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カキンオー(課金王)~コミュ障の俺が魔王扱いされ、世界が勝手に震えてる~  作者:


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60/70

60,圧倒

 女が闇の鎧を見ていた。


 動かなかった。


 初めて、足が止まっていた。


 闇の鎧が前に出た。


 女が魔力を構えた。


「何者だ」


 闇の鎧は答えなかった。


 ただ、歩いてきた。


 女が魔法を放った。


 白い光だった。


 強力だった。


 闇の鎧が片手で払った。


 光が消えた。


 女が目を細めた。


「私の魔法を、片手で」


 闇の鎧は答えなかった。


 女が魔力を集め始めた。


 さっきユキナに放ったものより、大きかった。


「いいだろう。相手になってやる」


───


 戦いが始まった。


 女が魔法を連続で放った。


 白い光が連続で飛んだ。


 闇の鎧が動いた。


 速かった。


 全て躱した。


 女が眉をひそめた。


「速い」


 もう一度放った。


 今度は範囲を広げた。


 逃げ場をなくした。


 闇の鎧が止まった。


 光が直撃した。


 煙が上がった。


 女が口元を緩めた。


「終わりか」


 煙が晴れた。


 闇の鎧が立っていた。


 無傷だった。


 女の口元が、固まった。


「あの魔力量で、無傷?」


 闇の鎧が踏み込んだ。


 一歩だった。


 ただの一歩だった。


 地面が揺れた。


 女が後退した。


 思わず後退していた。


 気づいて、止まった。


「私が、恐れたというの?」


 自分でも信じられないようだった。


 闇の鎧が剣を抜いた。


 構えた。


 女が全力の魔法を展開した。


「まとめて消してやる」


 光が爆発した。


 街の一角が吹き飛んだ。


 砂埃が舞い上がった。


 全てが晴れた時。


 闇の鎧が女の眼前にいた。


 剣を首元に当てていた。


 女が動けなかった。


 初めて、恐怖が顔に出た。


「いつの間に」


 闇の鎧は答えなかった。


 ただ、剣を当てていた。


「地上の、魔王ごときが」


 闇の鎧は動かなかった。


「私が本気を出せば」


 答えなかった。


 女の目が揺れた。


 本気を出した結果が、これだった。


 それでも届かなかった。


 女が奥歯を噛んだ。


「覚えていろ」


 空から光が振ってくる。


 女の体が光に包まれ始めた。


 神の光だった。


 撤退の光だった。


 闇の鎧が剣を引いた。


 しかし。


 闇の鎧の腕が、光の中に伸びた。


 女の腕を掴んだ。


 光が激しく揺れた。


 弾き出そうとした。


 闇の鎧が引っ張った。


 光が砕けた。


 女が引きずり出された。


 地面に叩きつけられた。


 咳き込んだ。


 顔を上げた。


 闇の鎧が見下ろしていた。


 女が目を見開いた。


「神の光を、砕いた?」


 声が震えていた。


「あり得ない。神の光は転移魔法の最上位だ。地上の魔物が砕けるはずが」


 闇の鎧は答えなかった。


「何者だ、お前は」


 答えなかった。


 ただ、見下ろしていた。


 女が後ずさった。


 立ち上がった。


 体が震えていた。


「お前は、魔王などではない」


 女が空を見上げた。


 別の光が、上空から降ってきた。


 天空からの光だった。


 女の体を包んだ。


 今度は闇の鎧も止めなかった。


 女が消えた。


 消える寸前に、言葉が聞こえた。


「報告しなければ」


 それだけだった。


 静寂が戻った。


───


 ユキナがその場に座り込んでいた。


 体が動かなかった。


 闇の鎧が振り返った。


 ユキナを見た。


 ユキナが見上げた。


 目が合った。


 闇の鎧だった。


 黒鎧とは違った。


 もっと暗かった。


 もっと深かった。


 でも。


 ユキナが少し目を細めた。


 なんとなく、分かった。


「ありがとう」


 闇の鎧は答えなかった。


 でも、視線を外さなかった。


 闇の鎧がユキナの前にしゃがんだ。


 怪我を確認するように、ユキナを見た。


 ユキナが闇の鎧を見た。


「大丈夫」


 闇の鎧は答えなかった。


 ユキナが少し笑った。


「あなたは? 大丈夫?」


 答えなかった。


 闇の鎧が立ち上がった。


 ユキナから視線を外した。


 歩き始めた。


「また、来てくれるの」


 闇の鎧が少し止まった。


 振り返らなかった。


 また歩き始めた。


 夜の街に、闇の鎧が消えていった。


 ユキナはその背中が見えなくなるまで、見ていた。


 言っておけばよかった。


 まだ、そう思っていた。



【作者より】


最上位の転移魔法すら物理で引きずり出す、新たな「闇の鎧」の圧倒的パワー!!


カキンオー(なんかピリッときたな)


ついに第60話という大きな節目までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!


「天空の連中を圧倒してスカッとした!」「ユキナと田中君の不器用な距離感にグッときた!」と少しでも心が動きましたら、60話到達の記念にページ一番下の【評価ポイント】を押して作者を応援していただけると、めちゃくちゃ嬉しいです!


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