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カキンオー(課金王)~コミュ障の俺が魔王扱いされ、世界が勝手に震えてる~  作者:


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59,闇と光

 路地で、戦いが始まっていた。


 男が光の魔法を放った。


 カイトが横に跳んだ。


 光が石畳を抉った。


 セバチャが空中に杖を出現させた。


 握った。


 男の背後に回った。


 男が振り返った。


 光の壁が展開した。


 攻防一体だった。


 セバチャの杖が光の壁に当たった。


 弾き返された。


「地上の老人が」


 男が手を向けた。


 光が収束した。


 カイトが斬りかかった。


 男が光の剣を作り出した。


 鍔迫り合いになった。


 カイトの剣が軋んだ。


「力が違いすぎる」


 男が笑った。


「地上の人間が、天空の者と戦うとはな」


 カイトが押し返された。


 壁に叩きつけられた。


 立ち上がった。


 そこに黒鎧が前に出た。


 男が黒鎧を見た。


 少し表情が変わった。


「南の魔王、か」


 黒鎧は答えなかった。


 ただ、前に出た。


 男が光を集め始めた。


 大量だった。


 路地全体が白く輝いた。


「フロストスを吹き飛ばした存在とやら、我が光の前にひれ伏せ」


 光が放たれた。


 黒鎧が動いた。


 光が弾かれた。


 男が固まった。


「弾いた?」


 黒鎧が一歩前に出た。


 男が光の壁を展開した。


 黒鎧がその壁に触れた。


 壁が揺れた。


 男の顔に、初めて焦りが出た。


「馬鹿な、この魔力は」


 カイトが横から斬りかかった。


 セバチャが背後から杖を振った。


 三方から同時に攻撃が来た。


 男が全力で光の壁を展開した。


 三人が弾き飛ばされた。


 カイトが地面を転がった。


 セバチャが壁に当たった。


 黒鎧が踏みとどまった。


 男が息を整えた。


「手こずらせる。だが」


 男が光を集め始めた。


 さっきより、遥かに大きかった。


 路地全体が白く染まった。


「終わりだ」


 光が放たれた。


 カイトが咄嗟に身を縮めた。


 セバチャが杖を構えた。


 黒鎧が前に出た。


 セバチャとカイトをかばった。


 光が直撃した。


 轟音がした。


 煙が上がった。


 煙が晴れた。


 黒鎧が立っていた。


 片腕が、なかった。


 肩から先が、消えていた。


 カイトが息を呑んだ。


 セバチャが動けなかった。


 男が目を見開いた。


「片腕が吹き飛んで、まだ立っているのか」


 黒鎧が歩き出した。


 残った片腕で、剣を抜いた。


 男が後退した。


 初めて、後退した。


「ま、待て」


 黒鎧は止まらなかった。


 剣を振った。


 男が光の壁を展開した。


 壁が砕けた。


 男が吹き飛んだ。


 壁に叩きつけられた。


 男が体を起こした。


 口から血が出ていた。


 震空から光が降ってきた。


「お、覚えていろ」


 光が男を包んだ。


 男が消えた。


 路地に静寂が戻った。


 カイトが大きく息を吐いた。


「生きてるか、セバチャさん」


「なんとか」


 セバチャが壁に手をついて立ち上がった。


 二人が黒鎧を見た。


 片腕がなかった。


 黒鎧は何も言わなかった。


 ただ立っていた。


───


 街の西側では。


 戦いが続いていた。


 ユキナが剣を構えていた。


 女が魔法を放っていた。


 ユキナが躱した。


 建物が吹き飛んだ。


 ユキナが反撃した。


 炎が飛んだ。


 女が手で払った。


 何事もなかったように払った。


 ユキナが息を整えた。


 まだ本気じゃない。


 感じていた。


 女が手を向けるたびに、余裕があった。


 防ぐのに全力を使っていなかった。


 試されていた。


 そこに。


 空に光が走った。


 女が動きを止めた。


 空の光を見た。


 目を細めた。


 それを読んだ。


 女の表情が、初めて動いた。


「あの男、やられたか」


 静かな怒りだった。


「情けない」


 女がユキナを見た。


「ランク3のあの男が地上のものにやられるとは」


 女が髪を後ろに流した。


「まあ、所詮ランク3。弱者だ。私とは違う」


 ユキナが剣を構えたまま答えた。


「ランク2ってこと?」


「そうだ」


「じゃあ今まで本気じゃなかったの」


「当然だ」


 女の周囲の空気が変わった。


 圧が、増した。


 ユキナが足を踏ん張った。


「それでもまさか、地上のものがあそこまでやるとは思わなかった。少し見直した」


「嬉しくないけど」


「本気を見せてあげるわ」


 女の魔力が膨れ上がった。


 さっきまでとは、桁が違った。


───


 戦いが変わった。


 女の攻撃が、速くなった。


 重くなった。


 ユキナが躱しきれなくなった。


 右腕に魔法が掠めた。


 痺れた。


 剣を持ち直した。


 左脚に衝撃が来た。


 崩れた。


 立ち上がった。


 胸に風の刃が当たった。


 吹き飛んだ。


 壁に叩きつけられた。


 ずり落ちた。


 立ち上がろうとした。


 足が震えた。


 魔力が、ほとんど残っていなかった。


 剣を支えに、立ち上がった。


 女がゆっくりと歩いてきた。


「よく持った。地上の人間にしては」


 ユキナが息を整えた。


「まだ終わってない」


「終わりだ」


 女が手を上げた。


 大きな魔力が集まった。


 今までで一番大きかった。


 ユキナは剣を構えた。


 防げない。


 分かっていた。


 でも、退かなかった。


 頭の中に、何かが浮かんだ。


 城の地下の扉。


 閉まる寸前の扉。


 剣を差し出した手。


 ユキナは目を閉じた。


 言っておけばよかった。


 そう思った。


 田中君、と。


 好きだと。


 ただ、それだけ。


 魔法が放たれた。


 直撃する、と思った。


 しなかった。


 音がした。


 重い、鈍い音がした。


 ユキナが目を開けた。


 目の前に、人が立っていた。


 黒かった。


 いや、黒より暗かった。


 黒鎧だった。


 でも、違った。


 今まで見た黒鎧とは、色が違った。


 闇そのものを纏ったような鎧だった。


 その背中が、ユキナを守っていた。


 女が目を見開いた。


 初めて、驚いた顔をした。


「何だ、あれは」


 闇の鎧が、ゆっくりと前に出た。


 ユキナはその背中を見ていた。


 動けなかった。


 声が出なかった。


 ただ、その背中を見ていた。



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