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第16節 週末はデート

「――でね。そんときに潤子ちゃんがさあ!」


まったく。よく動く口だ。ベラベラしゃべりながら弁当をかき込む夏希を眺める。悩みゼロの顔が羨ましい。


俺たち三人は、今日も屋上ランチ。


明日は土曜日。交際スタート後、初の週末だ。思い切ってデートに誘うぞ、とタイミングをうかがっているんだが、いつも夏希が一緒でチャンスがない。


いや、夏希のせいにするのはやめよう。純粋に俺がヘタレだ。立派なお屋敷に住んでいるお嬢さまだとわかって、ビビってるのか、自信がないのか。いざ口を開こうとすると、言葉が舌に乗らない。


「もー。さっきからあたしばっか喋ってるじゃない! なになに、二人は目で通じ合っちゃってる感じ?」


米粒いっぱいの頬をふくらませる夏希。俺と彩乃は即座に否定した。


「ふーん。まあいいけどさ」


夏希はモグモグと口を動かすと、お茶でぐーっと流し込む。


「で、この週末、どこでデート?」


なっ、俺は言葉に詰まり、彩乃は恥ずかしそうにうつむいた。


反応を見た夏希は、やれやれとため息を吐く。


「あんた、まだ誘ってないの? ホントにヘタレね」


「う、うっさいな。これから誘おうとしてたんだよ!」


彩乃は驚いた顔で俺を見る。夏希はジト目。


「どこ行くのよ?」


「なんでお前にプランを明かさなきゃいけねーんだよ」


「いいじゃん、聞いて減るもんじゃなし。あやのんをちゃんとエスコートできるか心配して、冷やかしてるんでしょーが」


「冷やかしじゃねーか!」


「あ、あの!」


珍しく彩乃が大きな声。俺たちは舌戦を停止し、彼女を見る。


「え、えっとね。拓也くん。今度の日曜日、予定……ある?」


「もちろんヒマよ! ヒマ! 拓也に週末の予定なんてあるわけないから!」


「なんでお前が答えるんだよ。まあ、実際ヒマだけど」


「あ、あのね。この前、拓也くんが家まで送ってくれたところを、ご近所さんが見ていたらしくて。妹の耳に入っちゃったの」


「へえ、妹さんいるんだー」


紗南ちゃん。俺と会ったことを彩乃に伝えてなかったんだ。とりあえず黙って聞く。


「それで妹にすごく怒られちゃって。『遠いところを送ってもらったのに、お茶も出さないで返すなんて!』って」


「しっかり者の妹さんねえ」


「うん。妹はわたしよりずっとしっかりしてるの。それでね、今度の日曜日に拓也くんをぜひご招待してって。……ど、どうかな?」


ははあ、なるほど――って、なるほどじゃねぇ、ビッグイベントだ!


「あはっ。よかったじゃない。これで家族公認のカップルね!」


チッ。他人事だと思って!


「急でごめんね。本当はもっと早く言おうと思ってたんだけど、なかなか言い出せなくて……」


この前、彩乃の家の豪邸ぶりにビビって俺が逃げ帰ったの、気にしてるんだろう。悪いのはデリカシー皆無の俺だ。


この誘い、断る選択肢はない。


「わかった。ぜひ伺うよ」


「ほんと? よかったぁ」


不安げだった表情が、ぱあっと咲く。この笑顔が見られただけでもう満足だ。


よし、日曜はビシッと決めるぞ――俺!

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