友よ。行きて、なす事をせよ
ここで物語は完結です。
アーサ王死後の物語……史実からやかて、伝説となる物語を自分なりにかけて良かったと思ってます。
1
我らが偉大なる王アーサーもまた
この戦いにおいて深い傷をうけた
王は傷を癒すためにアヴァロンの島に運ばれた
時に紀元五四二年 我らが王の魂に安らぎをあらんことを
ブリタニア王列伝より
2
私は王の鎧を脱いだ……息子の前で死にたかったが………修道士のいう運命は私に安易な終わりを与えなかった。
……私はあなたのそばにいけないようです。
地面に突きさしたカリブルヌスをみつめる。
そう、栄光の王から託された剣……
白く輝く美しい剣に夕日が重なり、とても美しく輝いていた。
十字架に円環が重なるようで美しい。
「これで良いのですね……我が王………」
そして、最後はこの聖剣……カリブルヌス。
約束を果たす……覚悟ができた。
3
私は膝をつき、慟哭する……私のせいで全てが終わった……
メドラウド軍が去り、私はひとりたたずむ。
私がいなければ、このような地獄ではなかった……なのに……なのに……
「あっ……ううっ……」
うめき声が聞こえた。
その声に導かれるように私はむかう。
生者がいるのだ。
この地獄のなかで、生い茂る草と屍に彼は埋もれていた。
聖者の手に持つ十字架のような剣。
「我が王………」
急いで、私は彼の体を起こす。
「我が王!!」
必死によびかけていく。
槍で胸を貫かれ、止まらない血。青ざめた顔、脈をとると弱々しい。
これは助からない。
「あっあぁぁ…………そなたか?」
覚えていたのか……王は……私が栄光の騎士団にいたのは短い期間だ。
「はい! はい! はい! 私です………覚えていてくれたのですか?」
あまたいた小姓、騎士ですぎない私を…………
思わず涙ぐんでしまった。
ここで悪魔がささやく。
もう、時間はない……
ここで……私は罪をおろす最後のチャンスだと気づいてしまう………
私は裁かれたかった………王の言葉で罵られたかったのだ。
「私が……グィネヴィア様と密通した男なのです……私が……メドラウド様の父……なのです…………」
屈してしまった………私は……
王は目を丸くして、私をみている。
風が吹いた……血の匂いを混じる吐き気をもよおす風声であった。
王はかすかな青い息をもらす。
「……そうか………そなたがいてくれて良かった………グィネヴィアは一人でなかった……のだな」
目を伏せて、王は口にした。
そう、エレイン様と同じ言葉だった……私へと手を伸ばす。
頬にふれた。
「似ているな……メドラウと……そなたには……つらい思いをさせたな……」
しずかにほほえんでいる王………なぜ……許してしまうのですか……王よ……
始めてみる王の笑顔であった。
「そなたに………礼を言わねばならぬな…………そなたがいたから………父になれた……」
涙がこぼれ落ちた。
意味があったのか……王に礼をいわれるなんて……私は………
「予は人を傷つけて生きてきたのだな………」
王は最後まで激情を口にせず清廉な王だった。
私はその事をひどく悲しくなった……彼は最後まで本音を口にできない………本当は私を許せないだろうに………
やがて、王は手に持つカリブルヌスを私に柄を向けていた。
「このカリブルヌスを………ふさわしい者へ……」
その言葉を最後に王は微笑んでくれる。
「えっ…………」
うろたえる私にカリブルヌスを握らせる。
今に決められないまま、私は王の手をつつみ込む。
「そなたしかおらぬ……そなたに……頼んだぞ……これは王の…………」
私が手にとったのを理解して、王は目をつむる。
そうして、王の脈拍は消えていく、やがて、そのまま我が王は息を引きとった。
こうして、偉大な王は心の臓器を永遠に止めた。
4
私はこの二十数年の間……カリブルヌスの価値に見合う者はいなかった………ただ一人も。
王の最後の命を果たせなかったのだ。
いつかのように、船に王の鎧をのせる。
グィネヴィアが自死したあの湖に沈めるためだ。
私は王の屍を舟にのせて、湖へと進めた……知っているのだ……王もグィネヴィア様も、本当は互いに想い合っていたことを……
もし、グィネヴィア様が私のみを愛しているのなら『あなたがいてくれて』とは言わない『あなただけがいてくれればいい』といっているはずだ。
王も私な告白に嫉妬の炎が目に浮かんでいた………でた言葉が『グィネヴィア様を一人にしなかったことへの感謝』だった……愛と、罪悪感が混じった言葉にはなりない。
グィネヴィア様が最後に待っていたのも私ではなく王だった………
そして、王はメドラウドを愛していた……しかし、本当は実の息子として愛したかった……義理ではなく……真実の息子として……
王は愛情を示すのが不器用な男だった…………
私は王にもグィネヴィアにも、メドラウドにも代理にすぎなかったのだ………
「私で良かったのだろう………か?」
ハッキリと言えるのは私はグィネヴィア様でなければ愛せなかった。王でなければ忠誠を誓えなかった。メドラウドでなければ、哀れに思わなかった。
私だけが彼らでないといけなかった……私だけが……代理ではない本物を手に入れていた…………
しかし、当時に私を名指しで向けられたのは『お前のせいだ』という、呪いの感情だけだった……わかっている。
だから、私はどこにもいけなかった……怖かった……苦しかった……一人は嫌だった……私に、勇気があれば、優しければ何かが変わったのだろうか?
私は手のなかのカリブルヌスを見つめる。
ふさわしい者など、いるわけがなかった………我王の手元にこそふさわしいのであって、ほかの誰にもふさわしくない。
「わかっています……王よ……私が生きるための理由なのでしょ……不器用に優しい人」
そのカリブルヌスを私は力を込めて湖へと投げた。
切先が鋭く、湖のなかに吸い込まれていく。
「我王……あなた以上にこの剣がふさわしい者はいません……どうぞ、王妃とともに安らかに……」
私は目を閉じて、黙祷を下げる。亡き王と王妃のために。
5
しばらく時間がたった。
「良かったのですか?」
いつの間にか修道士が、ひょうひょうとたっている。
傷一つなく
「生きていたのか?」
「護衛でしょ。 守ってくれるものかと」
修道士は肩をすくめる。
「殉教したいのかと思い。放置した………」
「ひどくないですか」
なにをいうこの男はあんだけ無謀なこと言っておいてと自死への願望でもあるのかと思っていた。
殉教して死にたがる男が自死を願う王を説き伏せようとする……構図に吐き気がする。どちらも身勝手で、相手への敬意はない。
「まぁ、しかし、異教徒に慈悲をかけ拒否されて殺されるなら……それも本望ですかね」
心の底から傲慢な男だ………あんだけ焚き付けておいて……
そんな、男でも、自分の心境を語りたくなっていたのだ。
湖の彼方に舟は流されていく。
そう、凪のように静かな湖だが、水流があり流されているのだろう。
その湖を眺めながら口をひらく。
「王の願いだから……」
首をかしげて、彼は私を見ている。
「…………そう、湖の乙女に剣を返してほしいと」
私はほほえみ疑問に答えた………グィネヴィア様の最期はまさに……湖の乙女……そう呼ばれる妖精のようのようで……だから………
「そうですか…あれほどの切れ味の名剣ならば、精霊が関わってもおかしくはないか」
知った被るように彼は答えた……意味などわかるまい。
……この国に義人はいないと喝破した修道士よ……一つ間違っている……義人は一人しかいなかったのだ………我王のみが正しかった…………
「私の……告解を聞いてくれないか……」
私は彼へ頭をさげた。
意外なものをみるように修道士は目を丸くしている。髪をかきバツの悪そうにわらう、
「わかりました」
ふと、優しい風がふいた。湖水に波紋を立てる。
その風がとても心地よくて、手をひろげていた。
今になりわかる⋯……みな、精いっぱい、やった……ならば、仕方ないのでは………ないか……やっと、私は全てを許せるような………
私は久しぶりにかすかに笑う。
歪いびつな笑みだったと思う……今変わったんだ………やっと。
私たちがやったことは……これからのブリテンの子孫たちに語り継がれるのだろう……栄光と悲劇によって……
「人を愛し、罪だけが残りました………私の名はランッェレット……栄光の騎士の一人……」
私は胸に手を当てて名乗りを上げた。
ついに私は私を許せたのだ……名もなき双剣の騎士でなく一人の騎士として。
やがて、王の鎧をのせた舟が沈んでいく、アヴァロンへと進路をとるように……………
Epilogue
生き残ったメドラウド王は、カンブリア山脈を超えて国を移し、ウェールズ小王国の一つを建国することとなる。
かの偉大なる栄光の国の残滓は続く。
そして、蛮族へと入れ替わっていくブリテンはやがてアングロサクソン七王国を建国され、イングランドへとかわっていく。
皆この国の祖先となっていくのだ。
そうして、そんな国の中を修道士とランッェレットは旅を続けた。
あの日の記憶を胸に歩きだす。
彼らの旅路の中で、キリスト教と偉大なる王の物語が伝えられていく……後にそれはアーサー王伝説へ
Fate好きは、「見ているのですか、アーサ王……夢の続きを」のシーンの美しさが好きで。
私なりのベディヴィエールをかけて満足です。
自分のなかのモヤモヤのために書き始めたストーリーでしたが、少しは納得がいったかな。それでも個別にはモヤモヤは残り続いてますが、そのための話も書くかもしれません。
好き嫌いあると思いますが、ナイス、コメントしてくれるとめちゃ嬉しいです。
たまにこういう話を書きますが、これからもよろしくお願いします〜




