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カキンオー(課金王)~コミュ障の俺が魔王扱いされ、世界が勝手に震えてる~  作者:


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22/23

22,剣と勇者

 レリスが作業場の扉を勢いよく開けた。


「おじさん! タルドにあげるやつ、できた?」


 俺は剣を磨いていた。


 顔を上げた。


 レリスを見た。


 剣を見た。


 小さく頷いた。


「やった! よんでくる!」


 レリスが走って行った。


 廊下の奥から声が聞こえた。


「タルド! おじさんがきてって!」


「え、俺が?」


「はやく!」


「ちょっと待て、なんで俺が」


「はやく!!」


 しばらくして、タルドが作業場の扉をノックした。


「失礼します」


 入ってきた。


 脇腹をまだ少し庇うような歩き方だった。


 タルドが作業場を見回した。


 炉がある。


 作業台がある。


 工具が並んでいる。


 初めて来る場所だった。


 俺はタルドを見た。


 タルドが俺を見た。


 少し間があった。


「あの、呼びましたか」


 俺は頷いた。


 作業台の上の剣を手に取った。


 タルドに差し出した。


 タルドが固まった。


「……これを、俺に?」


 俺は頷いた。


 タルドがしばらく剣を見ていた。


「俺、城門で殴られたんですが」


 俺は頷いた。


「守れなかったんですが」


 俺はまた頷いた。


 タルドが少し困った顔をした。


「それで、なんで剣を」


 俺は答えなかった。


 答えられなかった。


 でも、差し出したままにしていた。


 タルドがしばらく剣を眺めた。


 それから両手で受け取った。


「ありがとうございます」


 俺は小さく頷いた。


 タルドが剣を持ったまま立っていた。


「これ、カキンオー様が作ったんですか」


 俺は頷いた。


「すごいですね」


 俺は首を横に振った。


 まだ粗削りだ。


 タルドが少し笑った。


「いや、すごいですよ」


 タルドが頭を下げた。


「大切にします」


 俺は何も言わなかった。


 タルドが作業場を出た。


 廊下でレリスが待っていた。


「もらった?」


「もらった」


「よかった!」


 レリスの声が遠ざかっていった。


 俺は作業場に一人残った。


 炉の火が揺れていた。


 悪くない気分だった。


 次は何を作ろうか。


 そう思った。


───


 街道の南、城まであと半日ほどの場所で。


 男が街道を歩いていた。


 荷物は少ない。


 剣を二本腰に差している。


 片方は見慣れた剣だ。


 もう片方は、少し古びている。


 クロデンだ。


 時代遅れになっても、ずっと持ち続けていた。


 男が足を止めた。


 前方の街道で、怒鳴り声がした。


 見ると、荷馬車が道の端に追い込まれていた。


 四人の男が馬車を囲んでいた。


 派手な服を着た、太った男が後ろで怒鳴っていた。


「さっさと荷物を出せ! 南の城から逃げてきたんだぞ、俺たちは! 手荒なことをされたくなければ」


 馬車の御者が震えていた。


 隣に座った女性が子供を抱きしめていた。


 男は少し考えた。


 面倒くさいな、と思った。


 でも、足が動いていた。


「ちょっといいか」


 四人が振り返った。


 太った男も振り返った。


「なんだ、お前は」


「通りがかりだ」


 男が四人と太った男を見た。


「その人たちに用はないだろ。行ってやれ」


 四人の一人が剣を抜いた。


「うるせえ、引っ込んでろ」


 男が少し息を吐いた。


 次の瞬間、四人が街道に転がっていた。


 何が起きたか、太った男には見えなかった。


 ただ、一瞬で四人が動けなくなっていた。


 太った男が後退した。


「お、お前、何者だ」


 男が答える前に、馬車から子供が飛び出してきた。


「ゆうしゃさまだ! ゆうしゃさまがたすけてくれた!」


 子供が男の腰にしがみついた。


 男が苦笑いした。


「勇者じゃないんだけどな」


 御者が頭を下げた。


「ありがとうございます、勇者様!」


「だから勇者じゃ」


 母親も頭を下げた。


「勇者様、本当にありがとうございます」


「……どういたしまして」


 男が子供の頭を軽く叩いた。


 太った男は、いつの間にかいなくなっていた。


 男は街道の先を見た。


 また逃げたか。


 まあ、いいか。


 御者が声をかけた。


「勇者様、これからどちらへ」


「南の城に少し寄ろうと思って」


 御者の顔が青くなった。


「み、南の魔王の城ですか」


「知り合いがいるかもしれないんだ」


「知り合い、ですか」


「まあ、たぶん」


 男が歩き出した。


 南の方角に、黒い城の輪郭が遠く見えた。


 男が小さく呟いた。


「カキンオー、やっぱりお前か」


 苦笑いしながら、歩き続けた。


───


 城の地下では。


 俺は三本目の剣に取り組んでいた。


 二本目よりさらに形になってきた。


 少しずつ、コツがつかめてきている。


 静かだった。


 悪くない一日だった。


 明日も続けよう。


 そう思った。



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