90,出発と来訪者
朝、城の玄関口に荷物が並んでいた。
レリス、アモン、ユキナがファルネイスへ。
カイトが帝国へ。
それぞれの出発だった。
───
レリスがセバチャの前に立った。
「セバチャ、いってきます」
「お気をつけて、レリス様」
「レリス!」
「はい、レリス様」
「学校がんばる」
「左様でございますか」
「60てんとる」
「ご期待申し上げております」
レリスが少し考えた。
「セバチャって、なんでカキンオーのしつじなの?」
セバチャが少し止まった。
「それは」
しばらく考えた。
「カキンオー様のそばにいるのが、自然なことのように感じるからでございます」
レリスが頷いた。
「そっか」
「はい」
「わたしも、おじさんのそばがすきだよ」
セバチャが静かに微笑んだ。
「左様でございますね」
「またかえってくるね」
「お待ちしております」
レリスが走った。
───
アモンがカキンオーの前にいた。
しばらく、黙っていた。
「魔核は、もう十分チュ」
カキンオーが頷いた。
「でも許してないチュ」
また頷いた。
アモンが少し間を置いた。
「レリスのこと、任せるチュ」
カキンオーが少し止まった。
頷いた。
アモンが前足を動かした。
「行くチュ」
それだけだった。
カキンオーは見送った。
───
玄関口で。
ライラがユキナの荷物を確認していた。
ふと、手が止まった。
ユキナの薬指に、指輪があった。
違和感があった。
ライラが視線を上げた。
目が合った。
ユキナが意味ありげに笑った。
ライラは何も言わなかった。
視線を荷物に戻した。
何も聞かなかった。
───
一人、また一人と出発した。
馬車が遠ざかっていった。
城が静かになった。
カキンオーは城門の前に立っていた。
ライラが隣に来た。
何も言わなかった。
二人で、馬車が見えなくなるまで見ていた。
───
城の謁見の間は、いつからか練習室と化していた。
カイトとラスボス代行。
二人の練習場だった。
今は静かだった。
セバチャから戦闘申請の連絡があった。
カキンオーは玉座に座っていた。
ウキウキとしていた。
謁見の間が、久しぶりに本来の使い方をされる日だった。
───
五人が入ってきた。
魔狩人だった。
全員が武器を持っていた。
付与武器だった。
カキンオーは玉座から見た。
なかなか、良さそうだった。
五人が謁見の間に入ってきた。
玉座のカキンオーを見た。
構えた。
魔法が走った。
付与武器が光った。
カキンオーは受けた。
全部、受けた。
悪くなかった。
なかなかの出来だった。
もう少し、やらせてみよう。
五人が攻撃を重ねた。
魔法と武器が交差した。
光が広がった。
カキンオーは動かなかった。
受け続けた。
そろそろいいか。
「愚かなり」
低く、静かに言った。
動いた。
五人が吹き飛んだ。
壁に叩きつけられた。
動かなくなった。
───
カキンオーが歩み寄った。
武器を手に取った。
確認した。
光っていた。
二色、光っていた。
カキンオーが止まった。
もう一度見た。
二色だった。
赤と青だった。
ありえなかった。
付与武器の発光は一色が限界のはずだった。
二色は、見たことがなかった。
カキンオーが食い入るように見ていた。
そこに。
床に倒れていた魔狩人の一人が口を開いた。
「そ、それは」
カキンオーが見た。
「今、帝国で一番と言われる鍛冶師のものです」
少し間があった。
「チョンパという者の作です」
カキンオーは武器を見た。
しばらく見ていた。
それから、魔狩人に武器を返した。
魔狩人が目を見開いた。
カキンオーは回復魔法をかけた。
それだけだった。
作業場に戻った。
───
回復薬が並んでいた。
もうすぐ完成する。
終わったら、付与武器を作ろう。
二色の発光。
どうやれば出来るのか。
カキンオーは素材を見た。
少し、燃えていた。
悪くなかった。
【作者より】
命がけで挑んできた者たちを完全にスルーして、武器の構造に夢中になるカキンオー。
アモン「いい加減にするチュ」
第90話という大台までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!
「レリスがんばれ」「ユキナの指輪を見たライラの反応が怖い(笑)」など、少しでも楽しんでいただけましたら、90話到達の記念にページ一番下の【評価ポイント】を押して作者を応援していただけると、めちゃくちゃ嬉しいです!




