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第7話:世界のインフラを『修理』したら、文明が一段階進んでしまった件

1. 郵便受けが爆発しました

 「サトシよ……。この紙の山は、わらわへの果たし状か?」

 ホテルのリビング。リィエルが、山積みになった高級な封筒――各国首脳や大富豪からの親書――を、面倒くさそうに「わたあめ機」の予熱で炙ろうとしていた。

「待ってください、燃やさないで! それ、全部サトシさんへの招待状とか、国家レベルの依頼なんですから」

 管理局の事務局長が泣きそうな声で止める。

 配信での「確率修復」以降、サトシの価値は跳ね上がった。

 『壊れない武器』『絶対に当たるガチャ』『不治の病の治療』――。

 強欲な権力者たちが、この「神の手」を放っておくはずがない。

「サトシ殿、特にお願いしたいのがこれです。『聖都の魔力供給網マナ・グリッド』の修復。これがバグの影響で老朽化し、このままでは世界中の魔法インフラが停止します」

「……インフラが止まると、どうなります?」

「最悪、ネットが繋がらなくなり、コンビニの物流も止まります」

「サトシ、直ちに準備せよ! インターネットとポテチのない世界など、妾が滅ぼしてやる!」

 リィエルがジャージを脱ぎ捨て(下に神衣を着ている)、やる気満々で立ち上がった。

2. 傲慢なエリートと『概念の格差』

 俺たちが向かったのは、世界最大の魔法都市。

 そこには「現代魔法学の権威」を自称する賢者たちが集まっていた。

「君がサトシかね? 噂の『修理屋』が、ただのF級ガキとは。魔力グリッドは我ら天才が数百年かけて構築した至高の芸術だ。素人が無闇に触って——」

 老賢者が口を極めて罵る。彼らにとって、自分たちが直せないものを「ゴミ拾い」が直すなど、屈辱でしかないのだ。

 サトシは無視して、都市の心臓部である『巨大魔晶石』に手を置いた。

 彼の目には、石の中に走る無数の亀裂が、**「ダイヤルアップ接続時代のボロボロの銅線」**のように見えていた。

「……これ、構成が古すぎて、現代の魔力需要に耐えられてないだけですよ。無理にパッチ(継ぎ接ぎ)を当てすぎて、中身がスパゲッティコード(混線)になってる」

「なっ、貴様、我らの魔導回路をスパゲッティだと!? 不敬な――!」

「【概念修復リペア・ワークス】――対象:全域魔力伝導網。規格を『神話級・高速大容量(5G)』へ更新」

3. 文明のアップデート

 サトシの指先から、目も眩むような純白の光がほとばしった。

 それは修復を超えた、「概念の再定義」。

 古臭い魔晶石は、一瞬にして透過率100%の『超純度マナ・プロセッサ』へと進化。

 都市全体を流れる魔力の奔流が、濁った水から、摩擦ゼロの超流動体へと書き換えられていく。

「……あ、ついでに。リィエル様が動画を見るときに止まるのが嫌だって言ってたんで、キャッシュ機能(自動蓄積)も付けておきました」

 その瞬間、都市中の魔導端末が、これまでにない速度で起動した。

 「何だこの速度は!?」「魔法の詠唱待機時間がゼロになったぞ!?」と、街中から驚愕の叫びが上がる。

『【速報】サトシ、ついに世界の通信環境を神進化させる』

『これ、サトシさんが死んだら世界終わるんじゃね?』

『老賢者たちの顔が「エラー404」になってて草』

4. リィエル様の「推し活」

 修復が終わった直後、リィエルは最新の爆速回線で、ある配信を見ていた。

「サトシ! 見よ! 妾の『推し(地上の人気アイドル)』のライブ映像が、毛穴まで見えるほど鮮明になったぞ! これぞ神の恵みじゃ!」

「……喜んでもらえて何よりです」

「お主、褒めて遣わすぞ! ほら、このアイドルが食べておる『タピオカ』とやらを、今すぐ妾の元へデリバリーせよ! この爆速回線なら、注文から到着まで0.1秒で届くはずじゃ!」

「物理的な距離は修復してないんで、普通に30分かかります」

 リィエルが「理不尽じゃ……」と頬を膨らませる隣で、老賢者たちは腰を抜かしたまま震えていた。

 彼らが一生をかけても理解できなかった真理を、サトシは「ネットを快適にするため」という理由だけで書き換えてしまったのだ。

5. 結末:バグメーカーの嘲笑

 その様子を、遥か上空のノイズの中から、バグメーカーが見つめていた。

「……面白い。通信網ラインを直したか。なら、その太くなった回線に、私特製の『最悪なウイルス(魔物)』を流し込んであげよう」

 サトシが直した「便利になった世界」が、今度は敵の侵攻ルートになる。

 光と闇のデバッグ合戦は、ここからさらに激化していく。

 だが、今のサトシとリィエルは――。

「サトシ! タピオカが届かぬ! お主の『修理』が甘かったのではないか!? 妾への忠誠心を修理してやろうか!?」

「今、玄関でチャイム鳴ってますよ。……平和だなぁ」

 世界の運命を背負いながらも、タピオカ一杯で一喜一憂する。

 そんな二人の「歪な日常」は、誰にも壊させないとサトシは心に誓うのだった。

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