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47.限界

ここ数日の祭の準備や、領地での事業は順調に進めていたイヴリンだったが、それとは別に思い悩んでいることがあった。

ランスロットに提供している屋敷の客室は、2階の侯爵の執務室の対極の端にある。

そのランスロットのいる部屋のドアを前に、イヴリンは扉を叩く手を躊躇ちゅうちょしている。扉の前にいる護衛は不思議な顔でイヴリンを見つめる。

部屋の中ではランスロットが領地に持ってきている仕事をしている。執務中とはいえ、そろそろ昼食の時間となるため、中断しても良い時間ではあった。

以前、ランスロットを(かわ)すために侯爵と一緒に寝ていると言ってしまったイヴリンは、対応策が見つからず、しばらくオークリーとベッドで共寝してもらうも、オークリーがあまり寝られていない様子を感じ、やはり早急にめなければならないと思っていた。

(悲しいけど、私を恋愛対象として見てないなら大丈夫かと思ったんだけど…でも、よく考えたら、いつも一人で寝ていたところに二人でってなるとそもそもストレスよね…。ソファもお互い譲り合って難しいし。

殿下に正直に話すしかないか。殿下の気持ちに向き合わなきゃならなくなるけど…)

表情をキリッとさせ、意を決したように扉を叩こうとする。


カタン…


すると、廊下の先、侯爵の執務室がある奥の方向から物音がして、イヴリンはランスロットの部屋の扉を叩こうとした手を止める。

(……?)


「オークリー様!?」

音を聞きつけてイヴリンが侯爵の執務室に入ると、オークリーが執務机の椅子から倒れたのか、床に体を横たえていた。目を(つむ)り、苦し気な吐息を吐き、かすかに汗をかいている。

「イヴリン…大丈夫だ。少し眩暈(めまい)がしただけ…」

目をうっすらと開け、イヴリンの姿を認めると、絞り出すように声を出す。

「すぐにお医者様を呼びます」

そう言ってきびすを返そうとするイヴリンのスカートの裾の端を(わず)かに掴むオークリー。

「良い。寝ていれば治る」

オークリーは腕の力を振り絞り、上半身からゆっくりと身を起こす。

「オークリー様…」

自力で寝室に向かうオークリーを見届けると、慌てて後を追うイヴリン。

(オークリー様はこう言っているけど、すぐにオーネストさんに連絡して、オークリー様の主治医を呼んでもらわなきゃ…。あとは…ええと…)

元軍人で体が強かったため、イヴリンがオークリーの元に来てから一度も、オークリーが体調を崩すことがなかったため、表情は変えずとも、イヴリンは内心とても焦燥感に駆られていた。

イヴリンは、ベッドに辿り着き、横になったオークリーの手をぎゅっと握る。

「大丈夫です、私がおります。オークリー様は何もご心配なさらずゆっくり養生してください」

オークリーはほっと息を吐くと、眠りについた。

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