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第22話:ビーチバレーの『軌道』がバグってる件。――勝利のベクトルを修理せよ!

1. 賞品は『伝説の冷やし中華』

「サトシよ! 見よ、あの看板を! 優勝賞品は……なんと、神界でも滅多に拝めぬという**『秘伝・氷河龍の冷やし中華(具だくさん)』**じゃぞ!」

 ビーチで開催されるペア対抗バレー大会。リィエルの目は、もはやバレーボールではなく、特設ステージに鎮座する黄金の器に向けられていた。

「ペア大会か……。カイさん、暇なら僕と組みませんか?」

「ふん、僕の最新鋭の予測演算シミュレーションがあれば、ボールの落下地点など一ナノ秒で特定できる。君の『修理』でコートの砂を整えてくれるなら、組んでやらないこともない」

 こうして、**【修理屋&更新者】**という人類最強のデバッグ・コンビが誕生した。……なお、リィエルは「妾は審判兼、応援(つまみ食い)担当じゃ!」と自由奔放に振る舞っている。

2. 書き換わる物理パラメーター

 試合開始。だが、ボールがネットを越えた瞬間、異常事態が発生した。

 空中で静止したボールが、突然直角に曲がり、地面にめり込んだのだ。

「……なっ!? 弾道計算が弾かれた!? ボールの重力定数が突然『100倍』に跳ね上がっただと……!?」

 カイが驚愕する。審判席のリィエルが、笛(ポテチの袋を鳴らす音)を吹いた。

「アウトー! バグメーカーめ、また小賢しい真似を……。サトシ、あのボールの『性質』、お主の腕輪でどうにかせよ!」

 見れば、対戦相手のチーム(バグメーカーに操られた無機質なAI選手たち)の周囲だけ、空間が歪んでいる。彼らがボールに触れるたび、物理定数がランダムに書き換わるのだ。

Current Bug Logs:

G (重力): 9.8 \rightarrow -2.0 (浮遊)

\mu (空気抵抗): 0.1 \rightarrow 10.0 (ゼリー状)

e (反発係数): 0.5 \rightarrow 0 (当たると潰れる)

「……無茶苦茶だ。カイさん、これじゃ『予測』なんて意味がない!」

3. 『概念修復』:スポーツマンシップの再定義

「カイさん! あなたが『最新の演算』で、次に書き換わる数式を0.1秒だけ先読みしてください! その瞬間に、僕がその数式を『修理』して固定します!」

「……注文が厳しいな! だが、やってやる! 【システム更新:オーバークロック】!」

 カイの瞳が青く発光し、世界がスローモーションに変わる。

 敵が打った、超高速かつ不規則に回転するボール。

「くるぞ……次は『摩擦係数ゼロ』だ! 滑ってレシーブできないぞ!」

「させません! 【概念修復リペア・ワークス】――対象:この試合の物理法則。付与概念:『フェアイズム(公正なる競技空間)』!」

 サトシが地面を叩くと、コート内に金色のドーム状の結界が展開された。

 結界内に侵入したボールの異常な数値が、サトシの魔力によって強制的に「正常なスポーツ用品」へと書き戻されていく。

「――さらに、ボールに『修理』の概念を常駐させる! どれだけバグらされても、僕らが触れるたびに『新品の弾道』に修復される!」

「よし、トスを上げるぞサトシ! 決めろ!」

4. 決着:修理されたアタック

 カイの完璧なトスが、サトシの目の前に吸い寄せられる。

 サトシは跳躍し、腕時計の出力を最大に上げた。

「【概念修復:全力の一撃】――対象:僕の右腕。筋肉の疲労をリアルタイムで修理し続け、出力を『極限』で固定する!」

 ドォォォォォン!!

 放たれたスパイクは、もはやバレーボールの速度ではなかった。

 バグを撒き散らすAI選手たちの防御を文字通り「粉砕デバッグ」し、砂浜をクレーターに変えてコートに突き刺さった。

「勝負あり……ですね」

「……フン、最後の一撃は僕のトスが完璧だったからだぞ。勘違いするなよ」

 カイは汗を拭いながら、不器用な笑みを浮かべた。

5. 結末:冷やし中華、神の味

「うむ! サトシ、カイ! 良い連携であったぞ! さあ、冷やし中華の時間じゃ!」

 優勝トロフィー代わりの『伝説の冷やし中華』を前に、三人はテーブルを囲む。

 サトシが一口食べると、その冷たさと酸味、そして具材の旨味が脳を直撃した。

「……あ、これ……美味しすぎて、疲れの概念が消えていく……」

「当然じゃ! 氷河龍のハムと、深海ワカメの絶妙なハーモニー……これを食べるために、妾はお主らを勝たせたのじゃからな!」

『【神回】物理法則無視のアタックかっこよすぎww』

『カイ君、もうすっかりサトシの相棒になってて草』

『女神様、冷やし中華を飲み物みたいに食べてる……』

 夕陽に染まるビーチ。だが、平和な空気の中、サトシの腕時計が不吉な波形を捉えた。

 海の底、深海数万メートルの地点から、リィエルの持つ「神の波長」に酷似したバグ反応が上がってきている。

「……リィエル様。……やっぱり、この海には何かあります」

「……。……そうか。ならば、次は『潜水』じゃな。サトシ、妾の『防水機能』、完璧に修理しておけよ?」

 リィエルの瞳が、一瞬だけ神としての鋭さを取り戻した。

 次なる舞台は、光の届かない深海の底――『失われた神の実験場』。

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