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終焉の魔法少女 ~ひび割れた13のウィッチ~  作者: キハ
Fate1 少女は微笑み返した
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第31話 報道

 緑野恵麻は、泥中の睡眠のなか覚醒した。

 ゆっくりと瞼を開ける。見慣れた白い天井を見つめていると段々脳が目覚めてきた。


 昨日のように思い出す。自分があの一日で魔法少女に頼られ、魔法少女になったことを。初めて魔法を使いみんなの役にたてたことを。魔法少女の隣に並べたことを。


 しかし、戦いが残した代償は大きかった。あの時は夢中であったものの正直今でも自分よりミライが魔法少女でい続けてくれた方が良かったのだろう、と考えたりする。

 ユイカが外傷はないのに魔法で治癒してくれた。彼女には何も聞けていないがその姿を見てミライのことを話すのはやめようと考えた。


 あの戦いから数日が経過した。初めて魔法を無茶に使ったせいか疲れはとれなかった。幸い休日続きだったこともあり、寝ることで体力回復に時間を割いていた。


 久しぶりに枕もとのスマホに手を伸ばす。何というかここ数日は魔法少女に関してスマホで知るのが怖かった。何故だろう、と考える前に気づけばスマホをいじる前に眠りに入っていたことが多い。


 魔法少女が全員集合した待ち受けを見ながら憂鬱な気持ちになる。気づけばミライを目線で追っているのだ。


 スマホを開けばすぐに魔法少女関連の情報が回ってきた。恵麻のスマホはそのためにあるといっても過言ではなかった。しかしそれは今はどこか重くのしかかってくる。


 ミライについての情報を見たくなかったのだ。事実は事実でしかない。受け止めるためにもスマホを開いてみたが、どこにもその情報は見当たらない。


 疑問に思ったその瞬間、新たにスマホが通知音を鳴らした。数日前の話題のニュースだ。見出しを見ると魔法少女ミライと書かれており、半ば条件反射でニュースを開く。


 しかし白い画面に読み込まれた文面は想像と違ったものだった。恵麻は思わず素で「え?」と間抜けな声を上げてしまう。


 ──魔法少女ミライ、引退を発表。


 どこか現実味のないその見出しに思考が数秒固まった。引退という言葉を繰り返しながら脳内には倒れたまま血を流していたミライの姿が流れる。


 思い出したくもないその光景に手が震えている。あの時ミライが、魔法少女が一人死んだから。

 自分が、魔法少女に慣れたことを痛いほど理解しているからこそだった。


「ど、どういうこと……?」


 画面を追う気もなくなり、恵麻の戸惑った呟きが空気に溶けた。



「は? ミライは死んだだろ」


 呆れたようにレンはため息をついた。今の彼女は魔法少女ではなく、制服姿で昼休みに青春を満喫している少女だった。


「それが違うんですよ! 見てくださいよ! この記事!」


 目の前に座る少女が箸を持ちながらスマホを見せつけてくる。


「食いながらスマホなんて行儀悪いなルナ。……あ?」


 同じく制服姿のルナの持つスマホの文面を見たレンは眉をひそめた。


「なんだよこれ。どうせファンが作り上げた偽記事だろ」


「それが、普通のニュースです! あ、十三女町特報にもあります! ミライのコメントまで!」


「ばっかじゃねえの? ミライはコメントできる体じゃねえんだよ。これ以上あたしの傷をえぐるな」


「えーほんとなのにぃー」


 口を尖らせたルナがお弁当を食べるのを再開する。しかしどこか落ち着かない表情で一言つぶやいた。


「これって隠蔽だったりするんですかね」


 だったら誰が得するんだよ、と言いかけようとしたがレンはからあげを口に放り込む。

 ルナの独り言は聞こえないふりをして、いつも通りお互いの弁当と向き合う時間が再開した。




 魔法少女たちがミライの死と向き合い、世間では引退報道が流れていたころ。


 点滅する街灯だけが頼りな人気のない公園に一人の人影があった。


 透明度の高い美しい水色の髪を翻しながら少女が迷わず突き進んでいく。


「……ここかぁ」


 どこか間が抜けた声を上げながら彼女は片手を掲げた。

 その手から黒に染まった靄が発生する。


「これで私の仕事は終わりっと。ほら起きて?」


 靄が目の前に大きく広がる。それが、晴れるころには長い銀髪を垂らした男──ルヴァルトの姿があった。


「……僕は」


「覚えてないの? 君死にかけたんだよ。いやー怖いよね、魔法少女の魔法って! 情報消すタイプだとは思わなかったよー私がいなかったら君は死んでた! 感謝してね」


「ああ、チャルスか。助けてくれて感謝だね」


「思ってないでしょ? いいよ、許してあげる」


 私って優しいよねというチャルスの声を聞き流しながらルヴァルトは辺りを見渡す。


「それより、どうして僕は君に助けられた? 君にとって負けた人間は用済みのはずだよね」


「ふふっ、君はまだまだ利用価値があるのさ。ムッシュボルト様もそう言ってる!」


 チャルスは鼻息でも歌いそうな勢いで笑みを浮かべる。


「それに私は万能じゃないからね。君全ての存在消されていなかったから復活させられたよ。これはある意味勝ちなんじゃない?」


 それでも、半分ぐらいの情報は消えててびっくりしちゃった、とチャルスはくすくすと笑った。


「……いや、それは違う。僕は負けたよ。君に恩を着よう」


「えーいいのぉ? ありがとーこれで君を助けたのは二回目になるね」


 二回目、という言葉でルヴァルトの瞳が揺れたのに気づいたのかチャルスはその顔をゆっくりと覗き込んだ。


「なぁに? 私たちの出会いでも思い出してた?」


 そんな軽快な問いとは裏腹にルヴァルトは歯切れの悪そうに言を返す。


「僕の名前は本当にルヴァルトなのか?」


 その言葉を聞いた瞬間、急に腹を抱えてチャルスが笑いだす。おもしろいじゃんーという言葉を添えて。


「君は私が生み出した怪物だから! 君を命名した私になんでそれを聞くの?」


 覚えてないの? という言葉とともに再びチャルスが二人の出会いを語り始める。それは何十回も聞きなれた内容だった。

 しかし、それは今のルヴァルトには少し濁って聴こえたのだ。


「で、私たちは今ここにいるんでしょ! ほら、帰るよ! 帰ってムッシュボルトさまに会いましょう。そして魔法少女に最高の仕返しを考えるの」


 楽しみだね! という声がどこか遠く感じられる。

 ルヴァルトの脳裏には、魔法少女ルイが流した涙と彼女に見せられた目が離せなかった少女の姿がこびりついていた。


第一章完結です。ここまで長く付き合っていただきありがとうございました。

書いていて体感的には長かったですね。思い返せばバトルで尺が長くとられているので……。

30話近くにしてようやく主人公が主人公らしくなった、という我ながら配分がおかしい第一章を書き終えることができて安堵しています。

どうぞこれからも緑野恵麻を、魔法少女たちの活躍をよろしくお願いします。

お読みいただきありがとうございました!


※明日から設定資料と閑話を更新しますが、ストック確保のため一週間ほど更新を遅らせていただきます。

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― 新着の感想 ―
ああすみません。 ミカヅキがバーサーカーとは言いましたがちょっと違いますね。 戦いそのものが好きってワケじゃなくて、戦闘力が高い狂人(少なくとも私達とは違いいろいろぶっ飛んでる)の方が適切ですかね。 …
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