第10話:元パーティーとの再会。――お前、まだそんなことやってんの?
1. 影に潜む「かつての仲間」
コンビニ袋を提げ、夜風に吹かれながらホテルへ戻る道中。
街灯の届かない路地裏から、数人の人影が這い出してきた。
「……久しぶりだな、サトシ。ずいぶんと景気が良さそうじゃないか」
聞き覚えのある、傲慢で不快な声。
かつてサトシを『無能』と呼び、ダンジョンの入り口で文字通りゴミのように捨てた、元パーティー『疾風の剣』のリーダー・ゼノンだ。
彼の後ろには、冷笑を浮かべていた魔導士の女と、粗暴な戦士の男も揃っている。
「……ゼノン。まだこの街にいたんですか」
サトシの反応は、怒りでも恨みでもなく、ただの『困惑』だった。
一方、隣で大盛り焼きそばを啜っていたリィエルは、不機嫌そうに目を細める。
「サトシよ。この不潔なオーラを放つ雑草どもは誰じゃ? 妾の焼きそばの香りが、こ奴らの放つ『小者臭』で台無しなのじゃが」
2. 厚顔無恥な勧誘
「……おい、そこの女。誰に向かって口を利いている。俺たちはこれでも元Sランク、伝説を創るパーティーなんだぞ」
ゼノンはリィエルの正体を知りながらも、虚勢を張る。彼らはサトシの配信がバズっているのを見て、嫉妬と欲に目が眩んでいた。
「サトシ、話がある。お前、その【概念修復】ってやつ……結構使えるようになったみたいじゃないか。そこでだ、特別に俺たちのパーティーに戻してやってもいいぞ?」
「……はい?」
サトシは思わず耳を疑った。
「感謝しろよ。お前みたいな地味な男が女神を連れて歩くのは、世間体が悪い。俺たちがバックアップしてやれば、お前のその『修理』の才能をもっと金に換えてやれる。女神様も、俺たちのような『本物の英雄』に守られる方が幸せだろう?」
ゼノンが下卑た笑みを浮かべ、リィエルの肩に手を置こうとした。
配信コメント欄:
『は???? こいつら何様?』
『今のサトシさんの価値、国家予算レベルなんだがww』
『女神様の逆鱗に触れるカウントダウン開始……』
3. 『信頼』という概念を修理する
「リィエル様に触るな」
サトシが静かに、だが絶対的な拒絶を込めて言った。
「あぁ!? 生意気な……! おい、お前たちが無理矢理にでも連れ戻せ!」
ゼノンの合図で、戦士と魔導士が武器を構える。
彼らが使っているのは、かつてサトシがボロボロになりながら『修理』して維持していた、想い出の装備品たちだった。
「……その装備、懐かしいですね。僕が夜通し直して、なんとか繋ぎ止めていた『絆』の象徴だった。でも――」
サトシが手をかざす。
「今の僕には見える。その装備には、あなたたちの『強欲』と『不実』がこびりついて、原型を留めていない」
「【概念修復】――対象:かつての契約と装備。状態を『持ち主の誠実さ』に準じて修復する」
パリン、と透明な音が響いた。
次の瞬間、ゼノンたちの装備が光に包まれ――。
「え……? な、何だこれ!?」
ゼノンの持っていた名剣は、一瞬で「ただの折れた木屑」に変わった。
魔導士の杖は「乾燥した枝」になり、戦士の鎧は「錆びたボロ布」へと退化した。
サトシが『修理』で維持していた魔法的強度が、彼らの腐った本性に合わせて再定義されたのだ。
4. 圧倒的な『格』の差
「ぎゃああ! 俺の装備が! 高かったんだぞ、これ!」
「壊れたんじゃないですよ。あなたたちの『実績』が虚飾だったから、本来の姿に戻っただけです」
サトシは冷ややかに、地面に這いつくばるゼノンを見下ろした。
かつては巨大に見えた背中が、今は驚くほど小さく、惨めに見える。
「サトシ、もうよい。こ奴らを相手にするのは、コンビニの割り箸を一本ずつ検品するより時間の無駄じゃ」
リィエルが完食した焼きそばの容器を袋に詰め、サトシの腕に抱きついた。
「それより、ホテルの冷蔵庫に『高級プリン』があったはずじゃ。早く戻って、それを半分こにする儀式を執り行うぞ!」
「……そうですね。じゃあゼノン、二度と現れないでください。次に来たら、あなたの『存在そのもの』を修理して、ただの石っころに変えちゃうかもしれませんから」
サトシが微笑みながら放ったその言葉は、どんな罵倒よりも重い「神の宣告」としてゼノンの心に突き刺さった。
5. 結末:そして夜は更ける
ホテルへ戻る二人。
背後では、装備を失った元Sランクパーティーが、通行人に指を差されて笑われる様子が配信され続けていた。
「サトシよ、お主……。さっきの『石に変える』というやつ、本気か?」
「まさか。ただの脅しですよ。リィエル様じゃあるまいし、そんな物騒なことしません」
「……ふん。お主ならやりかねん。だが、妾の肩を守ったのは、少しだけ神っぽかったぞ。褒めて遣わす」
リィエルは顔を赤らめ、サトシの手を強く握った。
一方、ネット上では新たなトレンドが爆走していた。
#サトシにデバッグされたい
#誠実さ判定機サトシ
サトシのスキルが、ついに「人心の真偽」すら暴くツールとして認識され始めた夜。
当の本人たちは、部屋のソファで一つのプリンを巡る「神聖な争い」を繰り広げているのだった。




