70,テスト
朝、レリスが身支度をしていた。
今日は試験だった。
石板を確認した。
昨日勉強したことを思い出した。
比の計算。
文章題。
全部できる気がした。
レリスは拳を握った。
がんばった。
死ぬほどがんばった。
絶対できる。
「アモン、いっしょにいく?」
アモンが枕の上で丸まっていた。
「無理チュ」
「なんで」
「試験に動物は連れ込めないチュ」
「アモンは動物じゃない」
「うるさいチュ。とにかくダメチュ」
レリスが少し考えた。
「ひとりでいくの?」
「ミナがいるチュ」
「アモンはどうするの」
「ここにいるチュ」
アモンが目を閉じた。
レリスはアモンを見た。
少し不安だった。
でも、仕方ない。
「じゃあいってくる」
「うるさいチュ」
「がんばってくるね」
「うるさいチュ」
レリスが部屋を出た。
アモンが片目を開けた。
まあ、大丈夫チュ。
目を閉じた。
───
学院の教室で。
レリスが席についていた。
周りの生徒たちも席についていた。
エルダ先生が試験用紙を配った。
「始めてください」
レリスは試験用紙を見た。
最初の問題を見た。
比の計算だった。
ガルドに教えてもらった。
できる。
書いた。
次の問題。
ユキナに教えてもらったとこ。
できる気がした。
書いた。
文章題。
少し難しかった。
でも、考えた。
書いた。
レリスは試験用紙を見渡した。
全部書けた。
消しゴムで直したところもあったが、全部書けた。
レリスは拳を握った。
できた。
もしかしたら100点かもしれない。
───
同じ頃、部屋でアモンがいた。
扉がノックされた。
ミナが入ってきた。
「アモン、お客様です」
「誰チュ」
「カイト様です」
アモンが目を開けた。
───
部屋に入ってきたカイトを、アモンが見た。
「久しぶりチュ」
「久しぶり。元気か」
「まあチュ」
カイトが懐から何かを取り出した。
深黒に光る、重そうな核だった。
「これ、カキンオーから。渡せって言われた」
アモンが核を見た。
目が細くなった。
「これは」
「なんだ、分かるのか」
「魔核チュ。しかも融合チュ」
カイトが少し止まった。
「融合って何だ」
「魔核を掛け合わせた素材チュ。悪魔系の強化素材チュ」
「つまり、お前に使えるのか」
「俺にだチュ」
アモンが魔核に触れた。
光が広がった。
黒い光だった。
アモンが魔核を吸収した。
しばらく何も起きなかった。
カイトが見ていた。
それから。
アモンの毛並みが、変わった。
少しだけ、良くなった。
黒い毛が、深みを帯びた。
目の赤が、鮮明になった。
「すごいチュ」
アモンが自分の手を見た。
「これはすごいチュ」
「強くなったのか」
「なったチュ。かなりチュ」
カイトが頷いた。
「カキンオーから、だな」
「うるさいチュ」
アモンが欠伸をした。
でも、毛並みが良くなっていた。
カイトが苦笑いした。
───
夕方、試験が終わった。
レリスが教室から飛び出してきた。
ユキナが外で待っていた。
「できた!!」
「そうなんだ」
「ぜんぶかけた!」
「すごいじゃん」
「もしかしたら100てんかも!!」
ユキナが少し笑った。
「100点かあ」
「かもしれない!」
「まあ、頑張ったんだから、いい結果が出るといいね」
ガルドが廊下から出てきた。
「どうだった」
「できた! ぜんぶかけた!」
「そうか」
「ガルドのおかげ!」
ガルドが少し目を逸らした。
「まあ、やれば解けると言っただろう」
「100てんかも!」
ガルドが少し止まった。
「それは、どうだろうな」
「なんで!」
「まあ、結果が出てから喜べ」
レリスが膨れた。
「じゃあガルドもいっしょにごはんたべよう!」
「なぜ俺が」
「おいわいだから!」
ガルドが少し間を置いた。
「まあ、暇なら」
「やったー!」
ユキナがガルドを見た。
「明日、美味しいものを食べに行く予定なんですけど、一緒にどうですか」
「まあ、暇なら」
「暇じゃないでしょ、どうせ来るんでしょ」
ガルドが視線を逸らした。
「暇なら行く」
アモンがレリスの肩に乗った。
「不器用チュ」
「うるさい」
レリスが笑った。
ユキナも笑った。
───
翌日、学院の廊下で。
結果が張り出された。
レリスが走り寄った。
自分の名前を探した。
あった。
数字を見た。
レリスが固まった。
51点だった。
レリスはしばらく動けなかった。
51点。
100点じゃなかった。
ぜんぶかけたのに。
死ぬほどがんばったのに。
「レリス、どうだった」
ユキナが後ろから来た。
レリスが振り返った。
目が少し赤かった。
「51てん」
「えっ」
「51てん」
ユキナが掲示板を見た。
51点だった。
留年ラインは50点以下。
2回で留年。
ぎりぎり超えていた。
「まあ、合格だよ」
「でも51てん」
「100点じゃなかったか」
「うん」
レリスがうつむいた。
アモンがレリスの肩で言った。
「51点は51点チュ。50点以下じゃないチュ」
「でも」
「うるさいチュ。ごはんいくチュ」
「……うん」
レリスが少し顔を上げた。
ガルドが廊下の端に立っていた。
「何点だった」
「51てん」
「そうか」
「100てんじゃなかった」
「当たり前だ」
「なんで!」
「あの勉強量で100点は無理だ」
「じゃあなんてんとれた?」
ガルドが少し間を置いた。
「次は60点を目指せ」
レリスが少し考えた。
「60てん?」
「そうだ。一回で100点を目指すな。一歩ずつだ」
レリスが頷いた。
「わかった。60てん、とる」
「まあ、頑張れ」
ユキナがガルドを見た。
ガルドが視線を逸らした。
「ごはん、いくんだろ」
「行きましょうか」
四人が廊下を歩き始めた。
アモンがレリスの肩でぼんやりしていた。
毛並みが少し良くなっていた。
レリスがアモンを見た。
「アモン、なんかきれいになった?」
「うるさいチュ」
「ほんとにきれいになったよ」
「うるさいチュ」
レリスが笑った。
51点だったけど。
まあ、へいきだ。
たぶん。
【作者より】
境遇から考えればレリスは、がんばりました。
100点はなかなか取れませんよね、シビアな現実でした。
ガルド「51点……」
彼の胸中はいかに。
第70話という節目までお読みいただき、ありがとうございます。
「51点のリアルさに笑った」「アモンの毛並みが良くなってよかった」など、少しでも楽しんでいただけましたら、70話到達の記念にページ下部の【評価ポイント】を押して応援していただけると執筆の励みになります。




