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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ
第二章 星渡巡と白鼠とワ

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第6話 装備は人間だけの物?

 グレイスさんに見送られ、俺達は次の場所へ向かう。

 そこはグロウス商会傘下の道具屋らしい。

 つまりハッズを見せた商人の店舗だ。


「ここか」


 大通りに面したその店は、人も多く出入りしている。


「ええ、入りましょう」


 俺達はそのまま人の流れに沿って入る。


「いらっしゃいませ!」


 俺達は近くにいた若い店員から声を掛けられる。

 ここは手頃な値段の物が多く置かれているようだ。

 中では何人もの店員がそれぞれ忙しそうにしている。


「実は欲しい物があって――」


 店内は広く、品揃えも多い。適当に探すよりはと店員に直接訊いてみる事にした。


「それでしたら――」


 店員はすぐに目的の品がある場所へと案内してくれる。

 そうやって日常生活に必要な物を揃えていると、店の奥から誰かが出てきた。


「あれは……」


 前と装いは違っているが、白い髪に白い口髭、ぽっちゃりとしたその姿。

 グロウス商会のグロウスさんだ。


「お久しぶりです! 息災でしたかな」


 向こうもこちらに気が付くと声を掛けてくる。

 人好きのする笑顔を浮かべ近づいてきた。


「こっちに来ていたのね」

「はい、いつもは大体王都にいますぞ」


 話によると俺達が訪ねたあの屋敷も数ある別邸の一つらしい。


「あれが別邸……」


 あの使用人に案内されないと迷子になりそうなお屋敷が?


「そうだわ、もし知っていたらでいいのだけど――」


 マァは軽く流すとダンジョン装備の事を訊き始めた。

 驚いているのは俺だけか。お金持ちにとっては家を複数持っているのは当たり前なんだろう。


「ああ、兄の店に行ったのですな」


 話の中でさっきの店も出てきた。どうやらグロウスさんのお兄さんの店らしい。

 名前も(グレイス)(グロウス)で似ているな。


「ダンジョン装備については見つけたら基本的に兄の店に卸しているのですよ」


 一つ一つが高いですからな、そう言ってグロウスさんは笑った。

 兄弟でそれぞれ方向性が違うらしく、別に商会を興したらしい。

 グレイスさんが武器や防具、グロウスさんが道具や生活用品を販売している。内容もグレイスさんは富裕層向け。グロウスさんが大衆向けなようだ。

 ちなみに三兄弟らしい。


「しかしダンジョン装備ですか……ふむ」


 グロウスさんは何か考え込むと、俺達を店の奥へ案内した。

 机やソファーが置いてある来客用の個室のようだ。


「お待たせしました」


 グロウスさんは部屋を出て行くとすぐに戻ってきた。

 そして手に持っていた何かを机の上に置く。

 それは美しい細工の施された飴色の箱だった。


「こちらは私が個人的に所有するダンジョン装備になります」


 グロウスさんはマァの方を見る。

 すると何故かフードの部分からハッズが顔を出した。


「おお! 再びお目に掛れるとは僥倖(ぎょうこう)ですな」


 グロウスさんは上機嫌だ。


「ハッズ、勝手に出てきたらダメでしょう?」


 マァがやんわりと(たしな)める。


「ほほほ、ハッズ様と言われるのですか。良い名ですな」


 マァがその言葉を通訳してあげると、怒られて少ししょんぼりしていたハッズは嬉しそうな声を上げた。


「ちゅう」

「ありがとうですって」

「それはそれは」


 グロウスさんも言われて嬉しそうだ。

 商人としてだけでなく幸運のネズミ自体が好きなのかもしれない。


「ところでこれはどういった装備なのかしら」

「おお、すみませんな。私とした事が」


 グロウスさんは机の上に置いた箱の蓋を開ける。

 

「これは……」


 俺はグロウスさんに目線で問う。


「ええ、これはダンジョン装備で間違いありませんよ」


 もう一度俺は箱の中身を見た。

 そこには黒い何かが確かに入っている。

 入ってはいるが……。


「何かしら? どこかに嵌める物みたいだけど」


 マァが困惑するのも無理はない。

 なにせそれはかなり小さい。間違っても人が被れるような代物じゃない。

 ただ、俺は知っている。この形の被り物を。

 俺の予想が正しいかどうか、念のため鑑定してみる。



闇幕(あんまく)黒子頭巾(くろこずきん)》クラス:Ⅳ 品質:優

・闇の力が宿る布で作られた小さな頭巾。小動物のみが装備可能。破壊不可。【闇纏(あんてん)】を発動出来る。


闇纏(あんてん)】クラス:Ⅳ

・装備スキル。スキル発動を願う事で闇の衣を纏う。外敵に見つかり難くなり、足が速くなる。発動には5SPが必要。発動者が攻撃を受けると強制的に解除される。任意で解除も可能。



「小動物?」


 俺は呟く。


「ええ、恐らくは。被り物でありながら人には小さすぎるのです」


 グロウスさんは目をキラリと光らせる。


「人用ではない装備は大変珍しく、私も売らずに長らく手元に置いておりました」

「なるほど」

「しかし私が持っていても宝の持ち腐れ。ですがハッズ様ならば」


 大きさ的にも装備出来そうだから出してきたわけか。


「でもいいんですか? 高そうですけど」

「流石にタダでお渡しする訳にはいきませんが、当時の仕入れ値でお売りしましょう」

「それじゃあ利益が……」

「良いのですよ。これはきっと運命なのです。ハッズ様にお渡しするために私の所へたどり着いたのでしょう」


 目を瞑り、物思いにふけるグロウスさん。

 その姿にこれ以上掛ける言葉が見つからない。


「買いましょうメグル」


 結局マァの最後の一押しもあり、買う事になった。

 金額もあの高そうな籠手よりも大分安かった。


「もしまた似たような商品を仕入れたらお教えしますので、定期的に寄っていただくとありがたいですぞ」


 そう言うグロウスさんは最後に満足気な笑みを浮かべていた。

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