27,真実を知る
ヴェスター・アカデミーにはあまり目立たない生徒会がある。
生徒の自治組織と言うと聞こえは良いが、生徒会役員であれば、上流貴族と知り合える機会が増えるのと、王都の中枢の職に就職するのに多少有利に働くという利点しかない、ただの雑用係だ。そのため、そもそも上流階級の貴族は生徒会に入る必要がない。特待生であるなど、優秀な成績でアカデミーに入学している中流貴族以下の子息子女が運営することが多かった。
リオの友人であるシモンも、将来のために生徒会で雑務を行う役員の一人だ。立場上、一般生徒が知り得ない情報を握る事も多いが、守秘義務があるので、黙して語らない…のだが…今、現在大変困っている事がある。
「…シモン、イヴリンの毒殺未遂の一件の真実がもみ消されているというのは本当か!?」
友人のリオが教室に戻ってきて早々、険しい表情でシモンを問い詰めてきた。
リオは、シモンの数少ない上流階級の友人…三大公爵の息子であり、身分に分け隔てない性格を好ましく思っていたものの、正義感が強い…というか、直情的な性格には困るところもあった。
「リオ、いくらリオの頼みでも、生徒会には守秘義務があって…。のちのち一般生徒が知る事は多少、先に教えてあげることはできるけど、この件は解決済ということで一般に開示する予定はなくて、特秘事項なんだ」
困ったような視線をリオに向けるシオン。
「ランスロット殿下が言っていた」
「……」
リオの意外な返しに、(王族がバラした場合はどうなんだろう…)と一瞬思考を巡らすシモン。はあ…とため息を一つ零す。
「分かった。リオは当事者であるし、殿下が言ったなら、間違って伝わるよりしっかり話したほうが良いから」
シモンもリオに黙っているのは心苦しかった。そのままリオを校舎裏に連れてゆき、毒殺事件が立件されなかった経緯について話した。
シモンが話し終わっても、片手を額に当て、険しい表情を崩さなかったリオだったが、不意に一筋涙をこぼす。
その反応にぎょっとするシモンだったが、リオも手に触れた涙に驚いたように目を見開く。
「…すまない。教えてくれたこと、感謝する。
ある時からイヴリンが変わってしまったと思っていた。
だからこそ、毒殺にまで手を染めてしまったことを本当に悔しく、裏切られたように思っていた。…でも…、本当に実の妹を殺そうとはしていなかった。そのことは本当に嬉しく思うんだ。
でも、それなら何故そんな誤解されるようなことをしたのか…。俺は、イヴリンが何をしたかったのが、今も何がしたいのかが分からない…」
「…そうだね…。イヴリン嬢の意図は分からないけど、否定もせず王都を去ったらしいから、ペティベリー公爵は彼女の処罰を変えなかったのかもしれない」
シモンのその言葉にはっとするリオ。
「やはり公爵がこの件を隠していたのか」
怒りをはらんだ表情になったリオを見て、シモンは焦る。正義感の強いリオが、公爵とモメてはいけない。
「あ、いや、でも結局、内内には無罪というかたちになったし、家名は変わったけど、イヴリン嬢も戻ってこられたから良かったんじゃないのかな? それに、理由は分からないけど、ランスロット殿下がイヴリンさんの味方? になってくれてるんでしょ?」
両手でストップの動きをしながらフォローする。ランスロット殿下からイヴリンの毒殺の真実について聞いたのならば、殿下はきっとイヴリン側なのだろうと推測しての言葉だったが、更に険しい表情になるリオを見て、シモンは選択を誤ったことを知る。
「殿下…そうだった…」
「ど、どうしたの!?」
「…殿下が、イヴリンと婚約しているという戯れを言っていた」
「え!?」
シモンは、話が更にややこしくなる気配を感じた。




