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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ
第二章 星渡巡と白鼠とワ

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第9話 大聖堂観光 with A

 俺達はこの日大聖堂へ行く事にした。


「大聖堂は聖地とも言われているわ。全教徒が一度は訪れたい場所なのよ」


 何でも一般開放の日が決まっているらしく、大聖堂に勤めていない教徒や民衆はその日しか入る事を許されないらしい。

 だから入れる日には大聖堂周りは人で溢れかえる。


「それにしても人多いな」

「当たり前よ。王都に住む人だけじゃなくて色んな場所から人が集まるもの」

「確かにそう考えるとこうもなるか」

「王都民の多くは教徒というよりは信者だけどね。ま、信者でなくても聖女様についてはほとんどの人が好意的よ」


 ほら見て、とマァが指さした先には白い小花の植木鉢が置いてあった。


「ああ、店の入り口とかでよく見るやつか」


 街を歩くと白い花の咲いた植木鉢や花壇を目にする機会は多い。


「あれは聖花よ」

「聖花?」

「そう、純白は聖女を表す。だから聖女教の聖花として認知されているの」

「へぇ、なるほどな」


 純白って綺麗で汚しちゃいけない雰囲気があるし、神聖な色って感じはする。


「そういえば……」


 今もマァのローブに隠れてついて来ているハッズも白色だったな。

 俺の肩掛け鞄の隙間から外を眺めているラジエルも翼は黒いが体の部分は白色だ。

 どちらもほぼ純白と言えなくもない。


「はは、実は聖なる存在だったりして」


 俺は一瞬浮かんだその考えを頭を振って追い出す。

 そしてマァ達と一緒に街歩きを楽しむのだった。



 真っ白な大聖堂には多くの人が詰めかけている。

 そんな喧騒も門から内部に一歩足を踏み入れると途端に静かになる。

 建物内部が放つ厳かな雰囲気がそうさせるのだろう。


「凄いな」


 中は吹き抜けになっていて開放感がある。床には木の長椅子がずらりと奥まで並んでいた。そして内部を支える白い柱や壁には花の彫刻が施されている。

 左右の天井が低い部分にはシャンデリアが吊るされていて、正面の天井近くには豪華で大きな円形のステンドグラスも見える。

 上の階には建物を一周する廊下もあるようで、決まった人数ごとに案内がされている。そこの窓も全てステンドグラスで、日の光を受けて色とりどりに輝いている。


「綺麗ねぇ」


 周りを眺めつつ前へ進む。


「マァは中に入った事はあるんだっけ?」

「私が滞在している間は開放されてなかったから初めてよ」

「そうなんだ」

「そ、だから楽しみなの」


 そう言って俺の手を握るマァ。


「正面のあれが聖女像よ」

「ああ、あれが」


 そのままゆっくり進んでいくと正面中央に像が見えた。

 背景が円形のステンドグラスなのも相まってどこか神々しい。


「―――――」


 人々がその前で立ち止まり両手を組んで祈りを捧げている。

 小声過ぎて何を言っているのか分からないが、祈り終わると次の人に変わっているようだ。


「私達もお祈りする?」

「うーん」


 俺は正直あそこまで本気で祈れる気がしない。

 初めて来た記念だしやってもいいが……。

 その時ラジエルが鞄の中でもぞもぞしだした。


「お、おい、落ち着けって」

「ラジエル様……」


 俺は必死に鞄の上から宥めようとするが、収まる気配がない。

 変な目で見られる前に聖女像の列から離れる事にした。同じように列から離れる人もいるし目立ちはしないはずだ。


「いきなりどうした」


 十分に列から離れたのを確認すると、こっそり鞄の中に手を入れラジエルを撫でてみる。

 するとようやく落ち着いてきたのか動くのを止めた。


「なるほど……」


 マァが(しき)りに頷いているが、何がなるほどなのか分からない。

 訊いても教えてもらえなかった。


「ふぅ、とりあえず暴れないなら今はいい」


 俺は視線を鞄から上げる。すると遠くにうっすら光る誰かがいた。

 立ったまま動かないし恐らく警備の人だろう。まだこちらには気付いていないようだ。

 ちょうど回りたい方向とも被るし、近くを通ってみる事にした。


「あっちに行ってみようか」

「ええ、行きましょう」


 近づくにつれて分かる。高そうな鎧を身に纏い、腰に長剣を差したイケメンだ。

 光は装備から発せられているらしい。眩しくはないけど気にはなる。

 後ろの扉を守っているところから見るに大聖堂の騎士なのかもしれない。

 ただ、初めて会うはずなのにどこか既視感があった。

 男をこっそり鑑定する。



ライト=ストレンジ=フォルス

年齢:25歳

種族:普人

職業:聖騎士

SP:50/50

通常スキル:【長剣術】

装備スキル:【光聖復古】【光脈】【天光調和】【暁払い】



 もの凄いスキルの数だ。

 職業も聖騎士で強そうだし。

 それに……。


「そうか」


 思い出した俺は視線を切る。


「……」


 その聖騎士は無言で正面だけを見ていた。

 バレてはいないな。


「もう一度だ」


 スキル欄の【天光調和】、あれは光塵の籠手のスキルだ。

 今度は装備を鑑定する。


「間違いない」


 あの籠手は以前、話の通じない女に買われた装備だったはず。何故あの男が持ってるんだ。

 グレイスさんも言っていたが、最近国が踏破したダンジョンで唯一見つかったクラスⅣの装備だ。

 同じ高クラス装備が二つ王都に存在する。クラスの高くない装備なら可能性もありそうだが……。


「うーん」

「どうかしたの?」


 マァの声にハッとする。俺は何を考えてるんだ。

 同じ装備だからなんだ。高クラス装備が一点物だなんて誰が決めた。

 逆にもし一点物であれば、あれは完全に見えてる地雷である。わざわざ自分から踏みに行きたくはない。


「いや~、人が多いなと思ってさ」

「そうねぇ」


 マァに怪しまれない程度には誤魔化せたみたいだ。

 余計な事は考えない。今はただこの観光を楽しみたい。



 その後は特に何の問題もなく観光は終わった。

 一般開放されているエリアは大体回ったし、聖堂独自の建築様式や装飾品の数々は俺達を大いに楽しませた。

 特にラジエルは目からビームが出そうなくらいにしっかり見ていたと思う。周りにはバレていなかったようだけど、途中鞄の中から飛び出すんじゃないかと内心ドキドキしていた。ラジエルの持つお皿やお猪口は芸術作品かってくらいに装飾が豪華だから、そういう美術的なものに興味があるのかもしれない。

 今回のラジエルの反応を見て、今度何かそういう品でも買ってあげようかなと俺は思った。

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