79,魔王の地獄
カキンオーは玉座に座っていた。
闇の鎧が、部屋の空気を重くしていた。
会心のラスボスムーブだった。
しかし、カキンオーは怒っていた。
こいつらのせいだ。
こいつらが来なければ。
命令する必要がなかった。
セバチャに。
ライラに。
命令してしまった。
頼むと言ったが、黙っていた。
怒らせてしまったかもしれない。
傷つけてしまったかもしれない。
だから話すのは、怖い。
だからこんなことになる。
全部、こいつらのせいだ。
八つ当たりでもいい。
そんなことを考えていた時。
目の前の十人が魔法を構えた。
───
一斉に放たれた。
全弾、受けた。
無傷だった。
静寂があった。
誰も、何が起きたか分からなかった。
カキンオーは立っていた。
鎧に、傷一つなかった。
「ま、魔法が」
ヴェンの声が、震えていた。
「効いてないのか」
リオが静かに言った。
ザインが目を細めた。
「そんな馬鹿な」
カキンオーが首を傾けた。
「もういいのか?」
低い声だった。
静かだった。
───
カキンオーが動いた。
速かった。
一人が吹き飛んだ。
何が起きたか分からなかった。
もう一人が魔法を放った。
カキンオーが手を上げた。
魔法が、向きを変えた。
放った本人に向かって飛んでいった。
直撃した。
吹き飛んだ。
「魔法とはこう使うのだ」
静かだった。
低かった。
残った者たちが魔法を構えた。
震えていた。
それでも、放った。
カキンオーが受けた。
全部、受けた。
無傷だった。
一歩、踏み出した。
「その程度とはな」
誰かが後退した。
誰かが逃げようとした。
カキンオーが動いた。
逃げられなかった。
一人、また一人と吹き飛んでいった。
壁に叩きつけられた。
光に包まれた。
消えていった。
───
ヴェンが光に包まれた。
消えかけた。
カキンオーが腕を掴んだ。
引きずり出した。
光が、砕けた。
ヴェンが床に叩きつけられた。
動けなかった。
「も、もう終わりだ」
震える声だった。
「地獄はまだ始まったばかりだ」
カキンオーが見下ろした。
ヴェンが目を閉じた。
また光が来た。
カキンオーが手を振った。
光が、砕けた。
消えた。
ヴェンが床に伸びた。
動かなくなった。
───
最後にザインとリオだけが残った。
二人とも、満身創痍だった。
それでも立っていた。
ザインが構えた。
本気だった。
今まで出したことのない力だった。
リオも並んだ。
二人同時に放った。
轟音が響いた。
煙が広がった。
静寂があった。
煙が晴れた。
カキンオーが立っていた。
魔法を握りつぶしていた。
ザインが息を飲んだ。
「なんなんだよ、お前は」
カキンオーは答えなかった。
一歩、踏み出した。
ザインが吹き飛んだ。
リオが吹き飛んだ。
二人が壁に叩きつけられた。
光に包まれた。
カキンオーが手を伸ばした。
引きずり出した。
光が砕けた。
二人が床に落ちた。
動かなかった。
「もう終わりか」
低く、静かに言った。
二人は答えなかった。
答えられなかった。
また光が来た。
カキンオーが手を振った。
砕けた。
消えた。
───
謁見の間が、静かになった。
カキンオーだけが立っていた。
誰も動かなかった。
誰も立てなかった。
放置した。
城門を出た。
───
空にドラゴンがいた。
複数いた。
カキンオーの姿を見た瞬間、一斉に後退した。
逃げ始めた。
カキンオーが一頭を捕まえた。
動きが止まった。
ドラゴンがカキンオーを見た。
カキンオーがドラゴンを見た。
「従え」
沈黙があった。
ドラゴンが、ゆっくりと頭を垂れた。
他のドラゴンたちが遠ざかっていった。
やがて空から消えた。
カキンオーは空を睨んだ。




