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46,恋人同士のイベント

次の日、イヴリンは一人、商工会を訪れ、商店街の主な店主らと共に会議を行っていた。

ロスグラン領では、夏にささやかな祭が行われる。戦火に飲まれる前から、暑気払いのため、土地神を祀るために行われていたものであるが、隣国との戦いが終結し、次第に活気を取り戻す中で復活した祭だ。(おおやけ)にはされないが、今では戦争が終結した(いわい)の意味も内包(ないほう)された、住民にとっては開放される意味のある祭だった。

イヴリンはかねてよりこの祭を、住民だけのものではなく、町おこしのようなイベントとして扱えないかと思っていた。

(転生前の日本みたいに花火とか派手なことはできなくとも、出店や祭期間中に特別なコンテストを開催するとか…でも…)

打合せをする中で、街の人たちにとって大事なイベントであると感じ、むやみに盛り上げて利益に結びつけようとするのは得策ではないと感じ始めていた。

「皆さん、お時間頂戴して恐縮ですが、私の案はいったんご放念いただき、今年は普通に祭を楽しみましょう! 来年以降、今あるかたちを大事にしつつ、より街に良いかたちで還元できる方法はないか考えます」

(私も初めて経験する祭だし…いち住民として経験したいしね)

「イヴリン様がそうおっしゃるなら…」

「でもこの仮装行列…? も楽しそうです」

「こちらのお菓子も名産を生かしていて美味しそうですし」


「…皆さんありがとうございます。分かりました。できるところからだけお試しでやってみるようにしましょう。来年、もし外部のお客様を呼べるようにするのであれば、宣伝材料になりますしね」

今のかたちから大きく変えず、可能な案を採用するかたちで会議はまとまり、イヴリンは商工会を出る。


「イヴリン。話し合いは終わったか? 昼飯を共に食べよう」

イヴリンが商工会を出ると、ランスロットが待ち構えていた。

「殿下…。殿下こそ、侯爵との会談は終わったのですか? いつの間にこちらに…」

「一昨日ホテルに泊まった時に良い店を予約してもらってたんだ。行くぞ」

イヴリンの言葉を待たず、手を取って歩き出すランスロット。

(ロスグラン領に来てもこの調子で振り回されるのかな…)

イヴリンは眉を八の字にしつつ、口元は諦めたように笑っていた。

「祭?」

「はい、毎年行われている街のささやかな祭です。王都の建国祭とは比べ物にならないとは思いますが…」

イヴリンはランスロットが手配していた高級飲食街にある、海鮮を使ったレストランで昼食を摂りながら、先ほどの会合の話をする。

「どんなことをするんだ?」

「私も今年初めて経験するので、情報でしか知らないのですが。3日の間、各商店街を中心に飾りつけられて、露天が出展されたり、昼からお酒が振舞われたり、夜になると広場で踊ったりするらしいです」

「何か恋人同士だけのイベントはないのか?」

「……一応、同じ花を身に着けている恋人同士が夜に一緒に踊る習わしらしいですが。告白する時に自分と同じ花を渡す…みたいな。ロスグラン領は温暖な気候ですから、花も特にこの季節は色々な色や種類の花があるんですよ」

ランスロットが言いそうなことが予想でき、言いよどむイヴリンだったが、すぐにバレることなので、正直に話す。しかし、むりやり領地の名産の話にすげかえる。

「なるほど」

ニヤッと目が笑っているランスロットに嫌な予感を感じるイヴリン。

「殿下、さすがに民衆に混ざって王族が躍ることはできないかと…。万が一があると、護衛もしづらいので。私も侯爵様――が執事に扮したヴィンセント様と本部にいると思うので、参加しませんよ」

イヴリンは先回りして牽制する。

「なんだ。つまらん」

興味をなくしたように目を伏せるランスロットを見て、イヴリンは胸を撫で下ろした。

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