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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ
第二章 星渡巡と白鼠とワ

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第7話 使う装備と積み装備

 俺達は一旦買った物を整理するために宿に戻った。

 途中で肉の串焼きも何本かお昼用に買っている。


「ただいまー」

「ただいま戻りましたわ」

「ちゅう」


 扉を開けるとベッドに寝そべっていたラジエルがこちらを見た。


「にゃ」


 一声鳴くとふわりと浮かび上がり机の上に着地する。

 視線はずっと手に持っている肉串に釘付けだ。

 俺はそんなラジエルに近寄ると頭を軽く撫で、肉串の入った容器を置いた。


「昼からはどうする?」

「そうねぇ」


 ラジエルが出した赤い皿に串を置くと肉を外していく。串のままだと食べにくいからな。

 マァはハッズ用の小皿を出すと、そこに小袋から取り出したナッツを入れた。ちなみにミックスナッツだ。一種類よりも色々ある方がハッズが喜ぶらしい。


「店巡りを続けてもいいけど……」

「依頼もこなさないといけないわ」


 収入は大事だ。

 早めに見て回りたいとはいえ、今日中に全ての店を回る必要もない。

 

「とりあえず先にご飯を食べましょう」

「ああ」


 ラジエルもハッズも行儀よく待ってくれている。


「じゃあ、いただきます」

「いただきます」

「んにゃ」

「ちゅう」


 そして皆でいただきますをしてから食べ始めた。



 食事も終わり、今後の話し合いも一段落した頃。


「このナイフは預けておくわ」


 マァは腰からナイフを鞘ごと外した。

 水晶のナイフと交換するためだろう。


「分かった、ちょっと行ってくる」


 俺はそれを受け取ると異界の門を開く。

 目の前に黒い渦が現れ、すぐに中に入った。


「んーと」


 いくつもある箱の中から装備の箱を探し出してナイフを納める。


「これでよし」


 古の籠手はまだ鞄に入れたままだ。

 俺かマァのどちらかが条件をクリアしていればいい。

 そう願いつつ宿の部屋に戻った。


「ありがとうございます。ハッズもありがとう」


 そこには新しいナイフを腰に差したマァがいた。

 ラジエルとハッズはその姿を褒めているみたいだ。


「お披露目会みたいだな」

「あっメグル。ありがとう、預かってくれて」


 俺は構わないと言うと、部屋の隅にある自分の鞄に近づく。

 そして中から古の籠手を取り出すと机の上に置いた。

 包んでもらった布はまだ解かない。


「私はもういいから、次はハッズの番ね」


 マァは机の上に置かれていた小箱を開けて中身を取り出す。

 例の頭巾か。鑑定で小動物専用と出ていたし装備は出来るはず。


「大人しくしててね」


 小さな黒い頭巾をハッズの頭に被せると位置を微調整する。

 その間ハッズは机の上でされるがままだ。

 マァは最後に正面の布を顔が見えるように捲り上げた。


「ちゅう」


 ハッズは小さな手で頭を触ると俺達を見た。


「わあ! 可愛いわ」

「うん、いいんじゃないか」

「にゃんにゃ」


 俺達はハッズを褒める。

 白いハッズに黒い頭巾は色の感じもいい。


「ちゅ!」


 ハッズは満更でもないようで、後ろ脚で立ち上がると色んなポーズを見せてくれた。


「スキルは使えるか?」

「ちゅ」


 ハッズは頷くと静かに目を閉じる。

 すると身体の周りに黒い煙が現れ、すぐに姿が見えなくなった。


「大丈夫かしら」


 マァは不安そうな目を煙に向ける。

 次第に煙が晴れていく。そこには黒い服を着たハッズがいた。

 見た目は真っ黒な忍者っぽい。これが黒子の姿らしい。


「おおー! 格好いいな」

「よく似合ってるわ!」

「にゃ」


 ハッズはその声に目を開けると自分の姿を確認する。


「ちゅう~」


 どうやらとても気に入ったようだ。俺達に見せびらかしてくる。

 その後、走ったり隠れたりも披露してくれた。

 ただ、速さの違いはよく分からなかった。なにせ装備をしていなくても一瞬で目の前からいなくなる。本人的には若干早くなっている感じはあるらしい。

 見つかり難さはもっと分からない。姿を見失ったりもしないし、足音とかも消えたりしない。暗い所だと目立ちにくくはなるが、スキルの効果かと言われると……。


「うーん」


 装備スキルを鑑定する。



【闇纏】クラス:Ⅳ

・装備スキル。スキル発動を願う事で闇の衣を纏う。外敵に見つかり難くなり、足が速くなる。発動には5SPが必要。発動者が攻撃を受けると強制的に解除される。任意で解除も可能。



 外敵に見つかり難く、か。


「ああ、そういう事か」

「何か分かった?」


 マァはハッズと遊んでいる。

 小さな手を優しくつまむと上下に揺らしているようだ。

 ハッズもリズムに合わせてお尻をフリフリさせて楽しそう。


「外敵って部分が関係してるんじゃないかな」

「私達は敵じゃないから効果がないってこと?」

「うん、多分だけど」


 これ以上は正直分からない。

 そしてまだ装備が残っているのを思い出す。


「あ、これも確認しないと」


 机の上に置いたままの籠手を見ると、包んである布を解いた。


「どっちから行く?」

「私は後でいいわ」

「分かった……俺からな」


 マァはハッズと遊ぶのに忙しいようだ。

 俺は籠手に触る。


「……そう都合よくはいかないか」


 反応はない。

 続いてマァも触れてみたが同じだった。


「まあ、いつか条件を満たす事を祈ろう」


 もしくは条件に合う人間を見つけるか。

 ただしそれには別の問題もある……。

 俺達はそれから依頼をこなしつつ、店を回る日々を過ごすのだった。


♦♦♦


「ああ、良い物を手に入れたわ~」


 女は箱を開ける。

 そこには淡く輝く籠手が納められている。


「見せた時の顔が楽しみね!」


 周りに自慢する瞬間でも想像しているのか、顔がだらしなくにやける。


「でゅふふ」


 その日の夕方、女はこっそりと家を出た。

 そして翌朝になっても帰ってくる事はなかった。

 両親はすぐに捜索願を出すと、自分達でも探し始める。

 ここに名家のお嬢様カレン=ノイジ―=プランドラーは行方不明となった。

 持っていたはずの籠手と一緒に。



 夜の帳の中、王都グロリアスのとある場所で。

 

「ふむ、良い物だな」


 呟かれた言葉は誰にも聞かれる事はない。


「有効活用させてもらおう」


 籠手の発する淡い光だけが、ただ静かに揺れていた。


♦♦♦

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