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5/7

なんじは我が慈しむ子なり、我なんじを悦ぶ。

ここは自殺注意の話になりますのでご注意を。

親子間のすれ違いを初めて書きましたが、もう少し生々しくしても良かったかもな……なんとなく理想的な気が

1


みよ、主の日が来る


残忍で、憤りと激しい怒りを持ち、この地を荒らし


その中から罪人を断ち滅ぼすために来る


天の星とその星座とはその光を放たず


太陽が出ても暗く、月はその光を輝かさない


私はその悪のために世を罰し、高ぶる者の誇りを


とどめ、荒ぶる者の高慢を低くする


主なる神は言われる


わたしは生きている


わたしは悪人の死を喜ばない


むしろ悪人が、その道を離れて生きるを喜ぶ


イザヤの書より


2


残酷な結末だった。


予の馬は木々をかき分けて駆けぬけていく。


幼い体は馬の腹をしめ難く、大地を蹴るたびに体は飛ばされそう。


それでも、必死で手綱をつかみ、皮がめくれ血がにじむ。


「いけません。メドラウド様! お戻りを!」


予の年上の友が馬主を並べて制止しようとするが、予は止まらない。


彼もカムランの丘で、戦死しするまでそばにいた。

そう母と同じく輪廻の門をくぐり今はいない……


「母上! 母上が!」


愛された覚えなどない……いつも、冷たい目で私を見下ろすだけ。


それでも予にとって……ただ一人の母だった。


アグラヴェインに真実を暴かれて……なお…予の母なのだ……


たとえ、予を愛さなくても、父を愛してなかろうとも……別の男を見ていたとしても………


たどり着いた時、母は湖の桟橋にいた。


多くの騎士に囲まれ、槍の穂先を向けられている……もう逃げれない。


波打つ金色の髪を風になびかせ、薄いドレスに金のネックレスを飾り、短剣を握っている。


その短剣の向かう先は予想がつてしまう………


「やめて!! やめてください母上!」


その叫びに母上は予に視線を向ける。

母は見たことのないほほえみを浮かべた。


愛しい宝物を見つけたように………


何かの口にした。


「ーーーー」


視線の先には予……その言葉は予に!


その姿はまるで湖の妖精みたいで……見惚れた。


やっと、愛された……心の底から欲しかった……その空のように透きとおった……予だけのもの………


しかし、それは笑顔のままで断ちきられた。


「あっ! あっ! あぁーー!!!」


その光景は一瞬で赤く染まり、二度と回帰することのない孤独に予を突きおとしていく。


母上は首に短剣を突きたていた。


赤い雫がとぶ、首をつらぬき首裏から刃先が飛び出す。 首元からの血が白い衣服を赤黒く染めて………桟橋に暗い花がさいた……儚い名残のように……


「………ひゅっ……ケホッ……ケホッ…ひゅ…」


息ができず。か細い咳がもれる……こぼれ落ちるように。


片手を離し、母は手を予へと伸ばす。


とたんに、態勢が崩れ、湖に身体がおちた、水しぶきと血しぶきが舞い、沈んでいく…………


湖が少しだけ赤く染まっていく。

美しい青い透明な湖面がけがれていく……


母の足に錨のせいで沈み、遺体も上がらなかった。


「母上!!」


予が光景をみてることに騎士たちは気づかない、彼らは頭をかきため息をつく。


そこに、馬の手綱を友が進路をおさえつけた。


首をふる友に予は何も答えられず。


そう母の死によって……予が不義の息子なのか、そして、本当の父は誰かという証拠はきえた……ハッキリとされない罪は母が背負い連れ去った。


それでも、予は王太子の座をおろされた。この国は王妃と嫡子を失った…………


この十年後に予は謀反をおこす事となる。


3


「母は罪人なのか…………地獄にいるのか……」


その言葉に修道士はピクリとふるえた。


予は修道士の胸倉をつかんだ。


怒りを向けることこそ、予の力であり権力の誇示となる。


緊張感がふくれ上がっていく…………瞬間、喧騒がそれを打ち破られた。


「何事だ」


戦闘音……この男が蛮族を城内に!!


「この蛇が……っ!」


修道士をにらみつける。

兵が槍の穂先をむけ、修道士へと囲んでいく。


皮肉なことに兵と彼の構図はいつか見た母ととりかこむ兵の姿と似ていた。


死を覚悟しつつも身勝手に状況をのぞむように。


「私は知りません……しかし、これも運命なら愛するだけ………」


修道士は予の瞳をつよく射抜く、 信念がほどかぬように力強く。


「ゆえにあなた自殺はしてはいけない……」


彼は手をかざす。運命を受け入れるように。


奴も殺そう。その後で自死をすればいい、天国にも地獄にも予はいかぬ。


瞬間、母の死が脳裏をかすめる。


幸せそうにほほえみ首を突き刺す短剣、わずかに飛び散る血しぶき……あの死なら怖くはない……望んでしまう。


しかし、予は修道士を障壁に感じていた。

なにゆえか、許しをこうように……余は修道士の胸倉にすがりつくように叫んだ。


「自死しかあるまい! 死なせてくれ! 甘美なる死を!! 十分に予は苦しんだ!! もう、つぐなったであろう!!」


気づけば懇願のようにはげしく慟哭していた。


「予は殺されたくない!! 予は苦しんで殺されたくはない! 頼む自死を!」


さんざん人を殺しながら、予はあの死を受け入れたくない。できれば、母と同じ死を。


血を流し、脳漿を垂らし、内臓をぶちまける、敵に囲まれ嘲笑のなかの死など予は欲しくない……今までいらない物を押し付けられた人生なのだ……最後ぐらい望みを………………


生まれたことも王位にいることも……生きた全てが予にはいらない!!


神が運命を与えたのなら……その神など……余は信じぬ……


「 ゆえに……予はキリストなど信じぬ……余はキリストを憎む!!……次の人生では貧しくても父母に愛されて生きる!……二度苦しまぬように、予は自死するのだ!!」


かくしていた感情が止まらない。


この修道士こそ、醜い生の象徴であるように、予は彼を心を吐露しつづける。


どこが幸せだったというのか……予は……そうだ。


真実を知らず、ただ、予は父の期待や母の愛を望めたあの頃に……戻りたい………


「……あの時に帰りたいのだ!! 罪を知らぬあの頃に!! 自死させよ!! ブリテンの蛇……予を……」


その叫びは闖入者によりとぎれる。


大慌てで駆け込んでくる兵達は、みな息をととのえている。予になにかを伝えようとしてるのだ。

それは絶望ではなく、奇跡をまえに瞳を輝かせて、兵は口をひらく。


「メドラウド様!! 奇跡です!! かの偉大な王が復活なされました!!」


その兵の言葉に、取り囲む衛兵は声をあげる。


「何を……何を……?……えっ?……あっ!!!」


城下から聞こえるのは、かつての偉大な王をたたえる歓声。


『我が王! 我が王! 我が王 万歳!』


『ブリテン万歳! 我が王万歳!! 』


『ブリテン万歳!! 我が王万歳!!!!!』


まるで、敵情を攻め落としたような凱歌。


予が殺した父がよみがえったと言うのか……とっさに駆けだしていた。


まさか! まさか! まさか!


剣も取らず、着の身着ままで戦場へとはしる。


開かれた扉の先に剣をふるう王の姿。


竜飾りの兜、白いマント、紫の帯……記憶のなかの父上と同じいで立ち…………


3


軍はただ進軍する。


率いるのはあの偉大なる王……予の父だ。


聖剣カリブルヌスが振りかざすたびに、蛮族を追い返していく。


ただ、純然と進み続けた。


うろたえた蛮族は崩れていく。


蛮族は片手剣を振りかざす。その剣を二つにさきそのまま斬り殺す。


あの切れ味はカリブルヌスに違いない。


「ち、父上!! 父上!!」


その父も予をおいて、軍を進めていく。


角付兜の蛮族長は怯え目を丸くしてふるえていた。


「ぼ、亡霊が!!この亡霊が!!」


蛮族の長に迫る。


とっさに大型の片刃剣を頭上に掲げて受け止めようとするが、


それも徒労にすぎない。


「ふん!」


カルブルクスは敵の片手剣が柔らかい木材のように食い込み割り、鼻先まで守る兜ごと斬りさく。


脊髄を割り内臓をたらし、血をまき散らし、地面を赤く染めくずれた。


その光景はまさに、ペイドン山の再現だ。


蛮族を追い払い、三十年の平和を勝ちとった偉大な王の伝説を今この目に見ているのだ。


『……ブリテンの真の王! 万歳!!』


『ブリテンの真の王!! 万歳!!』


『ブリテンの真の王! 復活だ!!』


湧き立つ軍勢を前に父は逃げ散る蛮族を見る。


兜で顔を隠れてみることはできない……軍は栄光のなかにいた。


そして、気づけば……予はその父にすがりついてしまう。


「ち、父上!! 父上、父上!! あなたを殺して……この国をこんなふうにしてしまって……あなたの全てを壊して……………… あなたが必死で守り抜いたものを………壊して……壊して……わたしは!!」


父の鎖帷子を握りしめて、すがりつくように泣きついていた。


優しく頬を王はなでていた。


みな、兵は聖画をみるように場を空け、成り行きを見守っている。


「…………メドラウド………そなたがいてくれて良かった………」


その言葉に予は唖然と聞きいっていた。


思い出した……それは……母の最後の言葉と同じ……


このようにブリテンのすべてを壊した……惨めな王にかける言葉のはずがない………予は……


涙がおちた………こぼれ落ちて、その言葉は深く深く、罪悪感にのまれ……どこかに残り続けたものがあった……いつもずっと。そう。


予は父から手を離して、地面をつく………それは伝説のように……


やがて、父は馬に乗り西へと走りだす。


ただ、消えていく……伝説の終わりのように、誰も彼を追わず、見届け続けた……

自殺ではないのてすが、水に沈むという意味ではハムレットのオフェーリアをイメージがはいったり。セリフ回しがシェイクスピアみたいだと言われましたが、そこまで意識した覚えはないんだけど……なんか自然とでてしまいました。


キリスト教では自殺は禁忌でしたが、シェイクスピアは自殺の話が多いのも、彼も古いケルト的な感覚を受け継いだイギリス人だったのかも。

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