↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『  』と呼ばれた少年  作者: リフ
第二章 星渡巡と白鼠とワ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/98

第37話 それぞれの戦い

 広間を出てからしばらく経った。

 隊列は変わらず先頭がライトさんでその後ろにマァとオーロラさんが横並び、最後が俺だ。


「モンスターが出てこなくなったわね」

「ええ、もう全て倒してしまったのでしょうか」


 マァとオーロラさんが話す。

 広間からここまでモンスターは現れていない。


「分かりません。ただ気配はないですね」


 前を見つつライトさんが答えた。

 そもそもいない今の方が正常なんだ。

 このまま何もないならそれでいい。


「もう少しで大聖堂の避難口へ着きます」

「やっと出れるわね」


 マァが軽く伸びをする。


「外では私が先行しますね」


 秘跡を行う場所を知っているのはオーロラさんだけ。

 大聖堂の一般開放以外の場所だろうし、俺達はギリギリまでついて行くだけだ。


「見えました。あそこが避難口です」


 通路の途中にある何の変哲もない金属製の扉。

 大聖堂と繋がっているにしては地味な見た目をしている。

 あえて目立たないようにして侵入者を入れないようにしてるのかも。


「行きますよ」


 俺達はある程度の距離まで近づくと止まった。

 その中からライトさんがゆっくりと進み出る。


「ではっ」


 扉を開くと素早く内側へ入っていく。

 特に物音は聞こえてこない。


「中は安全です。どうぞ」


 ライトさんがこっちに声を掛けてきた。

 俺達は顔を見合わせると、扉の内側へと入った。


「中はこんな感じなのね」

「はい、あまり変わり映えはしないでしょう」


 避難路へ降りてきた時と同じ小部屋に見える。

 この通路を作る時に規格を統一したのかもな。


「ここから階段を上がっていけば大聖堂に出ます」


 ライトさんがそう言った時だ。


 ズズッ


 音が聞こえた。

 床を擦るような音だ。


「構えて下さい」


 ライトさんは真剣な表情で避難路へ通じる扉を見る。


 ズズッ、ズズッ


 音は一つじゃない。


 ズズッ、ズズッ、ズズズッ


 近づくごとにどんどん数が増えていく。


「複数ですか……厄介な」


 ライトさんはそう溢すと俺達を見た。


「ここは私に任せて行って下さい」


 目には決意が宿っているように見える。


「一緒に戦いますよ!」


 俺はそう言ったが、ライトさんは首を横に振った。


「ここは全員で戦うには狭い」


 たしかに狭い部屋ではある。

 だけど置いていくのは違う気がする。

 全員が無理なら俺だけでも。


「それに私も一人の方が戦いやすいんです」


 俺が次の言葉を発する前に言われてしまう。


「ここは任せました」


 オーロラさんが声を掛けた。


「はっ!」


 ライトさんが畏まる。


「あとから必ず追いつくように」


 オーロラさんは最後にそう言って階段へ向かう。

 俺とマァも置いて行かれないように後を追った。


♢


 俺達は階段を上り地上へ出た。

 どうやら出た先は物置小屋らしい。

 荷物が部屋の隅に積まれている。


「ではこちらへ」


 オーロラさんが先導する。

 物置小屋を出ると、建物の陰に隠れつつ進んでいく。


「どのくらいで着きそうですか?」


 念のため確認する。


「そう遠い場所ではありません。すぐに着きますよ」


 周りはとても静かだ。

 一般人が入れないエリアだからか人も見当たらない。


「あの庭園を抜けると目的地です」


 生け垣で中の様子は見えない。

 警戒しつつ中へ入っていく。


「おおっ」


 目の前には美しい庭が広がっていた。


「凄いな」


 花が綺麗に区分けされて植えてある。

 色とりどりではあるものの特に白い花が多い。

 短く刈られた芝生と相まって、人によって整えられた美しさを感じた。


「見惚れている場合でもなさそうよ」


 マァが視線を向けた先、庭園の中央に広がる円形の芝生に人がいた。


「トラスト騎士長……」


 オーロラさんが呟く。


「騎士長?」


 こんなところになぜ。


「やはり聖女様でしたか!」


 大声で言いつつ笑顔で近づいてくる。


「おいおい」


 近づいてくるにつれて違和感に気付く。

 縮尺がおかしい。

 どんどん姿が大きくなっているように見える。


「逃げますよ」

「えっ!?」


 オーロラさんは騎士長を避けるように庭園を迂回した。

 俺とマァは急いで後を追う。


「お待ち下さい聖女様!」


 騎士長も俺達の後を追ってくる。

 足音が重い。


「マズいなっ。向こうの方が速い」


 あれだけの巨体で足まで速いなんてな!

 背中にはでかい剣も背負ってるみたいだし、身体能力どうなってるんだ。


「仕方ないわねっ」


 マァが呟くと足を止める

 その勢いで繋いでいた手も離れてしまう。


「は?」


 俺の声にオーロラさんも足を止めた。


「早く行きなさい!」

「何を言って」

「いいから急いで!」


 ……もしかしてあいつを止める気か。


「一緒に戦う!」

「そんな時間ないでしょ!」


 相手は騎士長らしいぞ。

 一人じゃ無茶だ。


「死ぬ気はないわ。さっさと行きなさい」


 さっきまでの激しい言葉から一転、穏やかに諭してくる。


『分かりました。また後でお会いしましょう』


 オーロラさんはその言葉に覚悟を決めたようだ。

 俺は――。


「ほらメグルも。最後まで付いてやりなさい」

「マァ……」

「さあ、行って!」

「ああっ、ここは任せた」


 俺とオーロラさんは再び走り出す。

 目指す場所へ向かって。


♦♦♦


「一緒に行かなくていいのか?」

「どうせ逃がす気なんてないくせに」


 目の前に立たれると圧が凄いわ。

 特に背中の大剣には気を付けないと。


「逃げ切れるかもしれんだろう」


 あんな大声で追いかけてきておいて。

 あの速さならいずれ捕まっていたはずよ。

 それに……私が気付かないとでも思ったの?


「大声を出していたのは仲間を呼ぶためでしょうに」

「ぬぅ」


 騎士長は唸ると頭を掻いた。

 図星だったみたいね。


「なぜお主がここへ残った?」

「どういう意味よ」

「あちらの少年が残るとばかり」


 視線をメグル達へ向けたわね。

 時間も稼いでおきたいし、ここは素直に教えましょう。


「私の方が上手く立ち回れるからよ」

「……俺に勝てるとでも?」


 感じる圧が上がった。

 自分の強さによっぽど自信があるのかしら。


「可能性はあるわ」

「ほう」

「もっとも、彼の方が戦えばあなたを殺してしまうでしょうけど」

「それはそれは……カカカッ!」


 笑い出しちゃったわ。

 そんなに面白い話かしら。

 メグルと戦ったら確実にそうなるわよ。


「あの少年はそんなに強いのか」

「強いというより、手加減が出来ないのよ」

「手加減、ねぇ」


 また圧が上がったわね。

 一体どれだけ上がるのかしら。

 試してみたい気もするけれど……。


「面白い話の礼だ。受け取るといい」


 背中の大剣に手を掛けた。

 ここからが本番ね。


「始めましょうか」

「望むところよ」


 メグル、私だって日々強くなっているの。

 あなたにいつでも頼ってもらえるようにね。


「カカカッ!」


 だからこんなところで。


「水龍!」


 負ける訳にはいかないのよ!


♦♦♦

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。