41,二人きり
「ただいま戻りました、侯爵」
ランスロットが去って二人きりになったイヴリンは、オークリーに満面の笑みで向き合う。
「おかえり。髪を切ったか」
王都で短く切りそろえた髪はいくらか伸びたものの、まだ肩につく程度で、以前よりは短く、イヴリンをより若々しく見せていた。
「はい。目立たないようにと思ったのですが…、結局、いろいろありまして」
「ある程度の報告はサラから聞いている。お疲れさま」
オークリーはポンとイヴリンの頭を撫でる。
(うう…子供扱いされてるのだと思うけど…嬉しい)
顔を赤らめるイヴリンを見て、変わらない様子に安心するオークリー。
「ひとまず詳細の報告は執務室で聞こうか」
二人は屋敷に向かって歩き始めた。
イヴリンは王都に立つ前の日に立ち入った時から2回目の侯爵の執務室に、その日のことを思い出してドキドキしつつ、ソファに向い合せで座り、一通りの事業報告を済ませた。
パーティーの一件を報告している際に、オークリーがすっと目を眇め、ペティベリー家へ正式に抗議を入れると提案するも、イヴリンが既に処理できたことだと断った。
イヴリンはほぼ全て嘘なく報告するも、1点、ランスロットに好意を伝えられていることは報告できなかった。
オークリーからも領地の現在の状況やイヴリンが手掛けていた事業の経過を聞くと、イヴリンは遠慮がちに小さく手を上げる。
「…あの…明日から、領地の視察に行きたいと予定してましたが、それは殿下と一緒に回りますね。今日中に視察予定のところに一報をしておきます」
ランスロットとの微妙な関係を察せられたくないので、あくまでもさりげなく発言するイヴリン。オークリーとランスロットが一緒に居れば、絶対にバレると思って、自分でランスロットをアテンドしようと考えていた。
「…わかった」
オークリーの肯定にほっと息を吐くイヴリン。領地民はオークリーが侯爵だと知っているわけではないので、ランスロットといると不自然になるかもしれない。であれば、イヴリンが適任であるとはオークリーも認識していた。
「ただし、夕刻までには戻るように。視察地もこちらで選定しておく」
「かしこまりました」
「…では、確認はこの辺にして、夕食にするか。キースがイヴリンのために豪華な食事を用意していったみたいだ」
「はい! …それは楽しみですね!」
嬉しそうなイヴリンを見て、ソファから立ってすっとイヴリンに手を差し出す。イヴリンはその手を取ってふんわりと微笑む。
「…二人でゆっくりできるのは今日までかもしれんから、今夜はここで休むか?」
「え!?」
それまでの上品なふるまいからは想像できない大きな声がイヴリンから発せられた。




