表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
37/51

37,物語の主人公

王家に言いがかりをつけた「不敬罪」として会場から連れ出されたシーアは、ペティベリー公爵家と、リオからのフォローが入ったベンデラーク家の両家からのとりなしがあり、精神衰弱という名目で不問に処されることになった。しかし、シーア・ペティベリーは王家との接触禁止となり、ランスロットに近づくこともできなくなり、療養というかたちでアカデミーも休学となった。

ペティベリー公爵家の自室での謹慎となったシーアは、うつろな瞳でくうを見つめながら述懐する。

(なんで…ランスロットとの出会いのエピソードも、デートも何も起こらなかったの? 婚約者候補になるきっかけのはずのパーティーですら…。なぜランスロットがペティベリー家を嫌う原因であるはずのイヴリンが一緒にいるのよ。私がランスロットを癒してあげなきゃいけないのに…)

シーアの知る原作だと、ランスロットはイヴリンとの過去の交流の中でペティベリー家へ良い感情を抱かなくなるはずだったが、実際は、イヴリンとの交流のおかげで、伸び伸び学べるようになり、イヴリンに惹かれていたということをシーアは知らない。

(出会いのエピソードもないし、婚約の話も何故かイヴリンのほうにいってしまっていたから、軌道修正するためにお父様に頼んで婚約話も進めたのに…話が通ってなかったなんて。なんて使えない設定なの…! どうして…どうして…!)

本来ならランスロットが入学してしばらく交流を深めたシーアと、歓迎パーティーで婚約者候補になる、という流れであったが、そもそもスタートから異なり、シーアは焦った。イヴリンが王都に帰還して邪魔をするなんて流れは原作にない。

どうにか自分の思い通りになるよう画策したが、不発に終わった。その後、元凶であるイヴリンを襲撃させようと父親に進言するも、パーティーの一件からの行き過ぎた言動に精神不安だと判断され、外出禁止令が出され、行き場のない怒りを募らせるだけだった。

パーティーが終わって数日、リオは王都のロスグラン邸を訪れていた。

事前に訪問の旨を連絡していて許可をもらってはいたが、緊張した面持ちでロスグラン邸の呼び鈴を鳴らすリオ。

「いらっしゃい」

すると、思いのほか穏やかな表情のイヴリンが自ら出迎えた。

応接室に案内すると、サラが紅茶を給仕する。対面で座るイヴリンとリオ。

「メイドや使用人は他にいないのか?」

「そうね。私とサラ、あと夜に警備の者が来るくらいかしら」

「それだけで大丈夫なのか?」

「私だけだから充分よ。だいたいのことは自分でできるし」

紅茶を飲みながら、なんてことのないように答えるイヴリン。

「自分でできる…」

驚いてイヴリンの言葉を復唱するリオをみて、イヴリンはふっと表情を緩める。

「それで? 用件は何かしら」

「……」

リオは膝に置いた手をぎゅっと握ると、意を決したように頭を下げる。

「申し訳なかった」

リオのつむじを無表情で見つめるイヴリン。リオは言葉を続ける。

「以前の事件で、騒ぎ立てて、ろくに調べることもせず、決めつけた。イヴリンが反論しないことを良いことに、必要以上に罪を追わせてしまった。

生徒会のシモンから聞いた。ペティベリー家の口止めがあってまだおおやけにされてなかったことも多いが…、パーティーの一件で、本当の事が知られるのも時間の問題ではあると思う。

言い訳になるが、あの時は、王都まで去ることになるとは思わなかったんだ…。あんな辺境に、しかも年上の曰くつきの侯爵の元に身一つで嫁ぐことになるなんて…」

「ちょっと待って。私は侯爵に嫁いだことは嫌だと思ってないし、罪は罪として認めているわ。あなたに謝られるいわれはない」

リオは顔を上げ、鋭いイヴリンの瞳と目を合わせる。

「それでも…君を誤解して、辛く当たっていたのを後悔してるんだ」

ふう…と息を吐くと、イヴリンは優しい顔つきになる。

「あなたがそれで満足するなら、謝罪を受け入れるわ。ただし、それだけで、もう私のことは放っておいて欲しいの。シーアのことを見ていてあげて」

(おそらくシーアも、この世界が小説の世界だと気づいている。私と同じ転生者で、私よりも小説に詳しい。きっと私がその小説の展開を邪魔してしまった。せめてこの世界の常識の中で正しく生きて欲しい)

パーティーの一件で、イヴリンは、今のシーアが、原作のシーアと印象が異なっていた違和感の理由を察していた。


「……そうだな。ありがとう」

リオは力のない笑顔を浮かべると、まだ何か言いたげな視線をイヴリン向けつつ、立ち上がって応接室を出る。見送るイヴリンを背に、屋敷の出口から出る寸前で歩を止めるリオ。

「……イヴリンはロスグラン侯爵と離縁して、殿下と婚約するのか?」

恐る恐るだが、思い切ったように口にするリオ。しかしイヴリンはその問いに答えず、そのまま屋敷の扉を開け、リオを外へと促す。


屋敷を出て馬車に乗るリオを見送り、イヴリンは一人ため息をつく。リオの最後の言葉は聞かなかったことにして。

(は~…。いろいろ力不足なところはあるし、まだやることは山積みだけど、ひとまず一件落着かな。

早くロスグラン領地に戻りたいな…)

イヴリンは、次第に日が高くなっていく空を見上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ