第20話 聖女と聖騎士リターンズ
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「またですか……」
自室の椅子に腰かけた私は思わず呟いてしまいました。
今回は北西区にある救貧院から子ども達がいなくなったそうです。
「犯人は複数犯でしょうね」
でなければ子供たちを連れ去るなんて不可能に近い。
周囲の目もありますし、取り逃せばすぐに事が露見するでしょう。
「一度に複数の方がいなくなるのは今回が初めてですね」
今までは間隔をあけながら一人ずつでした。
何故今回は違うのでしょうか。
「何かに焦っている?」
もしくは既に誤魔化す必要すらないという事かもしれません。
「分かりませんね……」
コンコン、コンコン
「はい、どうぞ」
ガチャッ
「失礼します」
貴方がこんな時間に何の用事でしょうか。
聖騎士の仕事はもう終わったはずです。
「いくつかお願いしたい事がございまして」
「それは……日中でも出来たのではありませんか?」
「周りにどんな目があるか分かりませんので」
随分心配性なのですね。
だからと言って夜に部屋へ押しかけるのは感心しません。
「それで一体何を願いに来たのですか?」
SPは聖務の影響でまだ回復しきれていない。
今も身に着けているアレに頼るしかなさそうです。
「単刀直入に申し上げます」
私の目を真っ直ぐに見てきますね。
重要なお話なのは雰囲気で分かりますが。
「これ以上の調査は止めていただきたいのです」
「……何の事でしょうか?」
「隠さなくても結構です」
これは何か確信を持っていますね。
でなければ直接部屋へ来る事なんてしませんか。
「それは出来ません」
「なぜでしょうか。聖女様には関係のない出来事であるはずです」
それは違います。
「かつて聖女ノーブル様は多くの方を救い導いていらっしゃいました」
そして今もなお信仰の対象として人々に救いと導きを示しておられます。
「聖女とは助けを求める者の救いの象徴」
歴代の聖女様はそのために修行をし、聖務を行い、秘跡を次世代へと託してきた。
「ここで私が動かないという事はつまり、聖女という存在への冒涜に他なりません」
助けを求める手が目の前にあり、自身が動くことで助けられる可能性があるのなら。
「私は聖女教の聖女です。救う相手は選びません」
全く知らない方であってもそれは変わらない。
力の及ぶ限り必ず救ってみせる。
「それに無関係でもありませんよ」
誘拐犯が教会内部にいるのなら、私が責任をもって捕まえる。
そして行方が分からなくなった方々を一人でも多く助ける。
「それは……」
私がある程度情報を得ているのは分かっているはず。
何故それで引くと思ったのでしょうか。
「彼を危険に晒してもですか」
「彼?」
言われた瞬間心臓が跳ねました。
彼とはもしかして……。
「私が知らないとでも?」
あの日、見つからないよう大聖堂から抜け出せたと思っていました。
聖務の時間も調整し、一人になれるよう手配もして。
それが――監視されていた?
「別に私が何かをする事はありません」
「……」
「ただし、彼がどうなるかは――」
「私には」
話を遮る。
これ以上は言わせない。
「何の事だか分かりません」
「そんなはずは」
「ですが、その彼に何かをするつもりなら容赦はしません」
その時は救いましょう。
私の全てをかけて。
「……理解しました。貴女の覚悟は揺るがない、と」
彼は腰に差していた剣を鞘から抜きました。
「っ!」
とっさに椅子から立ち上がって構える。
無手でも出来る事は多いですが、長剣相手には少々分が悪い。
「動かないで下さいよ」
言葉と同時に光を帯びた剣が迫る。
速すぎて目で追いきれません!
「何をっ!」
気付いた時には剣が貫いていました。
私にはどうしても理解出来ません。
「な、なぜこんな事を……」
「仕方ないんですよ」
剣をさらに押し込むと彼は静かに笑っていました。
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