49,END オークリー(1)
商会を束ねるオーネストが開会宣言をし、祭は賑やかに始まった。
イヴリンは、準備を手伝った服飾小物や作物の販売露店や子供たちが遊べる遊技を行える広場――夜は大人たちが楽しむ場になるメイン会場――を見回る。
その後、一度休憩とオークリーの様子をみるために一度屋敷に戻る。今日はマリーもキースも出展の手伝いで屋敷には来られないことになっていた。
屋敷に戻ったイヴリンは、オークリーの昼食の準備の前に、先にオークリーの様子を確かめるため侯爵の執務室に向かう。寝室には執務室を経由しなければ入れない。
イヴリンが執務室の扉を開けると、執務机でオークリーが仕事をしていた。
「オークリー様!? まだ寝ていないといけませんよ!?」
慌てたイヴリンはオークリーの元に駆け寄る。
「戻ったか。イヴリン、もう動けるから心配ない。歳のせいか回復が遅れたが、ずっとベッドにいたら鈍ってしかたないし、医者が言うには屋敷から出なければ良いのだろう」
「ですが…お医者様からは数日はまだ様子見だと…」
まだ顔色が良くないオークリーを心配するイヴリンだったが、オークリーから拒絶するような空気を感じる。
「分かった、無理はしない。ただ、自分の世話は自分でできるから、イヴリンは一日、夜まで祭を楽しんでくれば良い」
「……」
イヴリンは、イヴリンに祭を楽しんで欲しいためにオークリーが仕事をしている姿を見せたのだと察した。しかし、顔色悪く、無理をしている様子のオークリーも気になっていた。
(…私が引かないとずっと仕事をしてそうだな…。でも、私が祭に行ったとしても普通に仕事してそうだし…心配…どうしよう…)
「分かりました。私は祭に行ってまいります」
イヴリンは了承すると、オークリーに、必ず休むように念押しし、祭会場へと戻って行った。
◆
イヴリンはオークリーの言う通り、祭を楽しんでいたものの、心のどこかに自分のために無理をしていたように見えたオークリーのことが頭から離れない。
祭を見て回っていたランスロットも、途中、イヴリンの姿を見かけ、声をかけようとするも、気もそぞろな様子を不審に思い、眉を顰める。
ランスロットが大きい声で再び声をかけると、イヴリンはやっと気づく。
「楽しんでいるか?」
「…はい」
力なく笑うイヴリンに、ランスロットはすぐオークリーのことだと察するが、余計にイヴリンの頭の中がオークリーに占められそうで追及できないでいた。
(このままじゃ…楽しめない。夜だって…殿下に向き合うこともできない)
そう思っているうちに日が落ち、ランスロットと約束していた夜になった。




