87,アモンダール
とても冷たかった。
いつものアモンではなかった。
カキンオーが椅子に座った。
アモンを見た。
アモンがカキンオーを見た。
しばらく、黙っていた。
「名前を教えてやるチュ」
静かだった。
「アモンダール」
カキンオーは答えなかった。
「最悪の悪魔と呼ばれていたチュ」
また沈黙があった。
「知ってたチュ?」
カキンオーが少し間を置いた。
頷いた。
アモンが目を細めた。
「そうチュか」
───
「なぜこんな姿にしたチュ」
低かった。
静かだった。
怒りが、滲んでいた。
カキンオーは答えなかった。
しばらくして。
立ち上がった。
棚を開けた。
古いファイルを取り出した。
作業台に置いた。
アモンが見た。
ゲームの取引履歴だった。
運営との直接取引。
融合体素材として使用することを条件に。
ラスボスのコピーと交換。
アモンが黙って読んだ。
しばらくして。
「これだけチュ?」
カキンオーが頷いた。
「ラスボスが欲しかっただけチュ?」
また頷いた。
「悪いとは思わなかったチュか」
カキンオーが少し止まった。
頷いた。
アモンが目を細めた。
「融合素材チュ」
静かだった。
カキンオーは答えなかった。
否定しなかった。
「そうチュか」
アモンが作業台から降りた。
床を歩いた。
部屋の端まで歩いた。
止まった。
「何でネズミと混ぜたチュ」
カキンオーは答えない。
「だからこの姿のままチュ」
頷いた。
「そういうことチュか」
アモンが振り返らなかった。
しばらく、沈黙があった。
───
「怒ってるチュ」
静かだった。
「当然チュ」
カキンオーは答えなかった。
「最悪の悪魔が、ネズミの体に入れられて」
アモンが少し笑った。
笑い声ではなかった。
「レリスに懐かれてるチュ」
カキンオーは答えなかった。
「おかしいチュ」
また沈黙があった。
カキンオーは作業台を見ていた。
瓶が並んでいた。
アモンが振り返った。
「謝らないチュ?」
カキンオーが少し止まった。
アモンを見た。
それから、少し頭を下げた。
アモンが黙った。
しばらくして。
「まあ、いいチュ」
低い声だった。
「レリスは悪くないチュ」
カキンオーは答えなかった。
「カイトも、ライラも」
また止まった。
「悪くないチュ」
カキンオーが静かに聞いていた。
「お前のことは」
アモンが少し間を置いた。
「まだ怒ってるチュ」
カキンオーが頷いた。
「それでいいチュ」
───
しばらく、二人とも黙っていた。
静かだった。
作業台の瓶が並んでいた。
アモンが瓶を見た。
「魔核、作ってるチュ?」
カキンオーが頷いた。
「前と違う種類を作れチュ」
カキンオーが少し止まった。
「前回のは悪魔系チュ。次は別の系統チュ」
カキンオーがアモンを見た。
「力が戻るチュ。もっとチュ」
沈黙があった。
カキンオーが頷いた。
アモンが作業台に戻った。
丸まった。
目を細めた。
「早くするチュ」
カキンオーは素材の確認を始めた。
静かだった。
悪くなかった。
とは言えなかった。
でも。
やることがあった。




