表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前ら魔王をなんだと思ってる...  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/3

ゾンビ系よりゾンビだよ

 ……で。


「お前さ」


「戦うでいいんだよな?」


 勇者は何も答えない。


 なんか目の前でずっと草食べて怪我治してるよ。喋る前に回復するのはいいけど、なんで目の前でやるかな。あと一歩で私に話しかけられるよね?


「いや無視かよ」


 せめて一言くらいあってもいいだろ。

「今度こそ倒す」とかさ。言ってくれる勇者もいるらしいよ?他の世界の魔王とかそんなこと言ってたよ?


 ……まあいい。


勇者パーティは全回復したのか戦いを申し込んできた。


「はいはい、じゃあ始めようか」


 私はいつも努力ゆっくり立ち上がる。


 杖を軽く回す。先端に紫の光が灯る。


 まずは様子見。軽く魔力を放つ。


 床に魔法陣が浮かび上がり、黒い稲妻のような衝撃波が広がった。


 前衛が一歩遅れて防御。高級そうな盾が衝撃波の効果を軽減する。後ろの魔法使いが詠唱に入る。魔法使いを中心として魔法陣が浮かび上がり光がまたたく。


「遅いな」


 私は指を鳴らした。


 ——ドンッ。


 魔法使いが後方の壁に向かってありえないスピードで吹き飛ぶ。


 詠唱中断。


 壁にめり込んで口から血が滴った。そのまま動かない。


「はい一人目」


 簡単だ。


 続いて僧侶。


 回復の光を展開しようとしている。


「もう少し素早さ上げてから挑んでこない?回復役が鈍足って役割として破綻してるのわかんないかな?」


 杖を振る。


 風圧だけで、僧侶が吹き飛ぶ。ありがちな細長い帽子だけを残して遠くの方で動かなくなった。


「はい二人目」


 早い。


 残りは前衛と勇者。前衛の剣に炎が灯り攻撃体勢に入る。


「うん、いいねその判断」


 ただし。


「弱い」


 剣を振り下ろす前に、魔王が手で引っ掻くような動作をする。その刹那前衛の体ごと空間がえぐれる。


 ぐしゃ、と鈍い音。


 前衛が床を転がる。


 起き上がらない。


「はい三人目」


 残るは勇者一人。


 静かだ。


 広い玉座の間に、足音だけが響く。


 勇者はゆっくりと距離を詰めてくる。


「流石に粘ってくれよ。まだ数ターンしか経ってない」


 とはいえ——


「どうせ同じだけど」


 勇者が踏み込む。


 剣を振る。速さは、普通。本当にこいつ勇者なのか?なんか勇者って選ばれしものがなるんじゃなかったっけ?


 見える。


「はい」


 軽く杖で受け流す。そのまま足払い。


 体勢が崩れる。そこに追撃。


 ズッ___。


 杖が勇者の腹部に突き刺さる。杖の先端が赤黒く染め上がる。


 杖に生気を吸われるように顔が青ざめていく。


「はい終了」


 ……のはずだった。



 勇者は息を引き取る直前に動いた。


「お」


 ちょっと意外だ。まだ動けるのか。


「まあいいや」


 私は軽く肩を回す。

 

 「とどめだ」


 杖を振り下ろす。これで終わるはずだった。


 振り下ろした瞬間。


 手応えが、消えた。


「……は?」


 勇者が、いない。


 目の前にいたはずの姿が、跡形もなく消えている。


 血も。気配も。魔力も。


 何も残っていない。


「いやいやいやいやいやいやいやいや」


 思わず周囲を見渡す。


 床。壁。天井。


「またこーゆーの?なんなのこれ勝ったの?負けたの?中途半端じゃん」


 逃げた?違う。


 あの状態で逃げられるわけがない。


 そもそも——


「消えるって何?」


 意味がわからない。さっきまでボロボロだったはずだ。


 床も壊れている。壁も抉れている。


 ……はずだった。


「……あれ?」


 違和感。視線を落とす。床。


 ——綺麗だ。


「は?」


 ひび割れがない。


 さっきまであったはずの破壊跡が、全部消えている。


 壁も。柱も。全部。


「いやいやいや」


 自分の腕を見る。


 さっき受けたはずの傷。


 ……ない。いや今回は攻撃受けてないか。


 ローブの汚れも消えている。


「なんで?」


 さっき戦ってたよな?


 普通に。


 全力じゃないけど、それなりにやってたよな?


 とりあえず。


 私は玉座に戻る。


「……なんだったんだ今の」


 座る。肘をつく。考えても考えても意味がわからん。


「……わからん」


 結論出ない。


 ——数分後。


 扉が開いた。


 ギィィィィ。


 顔を上げる。 

 

 来た。同じ顔。当たり前のような顔して。今回が初めてですみたいな顔して。


「……は?」


 さっきの勇者。間違いない。


 同じ装備。同じ顔。同じ表情。


 ……いや。


「なんでピンピンしてんの?」


 さっきボロボロだったよな?


 立つのもやっとだったよな?なんなら勇者以外はほぼ死んでたよな?勇者もとどめさす一歩てまえだったよ?


 今、普通に歩いてるけど。怪我も恐怖心のかけらもないんだけど。流石に怖いよ。


「いやちょっと待て」


 勇者は無言で剣を構える。


 さっきと同じ動き。同じ構え。


 同じ距離感。


「まさかとは思うけどさ」


 立ち上がる。


 杖を持つ。


「今の今で同じことをやんの?結果見えてるよね?」


 ——で。


 また戦った。


 さっきと、ほぼ同じ。同じ流れ。


 同じ弱さ。同じタイミング。


「デジャヴかな?」


 いや違う。これは完全に“同じこと”だ。


 で。また最後。


 あと一撃。振り下ろす。


 ——消えた。


「なにこれもうほんとやだ」


 そして——三回目。


 扉が開く。


 ギィィィィ。


 やっぱり来た。同じ顔。


「またお前ね。もうよくわかんない。うちのゾンビ系の奴らより怖いもん。お前らがゾンビだよ。自覚しな。」


 呆れながらへんだなと思ったが。


「……あれ?」


 なんか違う。立ち方。


 構え。視線。


「お前そんな姿勢だったっけ?」


 さっきまで、もうちょい雑だったよな?


 もっとこう、初心者感あったよな?


 今——妙に完成されてるんだけど。威圧感すら感じる。


「……気のせい?」


 いや、気のせいじゃないなこれ。本気で行かないとやられる。


 勇者が踏み込む。速い。


「え?」


 さっきより明らかに速い。


 剣が振られる。横薙ぎ。


 私は杖で受け流す。


 ——軽い。いや、違う。


「今のタイミングで振る?」


 さっきより明らかに“当てにきてる”。私が苦手とする動きをさせられている?


 適当に振ってない。ピンポイントで何かを狙っている。


 続けて二撃目。三撃目。


 全部、急所狙い。


「いやいやいや」


 後ろに下がる。


「さっきそんな上手くなかったよな?ってか急所ローブで隠してるんだけど。見えないよね?ってか当てたことないんだから急所ってわかんないよね?」


 なんで急に上達してんの?


 練習した?どこで?いつ?そんな時間なんてなかってよね?たかだか2.3分だよさっき戦ったの。歩いて玉座戻ったらもう扉開いてたもん。


 後衛が動く。


 魔法使い。


 無詠唱。すでに火の玉がこちら目掛けて飛んできている。


「速っ」


 そして撃ってくるタイミングが完璧。


 私が動く直前。回避しようとした瞬間。


 そこに合わせて魔法。


「動きが読まれてる?!!」


 光が弾ける。一瞬視界が白くなる。


「目眩しかっ——」


 その直後。


 僧侶。状態異常。


 毒。沈黙。


「いやいやいや、俺毒とか聞かないはずなんだけど?魔法も禁止されちゃったし、は?」


 前衛が突っ込んでくる。さっきは雑だった。


 今は違う。ちゃんと連携してる。


「チームワークってそんな一瞬で良くなるの?だったら教えて?うちの部下たちにも教えるから。そしたら私の仕事楽になるから。」


 さっきまでバラバラだったじゃん!!


 何があった!?ミーティングした!?


 勇者が来る。さっきより速い。とてつもなく速い。


 さっきより攻撃力が桁違いだ。


 さっきより——


「いや完全に別人だろこれ!!」


 同じ顔なのに!!中身違いすぎる!!


 攻撃が当たらない。避けられる。


 読まれてる。


「おい」


 思わず声が出る。


「それ、さっき当たってたやつだよな?」


 なんで避けられるの?


 なんで知ってるの?


 なんでそこピンポイントで回避できるの?


「いやおかしいって!!」


 さらに。勇者が踏み込む。


 私の動きに合わせて。

 

 完全にタイミングを読んで。


 剣が来る。防ぐ。


 だがその瞬間——


 横から魔法。防ぎきれない。

 

 魔法をもろに喰らう


 そして。勇者の一撃。


 私の防御が、ほんの少しだけ遅れる。


 肩から逆の脇腹にかけて剣が滑る。勇者の攻撃の効果によってその傷から這うように赤い稲妻模様が浮かび上がる。


「やばい」


 すぐに瞑想の体勢に入る。


 ゆっくりとだか確実に回復していく。勇者パーティも全力を振り絞ったのだろう。まともに動けてはいない。


 私は軽く息を吐く。


 魔力を解放する。


 空気が変わる。圧がかかる。


「ここからだ」


 踏み込む。


 一瞬で距離を詰める。杖を振る。


 防がれる。


「判断はいい」


 二撃目。三撃目。


 勇者は食らいつく。


 だが——


「火力が足りない」


 四撃目。直撃。


 勇者が吹き飛ぶ。


 床に叩きつけられる。


 動かない。息が荒い。立てない。


「惜しいな」


 私はゆっくり近づく。


「さっきまでよりは、全然いい」


 本当に。


 ちゃんと強くなってる。


 でも。


「まだ足りない」


 杖を振り上げる。


 これで終わり。



「……終わりだ」


 静かになる。勝ちだ。


 完全に。


 今回はやり直しようがない。


 そう思った、その瞬間。


 ——消えた。



「だからなんでだよ!!!!!!」



 もういい。ほんとに。ほんとに嫌になる。


「なんなのこれ。誰か説明してくれるやついないの?下の階の部下とかに聞いたらわかるかな?」


 あそこから消えるのはおかしい。


 どう考えてもおかしい。


 私は玉座に座る。


 深く息を吐く。


「……いいよ」


 ぽつりと呟く。


「そこまでやるならさ」


 ゆっくり立ち上がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ