94,魔法の授業
魔法の授業だった。
先生が教壇に立った。
「本日は魔力コントロールの基礎です。Aクラスの皆さんには必要ないかもしれませんが、一応やります」
クラスがざわついた。
必要ないよね、という空気だった。
「魔力を体内で循環させる。それだけです。こうして、こうすれば、こうなります」
先生が軽く実演した。
手元が光った。
「以上です。やりたい方は各自練習してください。来週テストがあります。計測用の棒を両手で握って魔力を循環させると光ります。光らなければ留年ポイントが一つつきます。二つで留年です」
クラスが頷いた。
みんな余裕そうだった。
「棒は貸し出しもしています。必要な方はどうぞ」
───
レリスは計測用の棒を握った。
目を閉じた。
魔力を循環させる。
イメージした。
全然分からなかった。
棒は光らなかった。
全く光らなかった。
レリスはしばらく握っていた。
光らなかった。
「必要な人は貸し出します」
先生が言った。
レリスは一応借りた。
───
アモンがいなかった。
今日は学校についてこなかった。
朝、レリスが聞いた。
「なんで来ないの?」
「うるさいチュ」
それだけだった。
理由は教えてくれなかった。
まあ、いいか。
───
授業が終わった。
レリスはガルドを探した。
いなかった。
廊下を歩いた。
中庭を見た。
いなかった。
どこだろう。
歩いていると。
木の下に、人影があった。
女の子だった。
計測用の棒を両手で握っていた。
目を閉じていた。
むーっとした顔だった。
棒は光っていなかった。
レリスは思った。
なかまだ。
近づいた。
「こんにちは」
女の子が目を開けた。
「わたし、レリス。魔法の練習?」
女の子が振り返った。
可愛い女の子だった。
少し驚いた顔をしていた。
「え、あの、はい。練習、してます」
「わたしも全然光らない」
女の子が少し止まった。
「私も、全然だめで」
「ほんとに?」
「はい」
女の子が少し笑った。
「私はユニスといいます」
レリスがニコッと笑った。
「ユニス! よろしく!」
ユニスが少し表情が緩んだ。
「よろしくお願いします」
二人で棒を握った。
光らなかった。
しばらく握っていた。
やっぱり光らなかった。
「どうしたらいいんだろう」
ユニスが少し俯いた。
「せっかくお父さんが学校に行かせてくれたのに」
レリスがユニスを見た。
「うまくできなくて」
ユニスが棒を見た。
「お父さんに、申し訳なくて」
レリスは棒を握ったまま、少し考えた。
「ガルドに聞いてみよう」
「ガルド?」
「ともだち。おしえるのうまいんだよ」
ユニスが少し迷った顔をした。
「一緒に聞いてもいいですか」
「いいよ!」
二人で棒を握ったまま、立ち上がった。
棒は光らなかった。
どうしようもなかった。
でも、二人だった。
悪くなかった。




