76,帝国・決戦
セバチャがガッシュと向き合っていた。
カイトがノルと向き合っていた。
均衡していた。
ガッシュが魔法を重ねた。
セバチャが杖で捌いた。
ノルが冷静に魔法を放った。
カイトが身体向上で躱した。
激しかった。
だが、動かなかった。
───
城壁の上でテイが見ていた。
ガッシュが押せていない。
ノルが均衡している。
テイが舌打ちした。
「何やってるんだ」
ドラゴンから飛び降りた。
魔法を構えた。
セバチャに向けて放った。
セバチャが弾いた。
しかし次がきた。
ガッシュとテイ、二人分の魔法だった。
セバチャが吹き飛んだ。
同じ瞬間、ノルがカイトに向けて大きく魔法を放った。
身体向上が、切れた。
カイトに直撃した。
壁に叩きつけられた。
崩れ落ちた。
セバチャが転がってきた。
二人が壁を背に並んだ。
三人が歩いてくる。
ドラゴンが上空を旋回していた。
セバチャが静かに口を開いた。
「カイト様。何か手はありますか」
カイトが荒い息のまま言った。
「相手が一人なら」
セバチャが少し間を置いた。
「では、しばらく離れていてください」
「セバチャさん?」
「十メートル以上、離れてください」
セバチャの声が、静かだった。
いつもと同じ声だった。
でも、何かが違った。
カイトが壁を伝って立ち上がった。
後退した。
距離を取った。
───
セバチャが立ち上がった。
杖を落とした。
三人を見た。
三人が足を止めた。
空気が、変わった。
セバチャの体が、膨れ始めた。
ゆっくりと。
確実に。
二倍になった。
咆哮が上がった。
城壁が震えた。
カイトが壁に手をついた。
三人が後退した。
セバチャが突進した。
───
まず、ドラゴンだった。
上空を旋回していた三頭に向かって跳んだ。
あっという間だった。
首が、へし折れた。
一頭。
二頭。
三頭。
ドラゴンたちが落ちていった。
テイが息を飲んだ。
「ドラゴンの首を」
───
セバチャが地上に降りた。
ガッシュに向かった。
ガッシュが魔力の盾を展開した。
ノルが加わった。
二人がかりの魔法がセバチャに叩き込まれた。
セバチャの片腕が、あらぬ方向に曲がった。
構わなかった。
盾に向かって突っ込んだ。
噛みついた。
ガッシュが叫んだ。
致命傷だった。
ガッシュが白い光とともに消えた。
───
残ったノルとテイが魔法を集中させた。
セバチャに叩き込んだ。
セバチャが怯んだ。
一瞬だった。
砕けた腕を叩きつけた。
ノルが怯んだ。
セバチャが襲いかかった。
ノルが魔法を構えた。
セバチャの拳がノルの腹に突き刺さった。
同時に白い剣のような魔法がセバチャの胸を貫いた。
二人が同時に止まった。
ノルが白い光に包まれた。
消えた。
セバチャが膝をついた。
体が、白い粒子になり始めた。
ゆっくりと。
端から、消えていった。
───
テイだけが残った。
ドラゴンの死体が周りに転がっていた。
セバチャの杖が地面にあった。
「どんな生態なんだよ」
悪態をついた。
壁を背に立つカイトに視線を投げた。
カイトがセバチャの杖を見ていた。
「セバチャさん」
小さく呟いた。
それから、目を上げた。
テイを見た。
剣を二本、抜いた。
テイが少し身構えた。
「まだやるのか、地上の」
カイトが構えた。
全身に流れを送った。
身体向上ではなかった。
もっと深いところから、引き出した。
これを使えば。
終わったあと、動けなくなる。
魔法もスキルも、何も使えなくなる。
構わなかった。
二天滅剣。
カイトが消えた。
───
テイの前に現れた。
高速の刃が走った。
テイが白い魔法で受けた。
弾いた。
次の瞬間。
背後から気配があった。
振り返る間もなかった。
二本目の剣が、背中を大きく切り裂いた。
超高速の抜刀だった。
超高速の体捌きだった。
テイが前につんのめった。
膝をついた。
白い光に包まれた。
「地上の、人間が」
消えた。
───
静かになった。
ドラゴンの死体だけが残っていた。
地面に、セバチャの杖があった。
カイトがその場に崩れ落ちた。
体が、動かなかった。
指一本、動かせなかった。
天を仰いだ。
空が、青かった。
「セバチャさん」
誰も、答えなかった。




