100,最高の剣
カイトが城に戻ってきた。
夕方だった。
ライラが出迎えた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま。カキンオーはいるか」
「地下かと」
カイトが頷いた。
───
作業場の扉をノックした。
「入っていいか」
返事はなかった。
入った。
カキンオーが作業台の前にいた。
鉄片を並べていた。
カイトを見た。
「帰ったぞ」
カキンオーが頷いた。
「帝国で色々あった」
椅子を引いて座った。
「モブテキは元気だった。帝国も少しずつ落ち着いてきてる」
カキンオーは作業台を見ていた。
「ガドラにも会った」
少し動いた。
「チョンパの話を聞いた」
カキンオーがカイトを見た。
「来月、帝国で祭典がある。3年に一度の鍛冶の祭典だ。優勝者が皇帝の剣を打つ」
カイトが少し間を置いた。
「剣を出してみないか」
カキンオーが少し止まった。
「チョンパも出る。ガドラは前回で引退を宣言した。今回はチョンパが本命だ」
カキンオーは作業台を見た。
鉄片が並んでいた。
付与の練習だった。
しばらく考えた。
頷いた。
カイトが少し驚いた。
「出るのか」
また頷いた。
「剣から打つのか」
また頷いた。
カイトが苦笑いした。
「まあ、楽しみにしてるよ」
部屋を出た。
カキンオーは作業台を見た。
新しく打つ。
今の自分の最高を出す。
それだけだった。
───
翌朝から始めた。
まず素材を確認した。
指輪の中に、良い鋼材があった。
ゲーム時代の素材だった。
この世界では手に入らないものだった。
手に取った。
重かった。
密度が高かった。
これではだめだ。
やはり同じ素材でやらなければ。
心の何処かにプライドがいた。
───
炉に火を入れた。
温度を上げた。
鋼材を入れた。
待った。
赤くなった。
取り出した。
叩いた。
形を作った。
叩いた。
また叩いた。
ゲームでは鍛冶はボタン一つだった。
この世界では違った。
でも、それが良かった。
叩くたびに、形が変わった。
少しずつ、剣になっていった。
───
ライラが昼食を持ってきた。
「食べてから続けてください」
カキンオーが頷いた。
食べた。
うまかった。
ライラが炉を見た。
「剣を打っているんですね」
頷いた。
「無理はだめですよ」
また頷いた。
ライラが少し微笑んだ。
「頑張ってください」
部屋を出た。
カキンオーは作業に戻った。
───
三日かかった。
形が出来た。
剣だった。
薄かった。
軽かった。
でも、頑丈だった。
カキンオーは剣を手に取った。
バランスが良かった。
次は付与だ。
───
作業台に剣を置いた。
流れを作った。
剣に意識を向けた。
通した。
定着した。
光った。
一色だった。
でも、深かった。
今まで作った中で、一番深い光だった。
カキンオーはしばらく剣を見ていた。
まだ先があると感じた。
もう一層。
同じ色、流れを重ねた。
また通した。
また定着した。
光が、深くなった。
重くなった。
これ以上は入らなかった。
限界だった。
でも、これが今の自分の最高だった。
カキンオーは剣を置いた。
しばらく見ていた。
悪くなかった。
いや。
良かった。
───
カイトに剣を渡した。
カイトが手に取った。
少し止まった。
「これ、かなりすごいぞ」
カキンオーは答えなかった。
「本当に出すのか」
頷いた。
「祭典がどうなるか、楽しみだな」
カイトが剣を眺めた。
「チョンパが見たら、どんな顔をするかな」
カキンオーは答えなかった。
作業台を見た。
次は何を作ろうか。
何かが変わっている気がした。
【作者より】
ついに第100話到達!!
ここまで長い旅路にお付き合いいただき、本当にありがとうございます!
ラスボス代行「……」
……彼も喜んでいます。……多分。
「静かに暮らしたい」だけだったカキンオーが、いつの間にか世界を支配(セバチャ、待て!)し、たまには殴り、そして剣を打つまでになりました。
「カキンオーの職人魂が熱い!」「100話までノンストップで楽しめた!」と少しでも感じていただけましたら、この大きな記念にページ下部の【評価ポイント】を押して作者を応援していただけると、この上なく幸せです!
この先の祭典でチョンパとどう対峙するのか……引き続き見守っていただければ幸いです!




