25.第三王子の婚約者
突如現れ、イヴリンに迫るリオを制したのは、ランスロットだった。
「殿下!」
リオは驚いた反動でイヴリンから手を離す。
「畏れ多くも殿下にご挨拶申し上げます」
とっさに胸に手を当て頭を下げ、ランスロットに簡易的な挨拶をする。
「…しかし殿下、なぜイヴリンを庇うのですか」
リオはつい、不満のような声が出てしまう。
「なんだ、お前は毒殺事件とやらの真実を知らないのか? あれは毒殺事件と国は処理してない、お粗末な身内のゴタゴタだ。こいつを問い詰めても時間の無駄だろう」
「どういうことですか?」
部外者であるはずのランスロットから、リオも聞いたことのない事件の見解に、リオは、責めるような口調になる。
「知らん。あとは生徒会の者にでも聞け」
ランスロットは興味を無くしたようにリオから視線を外すと、今度はイヴリンの手を取って、そのままリオの前から連れて行こうとする。慌てて付いてゆくイヴリン。
リオは慌てて引き留めようとする。
「ちょっと待ってください、何故 殿下がイヴリンを連れていくのですか!?」
リオの疑問に動きを止めて、ランスロットはイヴリンを見つめる。
「こいつが俺の婚約者だからだ」
「「「は?」」」
リオと、イヴリンと、傍で様子を伺っていたダグラスの声が重なる。
全員が固まっている空気を最初に破ったのはイヴリンだった。
「…いや、私、既にロスグラン侯爵の妻ですから!?」
そしてその爆弾発言を聞いていたのは、その場にいた4人だけではなく――シーアがイヴリンをずっと見張らせていた、彼女の取り巻きにも――しっかり聞こえていた。
◆
教室で、見張りを頼んでいた取り巻きからの報告を聞いたシーアは、不気味に無表情でいた。
「お姉さま…大人しくしているのならモブの一人としてスルーしてようと思ったけど、分不相応にもランスロット王子に近づくなら…本当に許さない」
周囲に聞こえないようにつぶやく。
すっと席を立つと、「お教えいただきありがとうございます。気分が優れないので早退します」と力なく微笑んで校舎を出てゆく。シーアの取り巻きの令嬢たちは、「やはり件の姉のせいで心労があるんだわ」とシーアを慮り心配気に見送った。
迎えの馬車を急がせ、ペティベリー邸に戻ったシーアは、真っ先に父親の執務室へ行く。
「どうした、シー…」
シーアはバンッと父親の執務机を両手で叩いてにっこり微笑む。
「お父様、お姉様がこちらに帰ってきていることはご存知よね?」
「あ、ああ…だが、もうペティベリー家の者ではない。無視しておけ」
公爵は、シーアから視線を反らし答える。
「そうはいきません。懲りないお姉さまは、また私に危害を加えようとしてますの」
「なんだと!? どういうことだ」
公爵は一気に気色ばむ。
「第三王子のランスロット殿下と私が仲良くしていると、嫌がらせをしてきますの」
「ランスロット殿下…そうか、あの時の。王族を味方につけようと考えているのか…?」
公爵は苦々しい表情で唸る。
「そう…だからお父様、私、お願いがありますの」
シーアは目を三日月のようにして怪しく微笑んだ。




