第24話:神の実験場と、量産された『女神(バグ)』。――本物のワガママを修理せよ!
1. 聖堂に並ぶ「同じ顔」
大聖堂の扉を開けたサトシたちが目にしたのは、幻想的で、かつ身の毛もよだつ光景だった。
天井まで届く無数のクリスタル・カプセル。その中には、銀色の髪をたなびかせ、リィエルと全く同じ顔をした少女たちが、数千、数万と眠っていたのだ。
「……な、なんだよこれ……。リィエルが、こんなにたくさん……?」
カイのドローンが慌ただしく周囲をスキャンする。
「サトシ、これを見ろ。ここは神が世界を管理するために作った、**『自律型管理OS:リィエル・シリーズ』**の製造プラントだ。彼女たちは個別の魂(個性)を持たない、ただの『バグ修正用プログラム』の器なんだよ」
目の前の光景に、さすがのリィエルも言葉を失い、自分の手をじっと見つめている。
「……妾は、ただの『予備の部品』に過ぎなかったというのか……? このワガママも、食い意地も……全てはプログラムの不具合に過ぎなかったのか……?」
2. 量産型の起動:『完璧な女神』の軍勢
その時、バグメーカーの声が聖堂内に響き渡った。
「その通りだよ、リィエル君。君は本来、感情など持たないはずの欠陥品だった。……さあ、君の『正解』を見せてあげよう」
カプセルが次々と開放され、数千人の「リィエル」たちが一斉に目を開けた。
彼女たちの瞳には感情がなく、ただ機械的な金色の光が宿っている。
「【敵対概念:個性の抹消】。対象[サトシ][カイ]をデバッグします」
無機質な声と共に、数千人の量産型リィエルが、神速のデコピンを構えて突進してくる。
「くっ、多勢に無勢だ! しかも全員が本物に近いスペックを持ってる……! 僕の更新じゃ追いつかないぞ!」
カイが防衛壁を展開するが、量産型の暴力的な出力にミシミシと亀裂が入る。
3. 『概念修復』:世界で唯一の『欠陥』
サトシは、震えながら立ち尽くすリィエルの肩を強く掴んだ。
「リィエル様、聞いてください! 予備だろうが、部品だろうが、そんなことはどうでもいい!」
「サトシ……?」
「僕が直してきたのは、あなたの『スペック』じゃない! 一緒に笑って、一緒にジャンクフードを食べて、『お腹すいた』ってワガママを言う、**『今、ここにいるあなた』**です!」
サトシは腕時計をリィエルの胸元にかざした。
「【概念修復】――対象:リィエルの存在定義。修復定義:『代えのきかない、唯一無二のワガママ女神』!」
サトシの金色の魔力が、リィエルの魂の「綻び(個性)」を強引に補強し、絶対的な実在へと固定した。
迷いの消えたリィエルの瞳に、激しい『怒り』の炎が宿る。
4. 決戦:本物 vs 量産型
「……よくぞ申した、サトシ! そうじゃ、妾は予備などではない。妾はこの世で最も尊く、最も腹を空かせた、唯一の神である!」
リィエルが地を蹴った。
量産型たちが一斉に襲いかかるが、本物のリィエルの動きは、彼女たちとは比較にならなかった。
「神罰・オリジン!!」
放たれた衝撃波は、量産型リィエルたちの「無機質な神性」を次々と打ち砕いていく。
ただのプログラムと、サトシに『修理』され、絆を積み重ねてきた魂の差。
それは圧倒的だった。
「お主ら偽物ども! 妾の代わりにポテチを食べてみろ! 妾の代わりにサトシにワガママを言ってみろ! ……できぬであろう! ならば塵となって消えるが良いわ!」
5. 結末:そして「本物の絆」へ
全ての量産型が光の塵となって消え、聖堂には再び静寂が訪れた。
リィエルは肩で息をしながら、サトシを振り返った。
「……サトシ。妾は……やはり、不良品なのかもしれぬな」
「ええ。最高に愛すべき、世界に一つだけの不良品です」
サトシが微笑むと、リィエルは不意に彼の胸に飛び込み、その首に腕を回した。
「……ならば、責任を取れ。妾が世界を壊しそうになったら、必ずお主が『修理』するのじゃ。……約束じゃぞ?」
「……はい、約束します」
『【号泣】サトシさん、カッコよすぎるだろ……』
『「唯一無二のワガママ」を修理って、どんな愛の告白だよww』
『カイ君、端っこでドローンの修理しながら、気まずそうにしてて草』
深海の底で、二人の絆はさらに強固なものへと修復された。
だが、プラントの最奥――そこには、バグメーカーが残した最後の『バグ』、**「世界の崩壊を開始する自爆スイッチ」**が赤く点滅を始めていた。
「サトシ、カイ! 感動してるところ悪いけど、島……いや、世界全体の『重力バランス』が壊れ始めたぞ! 海が……海が空に昇っていく!」




