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終焉の魔法少女 ~ひび割れた13のウィッチ~  作者: キハ
Fate1 少女は微笑み返した
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第28話 互いの奥の手

 魔法少女ハンナは自分に勇気がないことを知っていた。

 戦いにおいてあまり前線に出ない。それによって仲間に迷惑をかけることになっても彼女は進んで戦う人間ではなかった。


 その自身が持つ銃で、自身の持つ能力で救えたとしても彼女は一歩を踏み出せない、そんな人間だった。


 嫌いだった。誰よりもそんな自分が嫌いだった。

 それでも誰かを守ることも戦うこともただ怖かった。


 魔法少女であることをやめてしまいたかった。同時に、怪物が怖いからこそ魔法少女でいたかったのも事実だった。


 魔法少女になってから間もない頃、自身のために戦ってくれたミライを見て、それが強い尊敬を抱く憧れの気持ちに変わったのは必然な流れだった。


 ミライのように私も誰かを守ろう。そしていつかミライを守ることができたら。


 現実は非情にも残酷で、結局その時が来ても何もできなかなったらしい。彼女のいる世界すら守れなかった。

 彼女のいない世界で私は魔法少女でいられるのだろうか。


 罪滅ぼし。自分の出来る罪滅ぼしといえば、それはきっと全員が傷を癒す時間を稼ぐこと。


 未来を奪われても戦おうとする意志なんて魔法少女ハンナにはもう残っていなかった。


 どうやら銃弾は届かないらしい。




「大人しく死ぬつもり? 貴方自己犠牲精神なんてあったのね」


 目の前の刃が突如闇にはたき落とされた。否、それはハンナ自身の足元の、影。


 影が動いた。そう思った時には目の前に黒髪をなびかせた少女が立っていた。


「エルザ、さん」


 ルヴァルトの瞳が見開かれる。その隙を逃さずに影が長く伸びルヴァルトへ向かって奔る。


「魔法少女エルザ。君はいつから消えて……いた?」


 ルヴァルトの口が開かれると同時にエルザが距離を詰めていた。浮かぶ刃を周囲の影がすべて叩き落している。


「……さあ。私は影が薄かったようで何よりだわ」


 洒落た冗談でしょう? そんな声とともにルヴァルトの足元が沈んだ。


 目を見開いたルヴァルトが片手を上げるその瞬間ルヴァルト自身の影が蠢きその手を静かに落とした。


 自身と離れた片手を呆然と見つめるルヴァルトの目前で空中の刃が防衛本能か一斉にエルザへ向かう。


 エルザの姿すら覆ってしまうほどの刃がその一身を突き刺す。

 しかし、突如刃ははじかれそこには涼しい顔をしたエルザが立っていた。


「お得意の大技が来ないのならそれほど怖くないわね」


「断言しない方がいいんじゃない? 僕はもう準備を終えているかもしれない」


「それなら早くしてみなさいよ」


 エルザの周囲の影が持ち上がる。


「貴方の発動条件は全員の魔法を理解すること。念のため非難したけれどあの時点で私は貴方の能力範囲外だったかもしれないわね」


 ルヴァルトはそれを聞き口の端をゆっくりと持ち上げた。彼の腕から先が徐々に形作られていく。切り落とした手が再生していく。


「それなら今から君の魔法を理解すればいい。君たちが何度僕に傷をつけようと僕は再生する。その間に僕たちが君たちを全滅させるなんてわけがない」


「私の魔法を理解する? ぜひやってもらいたいわ。それと」


 エルザに迫る刃。影が叩き落とした先には距離を詰めたルヴァルトの姿があった。


「こっちもとっておきの大技を残しているの。ねえ恵麻?」


 ルヴァルトから繰り出される拳。しかしそれはエルザの目の前で止まった。

 足元の影がルヴァルトの足にまとわりついている。


 影がルヴァルトを覆う。刃が空中を飛び交いルヴァルトを助けようと主のもとへ向かう。


「……あら」


 影が晴れた。その場にはルヴァルトは消え、数歩先に自ら足を切断させたルヴァルトが転がっていた。


「私によって刻まれるのだったら切り離す方が良いということ? 貴方はトカゲに敬意を払った方がいいわよ」


 そう言い切る前にひときわ大きな刃がエルザに迫った。

 周囲に人影をかたどった影が数体出現する。刃が地面に突き刺さった時にはエルザは隣の影に移動していた。


「……なるほど。それでさっきも消えたんだね」


 足を再生させたルヴァルトがエルザの目の前に立っていた。しかし、再び移動しエルザは固まったままのハンナの隣に立った。


「もうすぐだ。君の魔法の解析ももうすぐで終わる」


 再び刃が迫る。しかしハンナとエルザの姿は消え、今度は恵麻の隣に移動していた。

 これは、ハンナの方の瞬間移動。


「人使い、荒いですよエルザさん……」


「人使いが上手いと言って頂戴」


 そういうや否、エルザは恵麻の方へ向く。


「貴方はどうするの?」


 先程までただ茫然と見つめていた恵麻の瞳に色が戻った。


 ルヴァルトは接近する。しかし、それはユイカによって傷を治療された魔法少女たちが、ヒカリが、ユキが、レンが、ヒメカが、ルナが、アオイが、サラが、一斉に阻止を始める。


 ハンナは魔力の使い過ぎか少しふらけると近くにいたユイカとふと目が合った。


「……ユイカさん、みんなのことありがとうございました」


 ユイカの瞳が揺れる。彼女が抱いていたメルルが光に包まれた。

 魔法少女たちをかばった妖精は、ユイカによって癒されゆっくりと目を開けた。


「私は、その言葉を向けられるほどの人間じゃないから……」


 そういう彼女はどこか悲し気な思いつめた表情を浮かべていた。それを見てハンナは、違うと心の中で呟く。

 彼女の裏切りでミライが死んだ。しかし彼女のおかげで救われたものもあった。そしてこんな表情をする彼女はどうしてあの場にいたのだろうか。


 その考えを遮るかのようにユイカの手元のメルルが勢いよく飛び上がり二人の間を浮遊した。


『ボク、生きてる……?』


 ユイカがどこか安堵したように微笑む。その微笑みがハンナの思考を余計に鈍らせた。


「目覚めてよかったわ、メルル。早速だけれど」


 目覚めたメルルを視界に入れたエルザは口を開く。


「ここにいる緑野恵麻が魔法少女になる契約は可能かしら」


 エルザの隣に立っていた恵麻は迷いなんてないような、そんな表情をしていた。

 前方で魔法少女の誰かの悲鳴が上がったのが聴こえた。


 悲鳴。魔法少女ルナを庇ったレンの腹部が切り裂かれていた。背後のルナが悲鳴を上げる。


 ルヴァルトを取り囲んでいた魔法少女の意識がそちらへ向く。それを狙っていたかのように再び刃が浮かび上がる。


 エルザが一気に駆け出し、周囲の影がもたげる。それは刃をすべて落とし切るとルヴァルトへ一直線へ向かう。

 油断していたルヴァルトのその全身を切り刻んだ。


「レン、大丈夫?」


 駆け寄ったユイカが浄化の力を使い傷を元通りに治す。


 その間にもルヴァルトは再生し目の前に出現した。


「使っちゃったね、魔法少女エルザ」


 ルヴァルトの魔法解析。それが終わってしまえば再び感覚の切断魔法が発動される。

 エルザはため息をつくと周囲の影を再び持ち上げさせる。


「この際どうでもよいわ、その代わり。恵麻!」


 魔法少女たちを守るように影が刃と向かい合う。


 恵麻の瞳には、今までずっと憧れてきた魔法少女たちの姿が映っている。

 その魔法少女たちの希望が、自分だということを未だに飲み込めずにいた。


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― 新着の感想 ―
いや、ミカヅキのはですね。 まあガンダム主人公はだいたいが頭のネジがトんでるようなキャラしてんですけどね、ミカヅキはもう、相棒の許可さえあれば、味方の敵を殺す事に対するためらいや容赦どころか倫理のブレ…
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