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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ
第二章 星渡巡と白鼠とワ

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第13話 聖女と聖騎士

♦♦♦


 私は大聖堂に戻りました。

 周りの方にはかなり心配を掛けてしまいましたね。


「ふふふ」

「どうかされましたか?」


 いけませんね。

 貴方がいる前で浮かれてしまうとは。


「いえ、何でもありませんよ」

「そうですか」


 私は大聖堂の奥、一般の方が立ち入れない部屋にいます。

 聖務に励むために。


「今日はこちらですか」

「はい」


 彼が私の目の前に置いた物は短剣だった。

 赤黒いオーラが立ち上っている。


「こちらは呪いの短剣です」


 来歴を語られる。

 元は暗殺を生業とする者の武器だったようです。

 人の命を奪う毎に恨みがこびりつき、最後はその短剣で自分自身を殺してしまった。

 元が普通の武器でも恨みが溜まるとこうやって呪物化してしまう。


「呪いの深度はⅢといったところでしょう」


 Ⅲはまだ心を強く保てば装備は出来るレベルです。

 Ⅳ以上はダメですね。余程呪いと相性が良くなければ触れただけで発狂します。


「分かりました。では始めましょう」


 私は両手を組むとスキルを発動する。

 瞼を閉じていても感じる光。今私の頭上には光輪が浮かんでいる事でしょう。


「―――」


 聖句を呟く。

 意識は短剣へ向ける。

 全ては悪しき力を解く為に。

 

「ハァッ!」


 収束させた光の力を短剣へ流し込んでゆく。

 かなり抵抗されますが気にしません。

 光の奔流で吹き飛ばすだけです!



「――ふぅ、終わりました」


 私はゆっくりと目を開いた。

 手を解こうとすると動きに違和感があります。

 どうやら解呪を始めてからかなりの時間が経っていたようです。


「聖女様、こちらを」


 私は差し出されたタオルをもらい額の汗を拭う。

 机の上を確認するとオーラの消えた短剣の姿がありました。

 無事に呪いは解けたようです。


「ではこちらは預からせていただきます」


 彼はその短剣を手に取ると部屋を出て行った。


「中々手強かったですね」


 呪いの深度はⅢだという話でしたが、Ⅲの中でもⅣに近かったのではないでしょうか。

 普通の武器のクラス分類もそうですが、同じⅢでも性能には差があります。

 それと同じように呪いにも強さの幅があるのです。

 クラスが高ければ高いほど、深度が深ければ深いほどその幅は広くなる。


「もっと精進しなければ」


 私はまだ見た事はありませんが、深度Ⅳや深度Ⅴの呪いもあるかもしれません。

 その解呪を任された時、出来ませんでは聖女の名折れ。


「SPをもっと増やせるといいのですが……」


 SPは生まれた時に数値が決まってしまいます。

 スキルを上手く使う事である程度節約は出来ますが、保有するSPは増えません。

 ダンジョンを踏破すれば上がる可能性があるのは承知しています。

 ただ、危険だからと言われ連れて行ってもらえないのです。


「以前近くで見つかったダンジョンは国が踏破しましたが……」


 お父様に頼んでもダメでした。

 むしろ勝手に行かないように監視まで付けられてしまいましたし。


「どうしたらいいのでしょうか」


 私はここにいないはずのある男性を思い出します。

 あの方ならこういう時、何と言って励まして下さるのでしょうか。


「……」

「ただいま戻りました」


 物思いに耽っていた私の元に彼が戻ってきました。


「今日はあの短剣で最後ですか」


 彼の手には何も握られていません。


「はい、先程の短剣で本日の聖務は終わりになります」

「そうですか」


 私は出しっぱなしにしていた光輪を消す。

 光輪の維持や操作にはSPは必要ありません。

 ただし一度でも消すとSPが回復するまでは再発動出来ないのです。


「では宿舎までお送りいたします」

「分かりました」


 私は椅子から立ち上がると部屋を出る。

 彼とは一定の距離を保って歩いていく。

 爽やかな笑顔と人当たりの良さで王都では随分人気らしい。

 そんな彼とあの方との違いはどこだと言われれば。

 私自身が疑っているかどうかに他ならない。


「とある噂を聞いたのですが」

「何でしょうか」


 歩みを止めずに話を続ける。


「カレン=ノイジ―=プランドラーさん」


 その名前に彼の歩みが止まる。


「その名をどこで」


 振り返ると私を見つめた。


「どこででしょうか」


 顔が少しひきつっているようですね。

 普段表情を見せない貴方にしては珍しい。


「彼女、行方不明だそうですね」


 やはり何かを知っているようです。

 外での調査は控えますが、内部の調査は続けますよ。


「……ええ、本当にどこにいるのか」


 貴方は知らないようですが、私の耳には入っています。

 消息を絶った日、彼女は貴方の家を訪ねていたのです。

 どうしてかは分かりません。

 ただ、最近王都では行方不明になる方が多いらしいのです。

 その中には彼女のように聖名を与えられた教徒もいます。

 今回の失踪も無関係とは思えません。


「思い当たる場所はないと」

「そうですね、無事だといいのですが」


 あまり踏み込むと良くないかもしれません。

 王女や聖女の肩書きは常に命を守ってくれる訳ではないのです。

 気付かれたと知られればこの場で害されかねない。


「早く見つかるよう祈りましょう」


 今はまだ対峙する時ではない。

 私も戦えるとはいえ相手は聖騎士。

 教会最強の剣の使い手なのですから。


♦♦♦

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