30,デート?
ランスロットが連れてきたのは意外にも、貸しドレスの事業を行っているソフィアの王都の系列店だった。
「…どうしてこの店に?」
ランスロットに手を引かれ、馬車を降りたイヴリンは驚きの声をあげる。
「イヴリンが王都でやろうとしている事なんて、俺には分かる」
そう言ってイヴリンの手を引いたまま、店に入る。
(殿下、どこまで私のことを調べてるの!?)
中では店主が待機していて二人に頭を下げている。
ソフィアの知り合いの女性が店長をしていて、イヴリンも顔見知りだ。
(…来るって事前に連絡してたのかしら…私に教えてくれたって良いのに…)
頭を垂れる店主の頭を見てイヴリンは騙された気持ちになる。
「殿下、ここで何をするのですか?」
「今後のアカデミーのパーティーでイヴリンが着るドレスを選ぶ。どうせこの店のもので行くつもりだっただろう?」
「それはそうですが、何故殿下が?」
「イヴリンが着るものは俺が選びたいし、同じ色と共通のデザインのもので俺の礼服も作らせるからな」
「えっ!?」
「イヴリンをエスコートするのは俺だろう?」
そう言うと、イヴリンから離れ、ドレスが吊るされている商品棚へスタスタと向かうランスロット。勝手にドレスを見繕い始める。
そうして一つのドレスを手に取る。
「このライトグリーンのものが良いだろう。俺の瞳の色だ。デザインもシンプルだが、ゴテゴテしていないからイヴリンの美しさが引き立つ。…まあ、引き立ちすぎても困るが」
ドレスを手にイヴリンの元に戻ると、固まっているイヴリンを良いことに、勝手に体に合わせる。
「…でもサイズが少し大きいのではないか? 店長?」
ランスロットの問いに、傍に控えていた店長は慌てて二人の傍に行く。
「は、はい、イヴリン様に合うサイズも用意してございます。顧客が選べるように、サイズは複数用意してますし、多少のお直しはできます。」
「そうか。最初に自分に近いサイズを選ぶのだな。一般市民相手だと良いが、オーダーメイドが主流の王都の貴族相手だと最初に案内しないと分からないかもな」
(…はっ)
ランスロットのアドバイスを耳にして我に返るイヴリン。
「殿下、ご助言感謝致しますが、そもそも私はエスコートは必要ありません。一人で行く予定で…」
「アカデミーのパーティーとはいえ、一人で来る奴などいないだろう。単位を落とすぞ」
「……」
(確かに…そのために親兄弟か婚約者の同伴が許されてるし…)
何を言っても正論で返されてしまい、為す術がないイヴリン。
(殿下と行ったら、絶対目立つ…。でも上手く振舞えば良い宣伝になるのかも…?)
「イヴリンの事業の良い宣伝にもなるだろう」
ランスロットがイヴリンの思考を読むようにニヤリと笑う。
「決まりだな」
決定とばかりに選んだドレスをイヴリンに押し付ける。
「あと、店長、このドレスに合う俺の礼服を仕立ててくれ。サイズは城の衣装担当に連絡するように言っている」
「かしこまりました」
ランスロットの追加オーダーに驚いたのはイヴリンだ。
「殿下、どういうつもりですか? この店はオーダーメイドは受け付けておりませんが」
「そんなことは知っている。今回の俺の服はオーダーメイドで作るが、そのあと貸衣装に回せばよいだろう。男性用とセットにしたほうが需要があると思うぞ。個人的なサロンやガーデンパーティーは女性だけでも良いが、ある程度形式的な場面だとパートナーがいないと入場できない」
「…!」
(確かに…。殿下、デートとか言っておいてすごく有意義なアドバイスをくれるわ。なんのつもりなんだろう…)
ランスロットの意見を有難く感じつつ、イヴリンは掴みどころがなく、戸惑う。
「なるほど、検討してみます。ひとまず殿下の礼服を急ぎ発注いたしますので。今日はありがとうございまし…」
イヴリンが御礼を伝える前に、ランスロットはまたイヴリンの腕を掴んで出口へ向かう。
「では次へ行くぞ!」
「えっ!?」
その後、イヴリンは、貸切ったレストランや博物館、カフェなど日が暮れるまでランスロットに連れまわされた。




