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『  』と呼ばれた少年  作者: リフ
第二章 星渡巡と白鼠とワ

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第4話 グレイス武具店で見つけた物

 翌日、俺達は依頼を受けるために斡旋所へ来ていた。昨日紹介された宿もよかったし、可能であればお勧めの商店も確認したい。

 ちなみにハッズはマァのローブの中に隠れてついて来ている。鳴かないし動かないから周りにもバレない。ラジエルは今日はゆっくり寝る日らしく宿でお留守番をしている。鞄に入ってついてくるかと目の前で開けてみたが、視線を向けるだけでベッドから動かなかった。


「掲示板はあっちね」

「みたいだな」


 俺達は入口から入って右手に向かう。

 そこには木のボードがいくつも置かれている。これが掲示板だ。依頼書が種類ごとに分類され貼られている。 


「どれにする?」

「そうね……」


 以前通っていたオブリビオン支部とは違い、周りに大声で話すような人はいない。本部の雰囲気は日本で言うところの役所に近い。誰もが静かに依頼を吟味している。

 そういえばランジさんは元気にしているだろうか。俺はあの豪快に笑う熊みたいな人を思い出しながら、マァと共に受ける依頼を探していった。



 俺達は武器屋に向かうため大通りを歩いている。

 斡旋所の依頼は今すぐこなす必要がないものを選んだ。王都に来たばかりで生活に慣れるまでの時間が欲しかったし、早目に武器屋に寄ってダンジョン装備を確保したい気持ちもあったからだ。これは以前からマァと話し合っていて、王都での活動方針としてお互いに納得している。

 装備が覚醒するとその人に合った装備になる。条件を満たす人に渡って覚醒するんだから当たり前だ。しかしダンジョンから産出される装備の内、どれだけが覚醒可能で、かつ俺達が条件を満たしている装備なのかは分からない。

 地方都市であるオブリビオンで見つけた未覚醒装備は六つ。そして俺の短剣と鞘、マァの水筒の三つは覚醒済み。残り三つは未覚醒で異界の中に置いたままだ。これだけ見れば覚醒率は五割になるが、都市にある殆どの店を回り、数えきれない程のダンジョン装備の中からかき集めてきてそれだ。産出されるダンジョン装備自体の母数を考えれば確率はもっと下がるだろう。ちなみに卵型装備についてはこれらに含めていない。有用性が知られているのと、何かの事情がない限りはほとんど市場に流れてこないからだ。

 未覚醒装備を手に入れていけばいくほど当たりを引けるチャンスも増える。だから先に出来るだけ数を確保したい。この世界では装備を充実させる事は命を守る事にも直結する。モンスターや盗賊達と戦う時もそうだし、手を出してくるような気性の荒いやつも普通にそこらを歩いている。そんな中、今後も俺達が無事である保証はない。万全を期さずに傷ついたり死んだりするのは嫌だ。俺はまだ生きていたい。マァにも死んでほしくない。


「……」

「大丈夫?」


 マァが俺を心配そうに見つめる。


「ごめん、大丈夫」

「ならいいけど……」


 長く考えすぎた。思考が暗い方向に行ってしまったな。前向きでいなければ。

 俺は落ちていた視線を上げるとマァを見る。


「疲れた時は言いなさいよ?」

「うん、ありがとう」


 大通りを東門に向かって歩く。

 俺達が狙っているのは状態の悪い装備品だ。あまり売れないという話だし探せば残っているだろう。

 時間はあるんだ。王都なら店の数も多いし、ゆっくり見て回ればいい。


「ここね」

「みたいだな」


 しばらく歩くと店に着いた。

 金属で出来た看板に剣や盾のマークが彫ってある。外観も斡旋所で聞いた通りだ。


 カランカランッ――


 そのまま木の扉を押し開けると上の方で金属同士がぶつかる音がする。


「防犯対策かしら」

「出入りを確認してるのか」


 お洒落と実用を兼ねているんだろう。耳に心地よい音だった。


「いらっしゃいませお客様、グレイス武具店へようこそ」


 店内に入ると白髪を綺麗にオールバックにした男性が出迎えてくれた。白いシャツに手袋、黒いベストにスラックス、そんな白黒の恰好も相まってバーのマスターのように見える。中も広くて、商品が見やすいように配置も考えられているようだ。間接照明もあってぱっと見、陰の部分が見当たらない。ふと地球の都会にある高級ブティックもきっとこんな感じなんだろうなと思った。


「あなたがこの店の主かしら」

「はい、店主のグレイスと申します」


 礼の所作一つとっても優雅で上品だ。白手袋がよく似合っている。


「ちょっと店内を見させてちょうだい」


 普段はあまり感じないが、今のマァからはお嬢様オーラを感じる。


「はい、ご自由にご覧下さい」


 何かございましたら遠慮なくお声がけ下さい、と続けて言いグレイスさんは後ろに下がった。


 俺達はゆっくりと商品を見て回りながら、相談しつつ鑑定をかけていく。見た目通りの高級路線なのか相応に質も値段も高い。


「色々あるわね」

「ああ、それにここにはダンジョン装備もあるみたいだ」


 俺は店の一角に目を向ける。そこには捨て値ではないダンジョン装備がいくつか展示されていた。ほとんどクラスⅡだけどこちらも質は高い。そしてクラスⅢは二つしかない。しかも大剣と鎖鎌だ。


「扱いが難しい武器ね」

「確かに」


 鑑定内容も確認したが、付いているスキルも俺達にとってはそこまで魅力的ではない。大剣なんか【重量増加】だ。ただでさえ重そうで振れるかも分からない大剣なのに、これ以上重くなったら持ち上げる事すら難しいはずだ。瞬間的に切り替えられるならまだしも、一度発動させるとしばらく効果が続くらしい。そもそも持ち運びも大変だし、これを買うのはきっと筋骨隆々の大男に違いない。

 俺達はその後も時々商品の前に止まっては話し合う。目的の物は見つからないが、見て回るだけで楽しいのは店側の配置の工夫もあると思う。


「ん?」


 最後に訪れた店の奥、ショーケースに収まっているそれを見た瞬間に俺は固まった。

 この店一番の目玉商品は間違いなくこの装備だろう。ディスプレイの仕方もそうだし、装備自体が淡く輝いている。



光塵(こうじん)の籠手》クラス:Ⅳ 品質:優

・光の力が宿る金属で作られた籠手。【天光調和(てんこうちょうわ)】を発動出来る。


天光調和(てんこうちょうわ)】クラス:Ⅳ

・装備スキル。スキル発動を願う事で光の塵を生み出し、その塵を操る力を得る。発動には20SPが必要。発動者が攻撃を受けると強制的に解除される。任意で解除も可能。



「おおー、凄いなこれ」


 まず見た目は指先まで覆うタイプのガントレットで頑丈そうだ。それに銀色の下地に金色の線が複雑な模様を描いていてかなり豪華に見える。攻撃を受けるとスキルが解除されるのはネックだが、かなり応用が利きそうな高クラスのスキルも付いている。

 実用としても美術品としてもいける文句なしの一線級品だろう。


「流石お客様、お目が高いですね」


 掛けられた声に振り向くとグレイスさんが立っていた。

 どうやら俺達が興味を持った事を察して話しかけてきたようだ。


「こちらは少し前に国が踏破したダンジョンから出た品になります」

「へぇ、そうなのね」


 俺の隣でマァが装備をしげしげと眺める。

 人が作った装備にはスキルが付かないからな。


「はい。何故か宝箱が異常に多く、大抵はクラスが低かったり状態が悪かったりしたのですが……」


 こちらはその中で唯一のクラスⅣ装備だったのです。そうグレイスさんは続けた。


「名を光塵の籠手と言います」

「光塵の籠手……」


 それからグレイスさんはその詳しい来歴や性能、見た目の素晴らしさ等を語ってくれた。結構な時間聴いていたけど話の上手さもあってか全然苦にならなかった。それどころかマァの購買意欲を大分刺激したみたいだ。本当は安く買える未覚醒の装備を探しに来たんだが……。


「最後に価格なのですが――」


 グレイスさんが言いかけたその瞬間、店内に大きな音が鳴り響いた。

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