第41話 無事に解決?
「マァ!」
庭園に入ると生け垣の側にマァがいた。
「メグル!」
「よかった! 早くここから出よう」
「そうね、オーロラも無事でよか……」
視線が手元に向けられた。
オーロラさんと繋がれたままの手。
それをじっと見つめている。
「マ、マァ?」
なにか問題が?
離すタイミングを失って、建物を出ても繋いだままなのはそうなんだけど。
『マァも無事でよかったです』
「……ええ、そうね」
オーロラさんは笑顔だ。
でもちょっと圧があるような気がしないでもない。
「ラっ、ライトさんと合流しよう」
こんな場所で立ち止まっていたら逃げられない。
「それなんだけどね」
マァは視線で示す。
その先にはライトさんと騎士長が話していた。
「ライトさんも無事だったか」
それはいいんだけど……。
騎士長と何の話をしてるんだ?
「―――」
「―――っ」
俺達に気付いたらしい。
遠くて会話の内容までは分からないが、二人とも近づいてきた。
「さっ、私達も行きましょう」
マァはオーロラさんと繋いだ側とは逆の腕に抱きつく。
手を繋ぐだけでも【言語理解】は効くんだけどな。
「無事でよかったです」
ライトさんが声を掛けてくる。
一瞬笑いそうになったのを俺は見逃さない。
「おおっ、中々剛毅な事をしているな」
俺を見つつ騎士長が言ってくる。
両手に花状態だからな。
いきなりだから嬉しさよりも困惑の方が強いぞ。
「今どんな状況なんですか?」
よく分からない。
マァと騎士長は戦っていたはずなんだけど。
周りも特に荒れた様子もないし。
「私が騎士長を説得していたんです」
地下でモンスターを倒した後、二人の戦いに割って入ったらしい。
そしてこっちの事情をある程度話したとの事だ。
「事情は分かった」
騎士長は腕を組むと頷く。
「こちらはそもそも聖女様が無事であればそれでいいのだ」
「心配を掛けましたね」
「いえ、理由が理由ですので致し方ないかと」
オーロラさんに話しかけられて恐縮している。
最初に見た時の勢いはもうない。
「地下の避難路については一度全てを確認した方がいいですね」
「モンスターがいるかもしれないからか」
「ええ、あのままにはしておけませんから」
「王城へも知らせなければならんな」
ライトさんと騎士長が話し合う。
あ、そういえば。
「あのー」
二人の会話に入るのは緊張するが、言わない訳にもいかない。
「はい、どうされましたか?」
ライトさんが俺を見る。
「さっき変な人達に襲われたんですけど」
「……はい?」
「今、何と?」
「なんですって!?」
小聖堂での事情を知らない皆が驚く。
対応したのは俺だけだからな。
自分のスキルはぼかしつつ、起こった事を伝える。
「それはいかんな。すぐに騎士達へ拘束するよう伝えよう」
騎士長はそう言うと急いで庭園から出て行った。
「まさかここで襲撃してくるなんて」
ライトさんは驚いている。
大聖堂の敷地内だしなぁ。
「それってほら、例の事件の犯人じゃないの?」
マァが指摘する。
多分、行方不明事件の犯人の事を言っているんだろう。
たしかにその可能性はありそうだ。
「私もそう思います。でもまさか彼が……」
「そういえば誰なんですか? あの人」
顔見知りっぽかったけど。
「はい、彼はゲイリー補佐司教。マーク司教の補佐をされています」
「結構偉い人なんですね」
思ったよりも大物みたいだ。
そんな人があんな事をするなんてな。
「一緒にいた白ローブがマーク司教なんですかね?」
「恐らくは」
じゃあマーク司教は関係なさそうだな。
黒ローブ達に捕まってそのまま退場していったし。
「そのゲイリー補佐司教ってどんな人なんですか?」
「貧しい家庭の出ですが、努力と才覚で補佐司教まで上り詰めた人です」
上昇志向が強い感じなのかな。
「普段の態度は特に問題ありませんでした。本性を上手く隠していたのでしょう」
ライトさんの眉間にしわが寄る。
アグリィ派を疑ってるって話だったもんな。
踏み込めないとは言っていたけど、多少は調べてたらしいし。
「これで事件は解決したと思っていいの?」
マァが確認する。
そこ大事。
「はい、一旦は大丈夫だと思います」
ライトさんによると、これから本格的に捜査の手が入るらしい。
実際、襲撃して返り討ちにあったんだから現行犯ではあるんだけど。
「それに避難路のモンスターについても何か知っているかもしれません」
今までの行方不明事件についてや避難路のモンスター、小聖堂での襲撃等調べる事は山ほどある。
「これから大変になりますよ」
ライトさんは笑いつつ頭を掻いた。
「王城へは私が報告しておきましょう」
「それは大変助かるのですが……」
「お父様への対応は私がしておきますので」
「感謝致します」
ライトさんが頭を下げる。
そういえば王様って娘のオーロラさんを溺愛してるんだっけ。
そのせいで血の雨が降るかもしれないとか。
「あ」
ライトさんは結果的にとはいえオーロラさんを誘拐している。
それって大丈夫なんだろうか。
「何か?」
ライトさんは気付いていないのか普通に訊いてくる。
「いえ、何も」
俺は静かに目を瞑る。
そしてただただ彼の無事を祈るのだった。




