆凄いよねー、身体能力ハンパない!もう感動だよ!じゃあね」

 笑顔で手を振り、戻っていく。

「楽しそうだな…」

「楽しいだろうね。今のミツキの頭の中はサッカーの事しかないよ、元の世界もこの世界も関係なく…。僕らの思いも知っているのにね、全く悩ましいよ」

「サミュエル殿…」

「ああ、ほらゲームが始まる。8人制だ。初心者相手だから、まあ、妥当だね。…今度はミツキも入るんだ。いいねぇ、目つきが変わった」

 相好を崩すサミュエルを、複雑な思いで見つつルーカスは訓練場に視線を戻す。

 美月のホイッスルの音で試合が始まる。リチャードが戸惑いながらパスを回していると、直ぐに美月が詰め寄ってくる。

「そんなパス出してたら、奪っていくよ?周り見て、そう!ジェイソン、今のいい判断」

 美月が親指を立ててジェイソンを褒める。

「マイク、パスを受ける前から周りの状況確認してね!そこ、プレッシャーは誰が行く?」

 その後、不意に無口になったと思うと、美月は相手チームの騎士達の間を縫うように走り抜けボールを奪った。

 あとはドリブルでセンターを進みながらプレッシャーをかけてくる相手をかわしサイドを駆け上がってきたオリヴァーのコースの先にパスをする。

「早い!」

 観覧席で見ていたルーカスは思わず声を上げた。

 迷いのない美月の動きは、ほかの騎士団員の比ではない。オリヴァーは美月からのパスを受け取り、果敢にドリブルをするが、サイドからのプレッシャーにあい、強引にシュートを放つ。ゴール左上に上がったボールはキーパーに弾かれた。刹那、ゴール前に詰めていた美月は飛び込んでヘディングでシュートをする。サッカーゴールがないのでフェンスに目印を付けただけだが、その枠のなかに確かにボールが収まった。

 見方と見学していた騎士団員から歓声が上がる。地面に突っ伏していた顔を上げる美月にチームメイトが駆け寄っていく。

「ミツキ殿、大丈夫か?」

「何だ、今のは?」


 美月は起き上がり、チームメイトとハイタッチをする。

「団長、ナイスシュート。惜しかったね」

「ミツキ殿、今のは…?」

「え、やだなあ、教えたでしょ?ヘディングだよ」

「ヘディング…。大丈夫なのか?」

 マイクも心配そうに声をかけてくる。

「当たり前じゃない。こんなのサッカーでは常識だよ。ほら、次行くよ!」

 再び、美月のホイッスルが響く。


 観覧席では、思わず走り寄ろうと立ち上がったルーカスの姿があった。そのルーカスを、サミュエルが片手を伸ばし制していた。

「慌てなくても大丈夫だよって言ったよね?」

「あ、ああ。しかし、早いなミツキは。いつの間にあんなところまで…」

「だよねー。あのセカンドボール保持率はダントツだろうね」

「セカンドボール?」

「さっきみたいに弾き返したボールやキャッチ出来ずにこぼれたボールとかのことだよ。セカンドボールを保持できたら、相手にボールが渡らないからそこからまた攻撃ができるだろう?見事だね、ミツキは」

「サミュエル殿、やはり詳しいな」

「ミツキへの愛所以だよ」


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