第24話 妖星の導き
「ん?」
気付けば森の中に立っていた。
近くにラジエルも浮いている。
さっきまで草原で寝てたはずだけど……。
「ここどこ?」
「にゃん」
ラジエルが何かを見ていた。
「どうしたラジエル」
その方向を見るとキノコが生えていた。
かなり特徴的な見た目をしている。
「鑑定」
《異界の夜皮茸》クラス:Ⅳ 品質:優
・異界で稀に採取出来る夜色の皮茸。食べるには乾燥と灰汁取り、加熱の工程が必要。非常に香りが豊かで美味しい。食べる事で夜の力への耐性を得られる。
「へぇ」
内容も気になるけど、とにかく採ってみよう。
柄は太くしっかりしてて、傘部分には逆立った鱗がたくさん、真ん中が窪んでる面白い形をしたキノコ。
「ん?」
このキノコから漂う香りは……。
「醤油に似てるな」
醤油に似た香ばしい香りがする。
海外の人はどうか知らないけど、日本人なら好きな人は多そうだ。
「うーん、よく分からないけど」
嬉しいのは嬉しい。
醤油そのものではないけど、香りは醤油に近い食材をゲット出来たんだから。
「とにかくもう戻ろう」
知らない場所に長居は無用だ。
鑑定でも異界と書かれていたし、転移であの丘に戻れるはず。
周りを見て安全を確認した後、片手でラジエルを抱える。
「転移」
俺達はすぐにその場を後にした。
♢
「まだSPも戻ってないし、処理だけでも先にするか?」
手に持ったキノコを見つつ考える。
ラジエルは胡坐の中で丸まっている。
「いや、先に寝るか」
まだちょっと身体がだるい。
キノコを隣に置いて、ラジエルはお腹の上に。
「おやすみ」
♦♦♦
『―――』
「にゃん」
『―――』
「にゃにゃ」
左腕と融合した妖星茸とラジエルが話している。
人が理解出来る言語ではない。
だが、この一本と一匹には互いに意味が通じているようだった。
「すぅ」
巡は穏やかな顔で寝ている。
起きる様子はない。
「にゃん」
ラジエルは巡の寝顔を覗き込む。
『―――』
「にゃんにゃ」
妖星茸が何かを音で伝える。
ラジエルは頷くと巡の隣に置いてある茸を見た。
「土星」
ラジエルの口から何かが呟かれる。
視線の先にある茸に起こった変化は劇的だった。
それには興味がないのか、すぐに茸から視線を外したラジエルは巡の左腕を見る。
『―――』
「にゃん」
妖星茸の発する音に返すようにラジエルは一つ鳴いた。
♦♦♦
「んんっ、ふぁあ~」
俺は横になったまま伸びをすると、寝ているラジエルを起こさないように抱く。
そしてそのまま上半身を起こして胡坐をかくとその中に入れた。
「よく寝たぁ」
地平線に目を向けると太陽が落ちかけている。
「もう夕方か」
マァは向こうでの夕食は断ってくるだろうから、俺と一緒に食堂で食べるはず。
「ラジエル達のご飯はどうしよう」
果物はもう手持ちがないし、残ってるやつで何か作るか。
干し魚と野菜で汁物でも作るかな。
カサッ
「ん?」
指先に何かが触れた。
「何だこれ」
そのまま掴んで持ち上げてみる。
見た目は乾燥したキノコっぽい。
「鑑定」
《異界の夜皮茸》クラス:Ⅳ 品質:優
・異界で稀に採取出来る夜色の皮茸。食べるには灰汁取りと加熱の工程が必要。非常に香りが豊かで美味しい。食べる事で夜の力への耐性を得られる。
「これ採ってきたやつだよな」
食べるには乾燥・灰汁取り・加熱の必要があるキノコ。
手間がかかる食材だ。
「あれ? 乾燥の部分がなくなってる」
説明には灰汁取りと加熱しか載ってない。
もしかしてもう乾燥してるからか?
「乾くの早すぎるだろ」
採って半日も経ってないのに。
「まあ、そういう食材なのかもしれないな」
なにせ異界産のものは色々おかしい。
すぐに乾燥しても不思議じゃない。
「よし、じゃあ今日はこれも使って料理をするぞ」
「にゃん」
「おお、ラジエルも起きたのか」
起こそうとしてたからちょうどいい。
今から料理をするからな。
「今日は果物がないけど大丈夫か?」
「にゃん」
大丈夫そうだ。
尻尾もゆらゆら揺れてるし。
「じゃあ始めますか」




