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終焉の魔法少女 ~ひび割れた13のウィッチ~  作者: キハ
Fate2 少女は夢を願った
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第34話 覚悟と憧れ

「あっははーやっぱそうなんだーとんだブラック企業だね私たち。じゃあ新たな魔法少女が入った時には誰かが死んだ時ってことかー」


 いやあ、知っちゃうと堪えるもんがあるねーとユキが茶化す中、ヒカリが焦ったように声を上げる。


「ま、まってそれ全部引退って言ってたってこと? それとも普通に引退はあるんだよね? だって、私も先輩から」


「ヒカリちゃんの言う通りで二つ目の質問だよ、メルル。私たちって引退なんて存在しないよね? どーせやめれないみたいないわくつきの魔法でしょー?」


 ヒカリの言葉を遮ったユキの声ははっきりとしていてその言葉の内容とちぐはぐなようだった。


『……そう、だよ』


「ってことは引退っていうのは百パーセント死んでるわけだ! 私たちは戦死するまでは魔法少女やめれないってことかー。何となく気づいてたけどまさかこんなことで発覚するとはねー」


「ちょ、っとまって! だって、私元魔法少女知ってるんだよ!? まって、私が来る前にいた魔法少女! 一ノ瀬灯里知ってるでしょ!? 先輩は生きてるよね!?」


「魔法少女アカリ……のことだよ、ね……?」


 思わずといったようにエマが口をはさんだ。魔法少女のことなら何でも知っている彼女はもちろん前代魔法少女も知っている。

 一ノ瀬灯里、という名前までは知らなかったが魔法少女アカリ。彼女はヒカリが来る前にいた、光の魔法を扱う魔法少女だった。


「そう! 私の先輩だったの! 灯里は! 無事生きてる、よね、エルザ一緒にいた時期あったよね!?」


 魔法少女エルザはこのメンバーの中でも魔法少女歴が長い方である。それこそ、魔法少女ヒカリの前任の魔法少女アカリと同期なほどには。


「……そうね。アカリなんていたわね」


 エルザは視線を落とすと静かに続ける。


「彼女は、()()では死んでないわ」


「え、じゃあ──」


「残念ながらどこかで死んでいるはずよ。生きていたとしても人間ではないでしょうね」


「……え?」


 目を見開き固まるヒカリの隣で「あっははー」とユキの笑い声が響く。


「懐かしいねーアカリちゃんかー私一瞬だけ同期だったなーどこ行っちゃったんだろうね。急に失踪なんてしちゃって」


「し、失踪?」


「カノンちゃんも覚えてるよね? そういやあの時から残ってるの私たち三人だけだよねー」


「……ええ、覚えてます。忘れないませんよアカリちゃんのことは」


「まって、灯里って今どうして」


「ヒカリちゃん、ごめんねこんな話して。一旦整理しよう。ねえメルル?」


 話を振られたメルルはどこか言いづらそうに顔を歪めるとゆっくりと頷いた。


『事実だけを言うなら、アカリの消息は分かっていないんだ。本来、ボクは魔法少女の生死に関してが分かるようになってる。だけど、アカリはわかっていない、けど魔法少女の契約は切れているんだ』


「……魔法少女の、契約が切れたってことは普通に生活してるってことじゃないの?」


「んー契約をきった人を見たことないからわからないけど、魔法少女の契約をきろうとすると体に拒否反応が起きるんだよねーやってみたらわかるよー。ねえメルル」


『そう、だね』


 だから、とメルルは続ける。


『本当は契約をきろうとしてもできないはずなんだ。でも切られてしまっていたからボクはなにもわからない』


「……まって、なんで、そんなこと、言ってくれなかったの」


 元々こういう会話には自分から入ってこなかったかったハンナが初めて声を上げた。小さな声はかすかに震えている。


「なんで、それって一番大事じゃない? 辞めたくてもやめれないってこと?」


『……辞めようと思えば辞めれるけど、あまりおススメはしない』


 メルルがそう言い切る前だった。ハンナは顔をひきつらせたままかすれた声で叫ぶ。


「だったら……、私は! ミライさんもいないなら! 魔法少女をやめる! だか、ら」


 そう叫んだところで急にハンナの声が途切れ、首が閉まったかのように呼吸が荒くなる。

 震える手で思わず首を抑え、喉奥で苦し気に喘ぐ。顔色がだんだん悪くなっていくのを見て思わずヒカリが声を上げた。


「ハンナ!?」


 その場にいた全員が悲鳴に近い声で名前を呼んだ。


「だ、大丈夫!? ハンナ!」


 そばに駆け寄り肩に手を書けると咳き込みながらハンナは顔を上げる。


「大丈夫……です」


 荒い息のまま、ハンナは答えるとヒカリが余計に心配したように背中をさする。その一部始終を見たユキがなるほどねーと笑った。


「やめようとしたらああなるってことかー服従魔法? たちの悪い冗談だねー」


「……そうですね、さすがにここまでは知りませんでした。気分が悪いです」


『言わない方が混乱しないかと思って……ごめんなさい……』


 さすがのカノンも口元に笑みをたたえるのはやめていた。この場において笑みを浮かべているのはユキ一人のみ。

 魔法少女は辞退、もしくは引退しようとしても呼吸ができなくなり強制的に継続を強いられる。戦闘において死亡した場合は引退したと死を偽装される。それほどの事実を知ってもなお彼女の笑みは崩れなかった。


「……なんでユキは笑ってられるの? 私たちも死なない限りずっと魔法少女を続けて、今までいた魔法少女たちも死んでいたなんて、そんな」


 ヒカリが震えた声で続ける。まだ気丈に振舞おうとしているのか何とか言葉を保ちつつメルルの方を睨みつける。


「メルルは、それを知っていて私たちを勧誘したってことだよね……? あの時、私たちを庇ってくれたのに、どうして……。灯里が死んだから、私は魔法少女になったって、何で言わなかったの」


『……──』


「ったく、くそ野郎が」


 メルルは困ったように答えなかった。その代わりにエルザが口を開く。


「それを知ったら私たちは魔法少女になっていないでしょう?」


 癪だわ、と吐き捨てるエルザの声を遠くで聴きながらヒカリはそんな、と呟く。


「エマちゃんも、ずっと魔法少女でいなきゃいけなくて、死ぬ可能性があるってことでしょ? 新人歓迎どころの話じゃないよ!」


「……そうね、でも死ぬ覚悟はあるんじゃないかしらその子は」


 エルザの視線がエマに向けられる。いきなり話の主役となったエマはえっ、と声を漏らした。


「だって貴方はミライの死を知ったうえで引き継いだのでしょう?」


 えっ、と答えるばかりでうまくしゃべれないエマの脳内にこの前魔法少女となった日が鮮明に思い出される。

 ミライの死を知ってもなお、動じずに魔法少女になることを選択した、あの日。


「わ、わたしは」


 エマは未だに理解できずにいる。どうしてあの時に何の迷いも生まれなかったのか。どうして今も魔法少女の事実を聞かされてもそれほど取り乱していないのか。


「かくご、なんてないです……で、でも! わたしがみんなの力になれるのなら喜んでなります……! わたしが、憧れた魔法少女だから」


「憧れた魔法少女がこんなに過酷な環境でも良いのですか」


 カノンが、不思議そうに質問を投げかける。今度はカノンの方に視線を向ける。


「……わたしが、憧れたのはみんな、だから。知らなかったとしても怪物と戦う勇気があってわたしたちを守ってくれたみんなだから、わたしはそんな魔法少女になれるなら頑張れる」


 たどたどしくも絞り出されたその言葉は、その場の空気を変えてしまうほどの”力”があった。問いかけたカノンが口元に手を当てふふっと微笑む。


「あの時、私とヒカリちゃんを見送った女の子がこんなに素晴らしいことを言ってくれるなんて感動しますね」


 再び柔らかな笑みを浮かべるとエマの瞳をしっかり見返す。


「皆様、新参者であるエマちゃんがこれほどの覚悟があるんですよ? 私たちも不本意とはいえエマちゃんに負けないようにしなければ」


「……あっははー凄い新人だねこりゃー。歓迎するよ、よろしくねエマちゃん」


「よ、よろしくお願いします……」


「ええ、こんなに可愛い新人は私たちが守り抜きましょう。魔法少女でいなければならないなら、私たちがこのまま誰も欠けずに魔法少女を守り抜けばいいのです」


「つーかそもそもあたしたちが今更どうのこうの言っても変わんねえしな、これは諦めじゃないぞ。メルル、てめぇへの信頼は落ちたからな」


 刺々しく、レンが吐き捨てる。彼女なりにも覚悟は決めているらしい。


「そんなこといったって私はやっぱり……」


 ヒカリはそこまで言いかけたが、エマの顔を見つめると言葉を止めた。


「……そ、そうだね! ぜんっぜん、受け入れられるわけないけどエマちゃんは私がきっかけみたいなところもあるし絶対に守る、だから」


 ヒカリは精一杯の笑みを浮かべエマと向き直った。初めてエマが出会った魔法少女。エマを助けた魔法少女。


 どこかぎこちなくも輝きを放つ笑みで魔法少女ヒカリは誓う。


「お互い、生き抜こうね」


 エマにとって、その笑みは死と直面している魔法少女であることを悲観するのを覆すほどの宝だった。


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― 新着の感想 ―
おぉう。 キュゥべえと同じく肝心な事はなかなか話しちゃあくれない、それどころかやめようとしたらハリポタのクルーシオほどじゃないが苦しくなる……タチの悪い呪いですね。 結城友奈は勇者であるを思い出しまし…
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