93,完全回復薬
カキンオーは棚の前に立っていた。
完全回復薬が並んでいた。
セバチャに使うべきか。
でも、聞いていいものか。
どう切り出せばいいか。
分からなかった。
カキンオーはしばらく棚を眺めていた。
答えが出なかった。
まあ、風呂に入ろう。
───
風呂場の外で。
ライラが壁際に立っていた。
いつものことだった。
しばらくして、カキンオーが出てきた。
ライラがタオルを渡した。
カキンオーが受け取った。
何か考え込んでいるようだった。
ライラが少し首を傾けた。
「何かお悩みでございますか」
カキンオーが少し止まった。
何か言おうとした。
言葉が出なかった。
ライラがしばらく見ていた。
それから、静かに言った。
「セバチャのことでございますか」
カキンオーが頷いた。
「薬のことでしょうか」
また頷いた。
ライラが少し間を置いた。
「何にしてもセバチャ本人に、お聞きになってみてはいかがですか」
カキンオーが少し止まった。
「本人がどうお考えかが、一番大切かと思いますので」
カキンオーが少し考えた。
頷いた。
───
薬を一本持って、セバチャの部屋に向かった。
扉をノックした。
「どうぞ」
入った。
セバチャが書き物をしていた。
カキンオーを見た。
「カキンオー様、どうされましたか」
カキンオーがテーブルに容器を置いた。
セバチャを見た。
「記憶を戻したいか」
セバチャが少し止まった。
「記憶、でございますか」
頷いた。
「記憶が一部失われているとは、ライラから聞きましたが」
セバチャが容器を見た。
それから、カキンオーを見た。
「全く問題ございません」
穏やかだった。
迷いがなかった。
「カキンオー様のそばで仕事をしております。それだけで十分でございます」
カキンオーは天井を見た。
それならそれでいいか。
まあ、持って帰ろう。
視線をセバチャに戻した。
セバチャが容器を手に取っていた。
飲んでいた。
ゴクゴクと。
カキンオーが目を見開いた。
セバチャがプハッと飲み干した。
容器を置いた。
「安全性は確認いたしませんと」
静かに言った。
カキンオーはどうしたらいいか分からなかった。
とにかくセバチャを眺めた。
セバチャが自分の手を見た。
足を動かした。
立ち上がった。
「問題ないようですね」
頷いた。
「では仕事に戻ります」
歩いていった。
扉が閉まった。
カキンオーは空になった容器を見た。
どうなったのだろうか。
わからない。
まあ。
部屋に帰った。
───
天空では。
ソランが廊下を歩いていた。
一人の男が近づいてきた。
ペルットだった。
静かな男だった。
ソランの側近だった。
「どうでしたか、カキンオーは」
ソランが少し間を置いた。
「野心や欲望が強いタイプには見えなかった」
「では」
「協力も難しそうだ」
ペルットが頷いた。
「計画はそのままで」
「ああ」
ソランが歩き続けた。
「お前たちにも迷惑をかけることになる」
ペルットが首を横に振った。
「それは構いません」
静かだった。
「覚悟はすでに決まっています」
ソランが少し間を置いた。
「それほど時間は残されていないだろう」
窓の外を見た。
雲の向こうに、地上がある。
「準備を怠らないようにな」
「はい」
二人が廊下を歩いた。
天空が、静かだった。




