第三十九話 作戦会議
翌朝、窓から差しこむ朝光のなかで、四人はふたたび居間の木机を囲んでいた。
夕べの険悪さは幾分か鳴りを潜め、木机の上にはシキが整理した木札と、トウヤの持ってきた古い海図が広げられている。
「さて、あらためて情報を整理しましょうか。はっきりしているのは、ひとつ。あの子の光は、夜の者には毒でした」
「光が、オニの弱点……」
シキがあごに手を当てて、つぶやく。
「つまり、奴らと刃を交えずに退けるには、その夜行性の眼をくらませるほどの、強烈な光を放つ道具があればいいということか」
「理屈としてはその通りです」
トウヤがうなずく。
「かつて都にいたころ、異国の技術を用いた火薬の一種で、凄まじい閃光を放つ道具があると聞いたことがあります。それがあれば、オニの目をくらませることができるでしょう」
「それなら、火薬を扱う商人のところへ行けば手に入るな」
クロウが身を乗り出したが、シキは首を振ってそれをさえぎった。
「そう簡単にはいかないよ。異国の火薬というくらいだ。そんな特殊な道具は、値も張るはずだ。とても僕らが買えるような代物ではない」
「資金のことであれば、心配いりませんよ」
トウヤが胸元から、金貨のつまった袋を取りだし、木机の上に置いた。
「都で稼いだ金で買い集めた宝飾品を、ここで換金したものです。もともとは、ビャクヤのために集めたもの。これを自由に使ってくれて構いませんよ」
惜しげもなく差し出された軍資金を前に、モモがじっと自分の右腕を見下ろし、それから顔を上げた。
「シキ、トウヤ。その光を放つ道具が手に入ったら、わたし、試してみたいことがあるの。わたしのこの右手の結晶はね、ビャクヤの光と深くつながっているの。もし、その道具の中に、この結晶を通じて浄化の光の力をこめることができれば……ただの目潰しじゃない、オニの戦意をくじく、特別な武器になる気がするの」
モモの提案に、シキとトウヤは小さくうなずいた。
「今は、なんだって試してみよう」
それからしばらくの間、熱のこもった討論が続いた。
やがて話が一段落すると、クロウが立ち上がり、悪童の笑みを浮かべた。
「俺はまず、金物屋へ行ってくる。大剣は仲間に預けちまったからな。誰も斬り殺さずにたたき伏せるには、新しい得物を仕入れてこねえと」
「僕は、以前に火薬を取り扱う富商の用心棒を引き受けたことがある。その時のつてをたどり、閃光玉を融通してもらうよう、交渉へ行ってこよう」
「わたしは、美味しいお昼の支度をしておくね」
「では、僕もともにお留守番を――」
トウヤがしれっとモモの隣に並ぼうとしたが、すかさずクロウの大きな身体が、その行く手をはばんだ。
「却下だ、白髪野郎。お前にはお前の仕事があるだろうが」
「手厳しいですね」
トウヤは外套の襟をかき合わせた。
「仕方ありません。僕は、例の乗組員を募集している船のところへ行ってきますよ。隠ヶ島の生き証人が現れたとなれば、喜んで案内人として僕を雇い入れるでしょう。船の戦力や、航路、出航がいつなのかと、肚の内をのぞいてきます」
話が終わると、誰からともなく、席を立った。




