69,魔核
朝、カキンオーは倉庫にいた。
魔核を三つ、手に取った。
作業場に戻った。
作業台に並べた。
流れを作った。
三つに同時に流し込んだ。
定着した。
一つになった。
昨日と同じだった。
思ったより、簡単だった。
カキンオーは融合した魔核を眺めた。
なぜこんなに簡単にできるのか。
魔核融合自体が簡単なのか。
それとも鍛冶や付与の経験が活きているのか。
分からなかった。
でも、できた。
まあ、いいか。
また倉庫に戻った。
魔核を次々と手に取った。
三つ融合、また三つ融合。
倉庫の魔核を片っ端から融合していった。
───
昼過ぎ、謁見の間で。
カキンオーがラスボス代行に融合した魔核を渡した。
ラスボス代行がそれを受け取った。
しばらくして、魔核がラスボス代行に吸収された。
カキンオーが見ていた。
強くなっているのか、なっていないのか。
なかなか分からなかった。
見た目は変わっていなかった。
素振りも、さっきと変わらない気がした。
まあ、倉庫の魔核では限界があるか。
カキンオーは指輪に意識を向けた。
ゲーム時代の魔核があった。
ボスクラスのレアドロップばかりだった。
これを融合してみよう。
指輪から魔核を取り出した。
五つ、並べた。
流れを作った。
五つに同時に流し込んだ。
重かった。
三つの時より、明らかに重かった。
抵抗があった。
でも、止まらなかった。
流し続けた。
定着した。
一つになった。
光が黒から深黒に変わった。
密度が、桁違いだった。
カキンオーは融合した魔核を手に取った。
重かった。
今まで作った中で一番重かった。
これは、次元が違う。
カキンオーはラスボス代行に渡した。
ラスボス代行が受け取った。
吸収した。
瞬間、空気が変わった。
ラスボス代行の存在感が、増した。
剣を構えた。
素振りをした。
速かった。
さっきまでとは、明らかに違った。
カキンオーは少し後退した。
強くなりすぎたかもしれない。
でも、まあ、問題はない。
ラスボス代行が頷いた。
カキンオーも頷いた。
───
それから、融合個数を変えながら試した。
三つ融合は簡単だった。
四つ融合は少し重かった。
五つ融合は、かなり重かった。
でも、スキルがカンストしているせいか、失敗はそこまで多くなかった。
たまに崩れた。
でも、また挑戦すればよかった。
そして五つ融合の効果は、確実に桁違いだった。
素材がゲーム時代のボスクラスのレアドロップというのもあるが。
それを差し引いても、五つ融合は別格だった。
カキンオーは作業台を眺めた。
アモンにも渡したい。
アモンはファルネイスにいる。
そこに、扉がノックされた。
「入っていいか」
カイトだった。
返事がないまま扉が開いた。
カイトが入ってきた。
「ファルネイスに行こうと思う」
カキンオーが手を止めた。
「この世界の魔法の使い方を、もっと学びたい。帝国やここだけじゃなく、共和国側の魔法使いにも話を聞いてみたい」
カキンオーが頷いた。
「ついでにレリスたちの様子も見てくる」
また頷いた。
カキンオーは少し考えた。
作業台の上の魔核を見た。
五つ融合した魔核があった。
深黒に光っていた。
カキンオーはそれを手に取った。
カイトに差し出した。
カイトが受け取った。
「これは?」
カキンオーが頷いた。
「渡せばいいのか」
また頷いた。
「誰に」
カキンオーは答えなかった。
少し間を置いた。
また頷いた。
カイトがしばらく魔核を見た。
「まあ、渡しとけばいいんだな」
カキンオーが頷いた。
「よくわからんが、持っていく」
カイトが魔核を懐にしまった。
重そうだった。
「なんか、ずしっとくるな」
カキンオーは答えなかった。
「いつ戻る、とは言えないが、なるべく早く戻る」
カキンオーが頷いた。
「じゃあな」
カイトが扉を出た。
足音が遠ざかっていった。
カキンオーは作業台に向かった。
静かだった。
───
夜、ライラが夕食を持ってきた。
「カイト様が旅立たれましたね」
カキンオーが頷いた。
「また城が静かになります」
また頷いた。
「まあ、いつものことですね」
ライラが微笑んだ。
「カキンオー様、最近ずっと作業されていますね」
カキンオーは答えなかった。
「無理はしないでください」
カキンオーが頷いた。
ライラが扉を閉めた。
カキンオーはスープを飲んだ。
うまかった。
静かだった。
───
ファルネイスのアルバ学院では。
レリスが石板を見ていた。
明日が試験だった。
「むずかしい」
「うるさいチュ」
アモンが枕の上で言った。
「でもむずかしい」
「うるさいチュ」
レリスが石板を見続けた。
ガルドに教えてもらった。
ユキナにも少し教えてもらった。
でも、むずかしかった。
レリスは窓の外を見た。
夜の空だった。
星が出ていた。
南の方角に、一つ明るい星があった。
「おじさん、みてる?」
誰も答えなかった。
アモンが欠伸をした。
「みてるチュ、たぶん」
レリスが頷いた。
「じゃあがんばる」
また石板に向かった。
夜が深くなっていた。
明日は試験だった。
そして。
天空から、何かが近づいていた。
まだ遠かった。
でも、確実に近づいていた。
誰も、まだ知らなかった。




