第23話 出来る事と出来ない事
ハッズが戻ってきたのは次の日の朝だった。
どうやら王城での調査は一晩では終わらないらしい。
ナッツを急いで食べるとまた出て行った。
「俺達も何かしないとな」
「そうねぇ、一応聞き込みでもしてみる?」
「にゃん」
待っている時間が惜しい。
俺達も朝食を食べると動き出した。
♢
「うーん、それは知らないねぇ」
「そうですか」
市場で聞き込みをしていた。
普段から客との会話が多い場所でなら何か分かるかと思ったが……。
「買ってもらったのにすまないね」
「いいんですよ、ちょうど料理に使いたかったので」
手提げ籠には新鮮な野菜が入っている。
話をしてもらう代わりに買った感じだ。
「じゃあ失礼します」
「また寄っておくれよ~」
青果店を後にする。
「無理っぽいな」
「そうねぇ」
宿近くの市場を回ってみたが皆知らないらしい。
やっぱり王城内部の動きなんて外に漏れる訳ないか。
「今度は装備関連の店を回ってみようか」
一応そっちも確認しよう。
お金持ちの人が話を漏らしてるかもしれないし。
「ついでにダンジョン装備も探すか」
「なら今まで行った事のない場所にしましょ」
王都に来てからいくつかの店は既に確認している。
まだ行けてない店も多いから、そっちから当たれば情報と装備を一度に確認出来る。
「分かった、ラジエルもそれでいいか?」
「にゃん」
鞄の中から声がする。
周りにバレないように小声だ。
「野菜もどこかで収納しないとな」
装備を扱う店で野菜を手に持ってたら変な目で見られるだろうし。
「そうね、どこか異界を開ける場所を探しましょう」
その後、人目を避けて野菜を収納した俺達は次なる店へと向かった。
♢
「結局誰も知らなかったな」
「そうねぇ」
「にゃん」
昼になり、俺達は聞き込みを途中で切り上げ宿に戻ってきた。
食事をしないといけないし、ハッズも戻ってくるかもしれない。
「料理作るからちょっと待っててくれ」
「ええ、お願いね」
「ちゅう」
異界の門を開くと中に入る。
近くに置いていた手提げ籠の中から野菜を取り出した。
「処理の仕方は市場の人に教えてもらったし、ささっと作るか」
今までは調理済みの物を買ってきたり、異界産の果物で済ませたりが多かった。
ただ、最近の昼食はたまに俺が作るようになった。
別にキノコ料理を作った影響でこうなった訳ではない。
「よし、出来た」
料理自体は今までもたまにしていた。
食堂で一緒に食事が出来ないラジエルやハッズのために。
店で作られたものや、果物やナッツで満足する日も多いけどな。
「後は持っていくだけっと」
今日は燻製肉と根菜で作ったスープだ。
ついでに市場の野菜を使ったサラダも付ける。
パンは日持ちがするやつを買ってあるから、それも一緒に持っていこう。
「お待たせ」
「ありがとう」
「にゃん」
「ちゅう」
異界から出てくると皆に出迎えられた。
「おっハッズも帰ってきてたか」
「ちゅ」
机の上で片手を上げて挨拶するハッズ。
目の前の小皿にはナッツが盛ってある。
「よし、食べようか」
机の上に料理を並べる。
凝ったものでもないけど、味はいいはずだ。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
「にゃん」
「ちゅう」
手を合わせてから食べ始める。
うん、味見はしてたけど美味い。
「美味しいわメグル」
「にゃん」
「ちゅう」
「そりゃよかった」
俺達はそのまま食事を終える。
そして食器を片付けると、午後からの予定を話し合う。
「ハッズはどうする?」
「ちゅう」
「引き続き調査を続けるそうよ」
「分かった。俺達はどうしようか」
「そうねぇ、私はもう一度知り合いと話をしてみるわ」
「王城への伝手ってやつか?」
「そうよ、何か知ってるかもしれないし」
「分かった、そっちは頼んだ」
「あんまり何回も会いたくないんだけどねぇ」
溜息を吐くマァ。
前回かなり引き留められたみたいだし、苦手な相手なのかもしれないな。
「じゃあ俺とラジエルはどうするか……」
マァについて行ったところで何かできる訳でもない。
むしろ邪魔になりそうな気配がする。
「修行でもするか?」
「いいんじゃない? スキルを使いこなすのは大事よ」
こうして俺達の予定は決まった。
♢
「ふぅ、やっぱり無理かも」
「にゃん」
異界の入口開く草原の丘で。
身体から力の抜けた俺はその場に膝を着く。
「本当に使いこなせるようになる?」
スキルを鑑定する。
【夜籠】クラス:Ⅳ
・通常スキル。スキル発動を願う事で夜の領域を生み出す。発動には50SPが必要。追加でSPを使用する事で選択した対象に夜を付与する。SPが無くなると強制的に解除される。任意で解除も可能。
「夜の付与どころか発動したら力が抜けるんですけど」
スキルとの相性が悪いのか。
それとも何か別の原因があるのか。
「分からん」
このまま闇雲に練習するだけでいいんだろうか。
草原の上に寝転んで考える。
「あぁ~、何かいい解決方法はないかなぁ」
ゆっくりと意識が闇に沈んでいく。
『―――』
眠る直前、何かが聞こえた気がした。




