34,パーティー当日(1)
アカデミーには、様々な式典やパーティーに使えるホールがある。
新入生歓迎のパーティーもここで行われる。
パーティー当日、生徒会主催で飾り付けられた豪奢な会場は、王族のランスロットが参加することもあり、例年より煌びやかだ。
夜から行われる夜会であるが、夕暮れ時の早い時間から多くの参加者で会場は既に賑わっていた。
しばらくすると、アカデミーの入り口の門にぴったり横づけされた王家の馬車から正装のランスロットが現れ、馬車を降りるイヴリンをエスコートする。
二人ともグリーンに薄い金の装飾が上品に施された揃いの装いでひと際衆目を集める。イヴリンは短く切りそろえられた黒髪に、シンプルながらも輝きから質の良さが分かる宝石があしらわれたヘッドドレスをつけている。
(うう…やっぱり目立っている…。だから現地集合にして欲しいって言ったのに。屋敷まで王室の馬車で迎えに来られたら拒めないじゃない…)
ランスロットの腕を取り、会場に向かって歩くイヴリンはちらりと周囲を見やる。
「なんでイヴリン嬢が殿下と一緒に!? 一方的に付きまとっているって噂だったんじゃ…」
「やっぱり殿下、目の保養だわ…。イヴリン嬢のドレスも装飾が少ないけど、レースのあしらいが上品だし、動きが滑らかだわ。コルセットしてるはずなのに…。後で仕立てたデザイナーを聞いてみようかしら」
そんな周囲のささやきの全ては聞こえていないが、イヴリンは、ドレスにも注目されている雰囲気を感じ取る。
(…良かった。ドレスにも注目されてるし、おおむね好評っぽい。ここまできたらとことん利用してやるわ)
そんなイヴリンの心境を知ってか知らずか、ランスロットは涼しい顔でイヴリンをエスコートし、会場入り口の扉に到着する。
「イヴリン! 殿下にエスコートさせるとはどういうことだ」
そのまま扉を開けようとするランスロットだったが、寸前でイヴリンの後ろから声をかける人物が。
「リオ。これはしたくてしていることでは…」
眉間に皺をよせ、詰め寄るリオを振り返り、弁明しようとしたイヴリンだったが、自分もランスロットを利用していることに思い当たり、言いよどむ。
すると、横から助け船を出すようにランスロットが口を開く。
「私のパートナーに勝手に話しかけないで欲しい。君のパートナーは?」
「はっ…失礼いたしました、殿下」
すかさず頭を下げるリオ。ランスロットの言葉を受けて、イヴリンも疑問に思う。
「そうだわ、リオ。あなたのパートナーはシーアではないの? 姿が見えないようだけど…」
「そのはずだが、ペティベリー家に迎えに行ったが、既に出たと。てっきり先にアカデミーで待っていると思ったんだが、いない。さすがにパートナーなしで会場には入れないと思ってここにいたのだが…。その様子を見ると、イヴリンが何かをしたわけではなさそうだな」
「私を疑ってたのね…。それで声をかけたと」
疑われていたことを察し、イヴリンはすっと目を細める。
「いやっ…そういうわけでは。ただ、最近のシーアは何かおかしい。以前のように会えなくなって、今日の打合せもしていない…。昨年のようにシーアがパートナーだと思って俺は準備したが…」
リオは俯き、不安を吐露する。
「…もう良いだろう」
ランスロットはリオに一瞥すると歩を進める。イヴリンは少し心配そうな視線をリオに向けると、そのままランスロットに引っ張られるように会場に入っていった。




