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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ
第二章 星渡巡と白鼠とワ

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第29話 それぞれの報告会

 俺達は宿の部屋に集まっていた。

 各自で得た情報を整理してきちんと共有するためだ。

 まずはハッズの報告から。


「やっぱりオーロラは行方不明なのね」


 嫌な予想が当たってしまったな。


「王様でも居場所は分からず、か」

「にゃん」


 今も捜索は続いているという。

 ただし、水面下でひっそりとだ。


「手掛かりがないのは痛いわね」

「ちゅう」


 犯人の情報があまりにも少ない。


「剣の達人か……」


 もしくは。


「被害者に不意打ち出来るくらい身近な人間」


 マァが俺の言葉を引き継ぐ。


「その辺りしかないよな」


 結局は王様達と同じ結論に辿り着く。

 同じ宿舎の人間の仕業か?

 それならとっくに王様達が調べ上げているはずだ。

 なら話に出ていたアグリィ派の仕業?

 でも仲間を殺したりはしないよな。


「あんまり長く見つからないようなら王自ら動くかもしれないわ」

「そうなの?」

「そちらの方が早いと判断したらね」


 そういえばオーロラさんも自分で調査をしてたな。

 ……血筋かな?


「そうなるとお終いね。王都に血の雨が降る事になるわ」

「は?」


 何でそうなる。


「隠す必要がなくなれば手段は選ばないはずだから」

「手段は選ばないって」

「怪しいやつを片っ端から捕まえてお話しするのよ」

「お話し?」


 お話しって。

 穏やかじゃないね。


「そのくらいはするわ。グロリアス王はオーロラを溺愛しているもの」

「何それ怖い」


 何でも今までオーロラさんに手を出そうとした人間はそれなりにいたらしい。

 ただ、それに関わった全員が例外なく酷い目にあっているそうだ。

 直接害そうとしたやつはもちろん、下心を持って近づく相手にも容赦がない。


「そうか」


 俺は大丈夫……だよな?

 ちょっと心配になったが、今回はオーロラさんのために動いているし許してもらえるだろう。


「マァの方はどうだった?」


 マァに話を振る。


「知り合いに訊いてみたんだけど空振りだったわ」


 話は出来たらしいが、さっきのハッズ以上の情報は得られなかったそうだ。


「絡まれ損ね」

「お疲れ様」


 マァは溜息を吐いて肩を落とす。

 相当精神が削られているようだ。


「ラジエルを抱いてみるか?」

「お願いしようかしら」

「にゃん」


 ラジエルは俺の元からぴょんと跳ぶと、マァの膝の上に乗る。


「ありがとうございます」


 マァはゆっくりと撫でている。

 初めて出会った頃は遠慮していたのに、今ではここまで距離が近くなった。

 仲間って感じがして嬉しい。

 口調が丁寧なのは変わらないが。


「メグルの方は何か進展はあった?」

「ああ、色々ね」


 俺は異界を開くと星天の籠手を机の上に出した。


「これは?」


 知らない装備だからだろう。

 不思議そうな顔で見ている。


「実は装備が覚醒したんだ」

「ええっ!」


 マァは驚いて俺の顔を見た。


「実は――」


 覚醒までの経緯を説明する。

 もちろん功労者でもある鉄の短剣についても伝えた。

 その間、マァはちょっと変な顔をしていたな。

 おかしい、ただ彼の功績を誇っていただけなのに。


「にゃん」

「ちゅう」


 一通り話し終わると、籠手にラジエルとハッズが近寄っているのに気付いた。

 ラジエルが籠手に手を当てて鳴き、ハッズも鳴きつつ頷いている。

 籠手の説明をしているのかもしれない。


「で、他に覚醒した装備はあるのかしら」

「そ、そうだな」


 若干冷めた目に怯えつつ思い出す。

 確かにあるにはあったが……。

 その装備について説明する。


「そっちはとりあえず保留ね」

「だな」


 俺の今の戦闘スタイルに合わない。

 短剣と籠手の訓練で正直いっぱいいっぱいだ。

 使うにしてもこの件が落ち着いてからになるだろう。


「俺は引き続き訓練とスキルの検証を続けようと思う」


 短剣を使い潰す事にはなるが、必要経費だと割り切る。


「明日短剣を買いに行く?」

「ああ」


 早めに捨て値で売られているような物をまとめ買いしておきたい。

 実際に斬れなくても素材として頑丈であれば付与には耐えるはず。


「剣としての質じゃなくて数で勝負だ」


 鉄の短剣のように長くは維持出来ないかもしれない。

 それでも数があれば付与の訓練にはなる。


「じゃあ明日の予定は決まったわね」


 マァが嬉しそうに言う。


「そうだな」


 サクッと買って訓練に戻ろう。


「にゃん」

「ちゅう」


 そんな俺達の様子を見て二匹は同時に鳴いた。

 ただの相槌だったのか、それとも別の何かだったのか。

 【言語理解】を持たない俺には分からなかった。

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