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カキンオー(課金王)~コミュ障の俺が魔王扱いされ、世界が勝手に震えてる~  作者:


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72/129

72,予告

 フロストスの声が、大陸中に響いた。


 低く、重く、空気を震わせた。


 それは言葉だった。



「三日後、天空の人間がこの大陸に降る。抗え」



 それだけだった。


 それだけで、十分だった。


───



 ファルネイスの街が、ざわめいた。


 市場で声が上がった。


 路地で人が走った。


 家の窓が次々と閉まった。


 天空。


 三日後。


 繰り返される惨劇。


 その言葉が、波紋のように広がっていった。


───



 レリスの部屋で。


 ミナが窓を閉めた。


「レリス様、中にいてください」


「なに、なにがおきてるの」


「天空の人間が来るそうです」


 レリスが固まった。


 アモンが枕の上で目を開けた。


 耳が、立っていた。


───



 ユキナが外から戻ってきた。


 顔が引き締まっていた。


「街が混乱してる。復興どころじゃなくなった」


 ミナが頷いた。


「カイト様が来ています」


───



 カイトが部屋に入ってきた。


「状況は分かってるな」


 全員が頷いた。


「俺は帝国に行く」


「帝国に?」


 ユキナが聞いた。


「モブテキをほっておけない。天空が帝国に向かう可能性もある」


 カイトがユキナを見た。


「お前たちは城に逃げろ」


 ユキナが少し間を置いた。


「私は行けない」


「なぜ」


「今更ここを見捨てられない。復興を手伝ってきた人たちがいる」


 カイトが黙った。


 それから、レリスを見た。


「レリスは城に行け」


 レリスは頷かない。


「ともだちいる。ガルドも」


「レリス」


 カイトが真っ直ぐ見た。


「お前はここにいても意味がない。城に行け」


 レリスがうつむいた。


 分かっていた。


 戦えない。


 足手まといになる。


 でも。


 レリスはアモンを見た。


 アモンが少し間を置いた。


「……この前は油断したチュ」


 ぷいと顔を逸らした。


「俺が心配されるとかありえないチュ。楽勝チュ」


「ほんとに?」


「うるさいチュ」


「ほんとに楽勝?」


「うるさいチュ!」


 レリスがアモンを見た。


 アモンは顔を逸らしたままだった。


 耳は立っていた。


「ミナさんは」


「ずっとそばにいます」


 ミナが静かに言った。


 迷いがなかった。


 レリスは小さく息を吸った。


「わかった。ここにいる」


 カイトが何か言いかけて、やめた。


「ユキナ、頼む」


「分かってる」


 カイトが部屋を出た。


 足音が遠ざかった。


 部屋が静かになった。


 アモンがレリスの隣に来た。


 何も言わなかった。


 ただ、いた。


───



 城では。


 セバチャがライラと向き合っていた。


「フロストスの予告が届きました」


 ライラが頷いた。


「三日後です」


 二人が同時にカキンオーを見た。


 カキンオーは作業台の前にいた。


 手が止まっていた。


 セバチャが一歩前に出た。


「カキンオー様。方針をお聞かせください」


 カキンオーは答えなかった。


 ファルネイスを考えていた。


 レリスがいる。


 アモンがいる。


 ユキナがいる。


 ミナがいる。


 カイトは帝国に向かうかもしれない。


「カキンオー様をお守りすることが最優先かと」


 セバチャが続けた。


「ここに留まり、城を守る。それが最善です」


「私もそう思います」


 ライラが頷いた。


「カキンオー様さえご無事なら」


 カキンオーは少し考えた。


 それから、口を開いた。


「セバチャは帝国へ」


 セバチャが固まった。


「ライラ、代行はファルネイスへ」


 ライラが目を見開いた。


「……カキンオー様」


「それでは」


 セバチャの声が、珍しく動揺を帯びた。


「カキンオー様がお一人になります。タルドはおりますが、戦力としては」


 カキンオーは答えなかった。


 指輪に意識を向けた。


 引き出した。


 闇の鎧が、纏わりついた。


 黒より暗い闇が、全身を覆った。


 部屋の空気が、変わった。


 セバチャが息を飲んだ。


 ライラが一歩後ずさった。


 二人とも、何も言えなかった。


 しばらくして。


 カキンオーが静かに言った。


「頼む」


 セバチャが深く頭を下げた。


 ライラも頭を下げた。


 二人とも、黙っていた。


 黙っていた。




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