97,棒が光った
翌日もユニスと中庭にいた。
二人で目を閉じた。
瞑想だった。
静かだった。
しばらくして。
「なんか、感じました」
ユニスが目を開いた。
「水みたいな感じじゃなかったけど、なんか」
「なになに」
レリスが目を開けた。
「うまく言えないんですけど、なんかあった気がして」
レリスは目を閉じた。
負けられなかった。
集中した。
集中した。
集中した。
疲れた。
あれ。
なんか、見えた。
なんかすごいのが、見えた。
目を開けた。
棒が光っていた。
一瞬だった。
でも、光った。
水じゃなかった。
黒かった。
でも、光った。
「レリスさん、光りましたよ!」
ユニスが声を上げた。
「光った!」
レリスが棒を見た。
もう光っていなかった。
でも、光った。
「みたみた?」
「見ました! ちゃんと見ました!」
二人が顔を見合わせた。
嬉しかった。
すごく嬉しかった。
「ユニス、うちに遊びに来ない?」
「え、いいんですか」
「うん! ミナさんのごはん美味しいんだよ」
ユニスが嬉しそうだった。
「行きます! ぜひ!」
レリスも嬉しかった。
すごく楽しみだった。
───
帰ってきた。
アモンが待っていた。
「光ったよ!」
「知ってるチュ」
「みてたの?」
「気配でわかるチュ」
アモンが欠伸をした。
夕食が終わった。
レリスの部屋で。
今度はゾワゾワじゃなかった。
アモンが変な呪文を教えた。
短かった。
でも変だった。
「これを唱えて、体の中の力を感じるチュ」
レリスが唱えた。
あのすごいやつが、また見えた。
「それチュ」
アモンが頷いた。
「慣れたら呪文は必要なくなるチュ」
レリスが力を感じたまま、手を出した。
黒いモヤモヤが出た。
チクチクした。
「なんかカッコ悪い」
「最初はそんなもんチュ」
「もっとカッコいいのがいい」
「うるさいチュ」
アモンが静かに言った。
「これが悪魔法チュ。最初はこれで練習するチュ」
レリスが黒いモヤモヤを見た。
チクチクした。
カッコ悪かった。
でも。
自分の力だった。
───
テストの日。
棒が光った。
バッチリだった。
でもクラスのみんなは当たり前みたいな顔をしていた。
ちょっと寂しかった。
───
中庭でユニスが待っていた。
「どうでしたか」
「光った!」
ユニスが目を輝かせた。
「すごいです! 本当に!」
「ユニスもいつかぜったい光るよ」
「レリスさんが光ったから、私も頑張れる気がします」
二人が笑った。
───
夜、レリスが手紙を書いた。
おじさんへ。
まほうのテスト、うかりました。
ぼうがひかりました。
くろかったけどひかりました。
アモンにおしえてもらいました。
あくまほうです。
くろいモヤモヤがでます。
チクチクします。
カッコわるいです。
でもうかりました。
ユニスというともだちができました。
うちにあそびにくるよていです。
たのしみです。
Aクラスはすごいひとしかはいれないらしいです。
わたしはすごいのかもしれません。
たぶん。
レリスより。
レリスは手紙を折った。
窓の外を見た。
南の方角に、城があるはずだった。
悪くなかった。
───
城の地下で。
カキンオーが手紙を読んだ。
テストに受かったと書いてあった。
棒が光ったと書いてあった。
黒かったけど光ったと書いてあった。
アモンに教えてもらったと書いてあった。
悪魔法と書いてあった。
カキンオーが少し止まった。
もう一度読んだ。
悪魔法。
アモンが。
しばらく手紙を見ていた。
まあ。
ユニスという友達ができたと書いてあった。
うちに遊びに来る予定と書いてあった。
Aクラスはすごい人しか入れないらしいとも書いてあった。
自分はすごいのかもしれないとも書いてあった。
たぶんとも書いてあった。
カキンオーは手紙を折った。
悪魔法のことが、まだ少し引っかかっていた。
でも。
まあ。
作業台に向かった。
静かだった。




